過去拍手置き場

□第9話 ヘタレ汚名返上なるか!
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夜。ガーディアンベースは黒く染まっている空の上を優雅に飛んでいました。

ベース内、ここはヴァンの部屋です。

彼はベッドの上で体育座りをし、膝の上に顔を落としていました。今は一言も喋っていません。まるで人生に疲れきった中年のサラリーマンのようです。

そんな彼の様子を心配したのか、モデルZは小さく彼に話しかけます。

『おい・・・どうした?』

「・・・・・・」

しかし返事は無し。モデルZはやれやれと言いたそうに呆れて

『エールのことか?』

「・・・・・・うん」

彼の質問に、ヴァンは小さく頷き答えました。そしてこう切り出します。

「俺・・・このままじゃいけないって思ってさ・・・」

『ん?どういうことだ?』

モデルZが尋ねると、ヴァンは憂鬱そうな表情を彼に見せて

「毎回さ・・・エールにいい場面とられてさ・・・何か情けなくなっちゃってさ・・・漫画版では毎回活躍してたのによぉ・・・」

『・・・・・・』

モデルZは無言で返答した後

『だったらもっと相手にあれこれ言ったらどうだ?もっと前に出て戦いたいとか』

今のヴァンには到底出来ないことを言い出し始めました。

「無理に決まってんだろ・・・それができれば俺はこんな思いしてないし・・・」

超弱気のヴァン。こんなんだからヘタレヘタレって一部の人達に言われるんだ。

そんな彼に、モデルZは渇を入れます。

『甘い!そんなのだからいつまで経ってもヘタレという汚名が返上できないんだ!ヘタレを卒業したいのなら!もっと活躍したいのなら!エールの逆鱗に触れることを恐れずもっと意見しろ!自分が思っていることをはっきり言え!それができないのなら!一生お前からヘタレという名は消えないだろうな!』

彼の必死の叫び。その言葉には妙に説得量があります。何ででしょう。

その叫びにヴァンは心を打たれたのか、ゆっくりと顔を上げて

「モデルZ・・・」

涙目と涙声で呟くように言いました。

「俺・・・俺明日のミッションでがんばってみるよ」

『その意気だ。だがそのことに夢中になりすぎて、ミッションを失敗するんじゃないぞ』

「わかってるって!」

ヴァンの顔に、笑顔が戻りました。明日が楽しみですね。





エリアF。雪が降り積もる湖のほとりです。今回のミッションはこのエリアにいる遭難者の救出です。

「うわーさっむー」

この場所についたとたん、エールは身を縮めます。モデルZXにロックオンしているとはいえ、寒さを完全に防ぐことは難しいのでしょうかね。

「前回暑い所にいたのに、このままじゃ風邪ひいちまう」

同じく寒そうに身を縮めるヴァン。エールは全く気づいていませんが、彼の心の中では、真っ赤な闘志がごうごうと燃えていました。

「(大丈夫、俺ならできる!ヘタレという汚名返上のために!俺はやってやる!人間やればできる生き物なんだ!)」

心の中でそう豪語する彼の目は、昨日の夜の彼とは全く別人のように、キラキラと輝いていました。そんな彼の様子に不信感を持ったエールは

「・・・何してんのアンタ」

「あっ!いや!何でもない!」

まさかエールに口答えしようと思っているなんて言えないヴァンはとっさに手を振って誤魔化しました。

その時、プレリーから通信が入ってきます。

『問題の救難信号はこのエリアから出てるみたいなんだけど・・・電波が弱くて場所が特定できないの・・・』

「じゃあ後は足で探すしかないってことか・・・」

大変そうだなぁ・・・そうボンヤリとヴァンが思っていると、即座にエールのチョップが・・・

「てい」

「おっと」

炸裂しましたが、それはヴァンの頭部に激突する前にかわされました。

「・・・・・・え?」

今、現実に起こったことがいまいち理解できず佇むエール。しかしヴァンはいたって冷静に

「じゃあ早速遭難者を探しに行かないとな」

そう行ってエリアの奥に入っていきました。エールはぽかんとしたまま、何も言わずについて行きます。

その時、ヴァンは

「(おっし!あの時ボンヤリしとけば即座にエールのチョップが飛んで来るって予想してたけど、まさか本当にそうなるとは思ってなかった!これはアイツのハートにかなりのダメージを与えたんじゃないのかな!?)」

大変ハイテンションで、そう思っていました。今日の彼は一味違います。
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