過去拍手置き場

□24話 執念は巡り巡る
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ツッコミを放棄し転送装置でトンズラしたアルバートを追いかけ、2人は通路の奥へと足を踏み入れます。
扉をくぐった先にあったのはなんの変哲もない普通の部屋。特徴的なものを挙げるとすれば部屋の上の通路と下の通路の端にそれぞれ2つずつ設置されている転送装置といったところでしょうか。
『なんじゃあこりゃ?ただの転送装置部屋かあ?』
モデルAが呆れた声を出しますが、アッシュは珍しく真剣な顔になり、
「いや……きっと、この転送装置の先に今まで戦ったフォルスロイドが待ち受けているんだわ。アタシたちがアルバートの元に辿り着けるかどうか試すのと、一度倒された復習を果たすため……ってところかしら」
顎に手を当て、真面目に解説する彼女の横顔にグレイは羨望の眼差しを向けます。やっぱりアッシュは頼りになるしとってもすごい人なんだなぁと、憧れの気持ちを更に強くさせました。汚点が見えてないってすごい。
『やけに詳しいな』
「前にエールに教えてもらったのよ。こーゆー感じの敵の本拠地には今まで戦ったボスが一斉に出てくるから、1人一体ずつ仕留めていくほうが効率がいいって。一度倒した相手に負ける訳がないんだからって」
人はこれを「強者の余裕」と呼びますし、人ではないモデルAも心の中でそう呼びました。
「だからエールのアドバイスに従って!今からフォルスロイド共を1体ずつ確実に倒していくわよ!トランスオンはどちらか1人しか使えないから、なるべく使わない方針で行きましょ!」
「わかった!アッシュ、頑張ってね!」
元気よく駆け出し行った少年の目には迷いも不安もありません。1人だけど大丈夫、信じている人たちがいる限り彼が不安に押しつぶされることはきっとないでしょう。
下の通路に降りたグレイを見送ってから、アッシュは小さく息を吐いて、
「……すっかりたくましくなっちゃって……飼い主として鼻が高いわ」
『その割には、嫌な顔してるなぁ』
「今からお祈りタイムをしなきゃいけないもの」
『……どゆこと?』
話が全く見えないモデルAの疑問に答えず、アッシュは手を合わせて目を閉じます。
「薔薇に当たりませんように薔薇に当たりませんように薔薇に当たりませんように薔薇に当たりませんように薔薇に当たりませんように薔薇に当たりませんように薔薇に当たりませんように薔薇に当たりませんように」
全てを察したモデルAは絶句するしかできませんでした。



元気よく駆け出したグレイが辿り着いた場所は、壁のない広い空間のど真ん中。天井は遥かに彼方にあると錯覚するほど高く、ここが室内だと忘れてしまうほど広々としています。
「広い場所に出たなぁ〜」
なんてぼやきながら一歩進んでみると、いつもの床や地面とは違った音が響き、すぐに足を止めました。
「あれ……?なんだろう、足音が軽い……?」
はて、こんな床前にどこかで踏んだような……?なんて首を傾げた刹那、
「アオアオアオアオーッ!!」
高らかな雄叫びが響くと同時に、グレイの目の前に床が砕かれ、ディアバーンが飛び出してきました。
「うわあ」
緊張感のない声を上げてぽかんとする彼でしたが、ディアバーンはそんなリアクション御構い無しです。
「新たな王、生まれた!新たな世界、生まれる!お前、もう、いらない!」
「そうなの?」
面と向かって「いらない」と言われているにも関わらずこの純粋な瞳です。モデルAはリアクションに困っている様子で言葉に詰まります。
しかしディアバーンはブレずに、
「そうだ、お前、いらない、消えろ!」
一瞬の内に飛び上がると、すぐ下にいるグレイに向かって飛び蹴り。硬い蹄がとんでもない速度で迫ってきます。普通のヒトなら反射的に避けられない速度ですが、
「おっと!」
普通のヒトではなくロックマンであるグレイなら余裕で回避できます。止まることなく突っ込んでいったディアバーンは床を粉砕し、その下に落ちていきました。
「ありゃりゃ、落ちちゃったね」
ディアバーンが落下した穴を覗き込みながらグレイがぼやくもモデルAは声を震わせつつ、
『いや……前の経験だとこれ……』
これ?とグレイが首を傾げた刹那、
「アオッ!!」
またもやとんでもない速度を付けて穴から蹴りが飛び出し、グレイは慌てて顔を引っ込めて回避。少し遅れたため鼻の頭を擦りました。
「わっ」
それでも緊張感の欠片もありません。飛び出したディアバーンはそのままグレイの目の前に着地、
「よけるな、一撃で、仕留める」
「嫌だよ。僕が倒れちゃったらアッシュひとりでアルバートを倒さなくちゃいけなくなるんだから!そんな大変なことアッシュだけに任せておけないよ!」
力強く言い放ったグレイは2丁のバスターをディアバーンに向け、チャージショットの準備を始めます。しかし、ディアバーンも腕を向けて、
「そんな勝手、知らない」
と、ファイアーアローを発射。先端が炎に包まれた矢が3本同時にグレイに向かって迫ってきます。誰がどう見てもチャージが溜まるよりも早い。
『ヤベッ!』
「大丈夫!」
即座にグレイは左のバスターだけチャージを中断し、ホーミングショットに移行。一瞬で照準セットされたショットは曲線を描いで飛んでいき、全ての矢を破壊しました。同時にディアバーンにもヒット。
「ググっ!」
「さらに喰らえ!」
同時にチャージが溜まり、最大火力のチャージショット発射。ホーミングショットで怯んだディアバーンは回避できず、その腹部を貫きました。
「お前……オキテ……破った……!王の……罰……受けろ……!」
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