過去拍手置き場

□第16話 エールがいない日
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連日暑い日が続く今日この頃。今日のミッションは海底のトンネル捜索です。

大空を悠々と飛ぶガーディアンベースの中、ヴァンはもうすぐミッションだというのにエールの部屋にいました。

「・・・」

しかも椅子に座り、難しい表情を浮かべています。

ライブメタルズは彼の周りをふよふよと浮いており、珍しいことに一言も喋っていません。

一方エールはベッドの中、顔を赤くして息絶え絶えな様子。激戦を終えた戦士みたいです。

「ヴァン・・・喉痛い」

「ああ」

「ついでに頭も痛いし声ガラガラだし視界はちょっぴりぼやけてるし体温が異常なまでに上昇してるみたい・・・」

「だよなぁ・・・」

さて、どうしたものか・・・。ヴァンが息をはいた時、ベッドサイドに立つ大きめの体格を持つ看護婦、ミュゲはやれやれとため息をついて

「やっぱりね。正真正銘風邪だよ」

今朝から体調が悪かったエールの診断結果を口にしました。

彼女の助手であり、看護婦見習いでもある大人しい様子の少女ローズは、それに続いて細かな点を述べていきます。

「症状はごく一般的な風邪と同じ発熱や喉の痛みですね。この程度の症状なら、一日中安静にしていればすぐに回復しますよ」

「そっか、それはよかっ」

「よくないわよ!」

ヴァンが安堵するのも束の間、エールは喉の痛みも忘れて絶叫。その声の音量にその場にいた一同は驚愕しました。

「このままじゃあ今日のミッションいけなくなるじゃない!」

何だ、それが理由で怒鳴り声を上げたのか。ヴァンは納得すると風邪で苦しんでいる彼女に優しく言います。

「だったら今日のミッションは中止して、日を改めて・・・」

「馬鹿!」

彼女の癇に障るようなことは何一つ言ってないつもりだったのに、彼女は起き上がり、枕を投げつけてきました。

「いて」

風邪を引いて体力を失っているせいか、勢いはあまりなかったため、大した威力ではありませんでした。

熱があるせいか顔を真っ赤にしながらヴァンを睨むエールは、そのまま絶叫します。

「こっちは一日でも早くあのモヒカンのオッサンを倒して、ジルウェの敵をとらないといけないの!世界をモデルXの脅威から守らないといけないの!たかが風邪ぐらいでミッションを中止して、それが最悪な事態を招くきっかけにでもなったりしたらどうするつもりなのよ!アンタ、死んで責任とれるわけ!?」

「死ぬの!?」

罵声はともかく、この叫びだけで彼女の意志は十分に伝わりました。

『つまりは、自分のせいでミッションをやめるな。と言いたいわけだ』

納得したように解説するモデルX。エールは彼の言葉に頷きますが、ライブメタルの声が聞こえないミュゲとローズは、突然頷いたエールに疑問を覚えました。

モデルXの解説のお陰で、どうしてエールが怒り狂っていたのかようやく理解したヴァンは手を叩くと

「じゃあ、今日のミッションは俺だけで行ってくる。それならエールだって文句は・・・」

あるわよ!ヴァンの分際でアタシより目立つなんて許さないわよ!」

「じゃあ俺はどうしろと!?」

八方塞がりとはまさにこのこと。ミッションに行かなければ、一日でも早くセルパンを倒したいエールに罵声をあびせられ、行けば出番を取られて嫉妬したエールに殴られてしまいます。

一体、彼はどうすればいいのでしょうか。何も出来ずにただ半泣きになってることしかできないのでしょうか。実際半泣きになっていますが

すると、部屋の自動ドアが開き

「その心配はないわ」

どこかで聞いたことのある決め台詞を言いながら、プレリーが入室してきました。

「プレリー・・・」

突然勢いが治まったエールの肩に、プレリーは優しく手を置くと

「エール、目立ちたがり屋のアナタの気持ちはよーくわかるわ。だけど、一日でも早くセルパンを倒したいって気持ちが嘘じゃないのでしょう?だったら今日のミッションはヴァンだけで行かせるのが懸命だお思わない?」

かんしゃくを起こした子供をなだめる母親のように、優しく説得してやりました。

プレリーの言う事に、何一つ間違いなんてありません。間違っているのは、わがままのせいで、生まれてしまった矛盾を突きつけたせいで、ヴァンを半泣きにさせてしまった自分です。

後ろめたい気持ちになりつつも、納得したエールはしぶしぶ

「・・・わかったわよ。今日のところはアンタに任せてあげる」

とても嫌そうではあるものの、ヴァン一人でミッションに行くことを承諾してくれました。
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