過去拍手置き場

□第16話 エールがいない日
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ヴァンがやってきたのは、青々とした美しい海の底に広がる海底トンネルです。

今回のミッションは、エリアFで拾ったふざけている内容であったデータディスクの続きの奪還です。

内容がアレではあったものの、かなり重要なことがのっていたデータだったので、その続きとなればかなり貴重なデータが残されているに決まっています。

『今回のミッションが成功したら、僕をゴミクズ呼ばわりしたあのモヒカンのオッサンに一泡吹かせることができるね』

まだ恨んでいたモデルX。彼の言葉にモデルHやモデルPは「そうだそうだ」と同意していますが、他の四人(内三つ金属体)はしらんぷり。

エリアJに着いていきなり見えてきた広大かつ美しい海に、いたく感動したヴァンは歓喜の声を上げます。

「わー。キレイな海だなー」

『のん気に言っている場合じゃないだろ』

いつでも真面目なモデルZに注意されて、ヴァンしょんぼり。

『エールがいたら今頃、必殺バスター殴りが飛び出してたんだろうなぁ』

戦や戦いが大好きなモデルFは、エールだけが使う技、バスターの銃口で相手の頭部を思い切り殴る必殺技を思い出して、瞳をきらきらと輝かせていました。

『名付けてバスターパンチだな!』

『何一人でブツブツ言ってるのよ』

モデルLのツッコミが入るのと同時にヴァンは思います。あれ?今日は何かライブメタルズでしゃばってない?

『どうしたの?ヴァン。どこかぼんやりしてるけど』

「あっ、嫌!なんでもない!」

この疑問は心の奥底に閉じ込めておくことにして、ヴァンは語りかけてくるモデルXの言葉に首と手を振りました。

「さて、それよりもエリアJはほとんどが水面下だな。ただでさえエリアFの時も動きにくかったっていうのに」

話を戻してミッションに集中です。広大な海を眺めながらヴァンは一人ぼやきました。

『だったらアタシを使ってダブルロックオンしなさい。水中戦に特化した能力が使えるわよ』

「なるほど!じゃあ早速ロックオンだ!」

幸い、今回はエールがいなくて一人なので、何も気にせずダブルロックオンが使えます。

モデルZXのロックオンを解除して、右手にモデルX左手にモデルLを持ったヴァンは、生まれて始めてのダブルロックオンに胸を高鳴らせます。

「やっと・・・俺もダブルロックオンを・・・」

『感動に浸ってないで、さっさとロックオンしたら?』

モデルXの感動をぶちこわす一言に、モデルLは思わず噴き出しました。

今回はモデルXがエールポジションなのではないかと不安に思いつつ、ヴァンは生まれて初めてモデルZX以外のロックオンを試みます。

「ダブルロックオン!」

ぴっきーん。あっと言う間にヴァンはロックマン、モデルLXへと早代わり。変身シーンはありません。

「・・・・・・」

己の身を包むモデルXよりも青いアーマーを、隅から隅までじっくりと眺め、さらに手に握られているハルバードを視界に納め、ヴァンは顔を上げると

「・・・!」

黙ったまま、三億円が当たった時のような幸せそうな笑顔を見せ、己の体をしっかりと抱きしめました。

『・・・何やってるんだ?アイツは・・・』

『ああ。多分、生まれて始めてのモデルZX以外のダブルロックオンに感動してるんじゃないかな?』

モデルZとモデルXの会話なんて、今の彼にとっては別世界の出来事のよう。ヴァンはしばらくの間、感動の余韻に浸っていました・・・。





彼が感動という名のハリケーンから帰ってくるまで、0時間45分13秒9.34かかったそうです。

『全く、悠長にしている暇などないんだぞ』

「ごめん・・・」

モデルZに叱咤されながら、ヴァンは感度しすぎて時間を忘れてしまったことを悔いつつ、海中を進んでいきます。

海底に広がる色とりどりの珊瑚礁。そこを優々と泳いでいるのは、色鮮やかな海水魚たち。某ネズミー映画で有名になった、カクレクマノミやナンヨウハギなどがいますね。

イレギュラーの数は驚くほど少なく、いるとしても環境に優しいけど凶暴なイレギュラー、ボラボラぐらいしかいません。後はガレオンが海上でサーフィンしてるぐらい。

ここが本当にセルパンカンパニーが使用している海底トンネルなのかと、疑問に思うほどここの海は綺麗でした。

「しかし・・・アウターだっていうのに綺麗かつ平和な場所だよなー・・・」

『人がいる海は汚いが、人がいない海は美しい・・・。人間が支配しているから、環境が汚染されていくということか』

唐突に残酷なことを言うモデルHに、ヴァンは苦笑いを浮かべるだけで何も言い返せなくなりました。

『イレギュラーの分際で、海を守るなんてちょっと腑に落ちないけど、その心意気は気に入ったわ』

誰に言っているのかは知りませんが、モデルLはどうどうと豪語しました。
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