過去拍手置き場

□24話 執念は巡り巡る
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ウロボロス内部は、一言で表すとしたらモデルVの中そのものでした。
細胞のような赤色の向こうには、今まで幾度なく見てきたモデルVたちが顔を覗かせ、無謀にも乗り込んできた侵入者たちを静かに見下し、心臓のような鼓動をリズムを乱すことなく繰り返しています。
しかし、彼らは見るだけで何もしません。実際に攻撃を加えてくるのは、それらから生み出されたイレギュラーたち。
姿形は今まで見てきたモノたちと同じですが、数が圧倒的に違っていました。やはり的の本拠地でありモデルV内部、そう簡単に事は進まないでしょう。
行く手を塞ぐイレギュラーたちを超え、はっ倒し、木っ端微塵に粉砕し、一撃死する棘地帯に突き落としてやり、アッシュたちは1つ目のドアを潜ることに成功。
「あら?雰囲気かわったわね……?」
「うわー!絨毯フカフカだね!」
今までとは違って、壁にはモデルVたちではなく、豪華な装飾がされた窓がズラリと並び、床も鉄のようなコンクリートのような、少なくともアッシュたちではわからない材質でできたモノではなく、赤い絨毯が敷かれており、それは部屋の奥まで続いていました。
おそらく普通に暮らしていれば一生に一度もお目にかかれないであろう豪華な内装の廊下が珍しくて、2人が何度も辺りを見回していると、
「まさか飛行艇でこのウロボロスに突っ込んでくるとはね」
もはや説明するまでなく知った声が響き、2人が反射的に廊下の奥に目をやります。
それと同時に転送音、赤い絨毯の中央に着地したのは紛れもなくアルバート本人。海底火山で見た、桃色の髪をした元三賢人。
「……進化に追いつけぬ者のやる事は、野蛮だn」
そこまで言うと同時に、
『撃てーーーーーーー!!』
掛け声と共にチャージショットとホーミングショットを一斉掃射。もはや見慣れた戦法。
「こんなに早く姿形を拝めるなんて思わなかったわ!ここで決着をつけてやるわよ!アンタが今ので蜂の巣になってなければね!」
「アッシュ!」
「どうしたのよグレイ、もう蜂の巣になったアルバートが見えたの?」
「アルバートがいないよ!」
「ホワイ?」
彼の言った通りで、ショットの雨あられによる土煙が消えた時にはもうアルバートの姿はどこにもなく、一切傷ついていない真っ赤な絨毯が見えるだけ。何で作られているんでしょうね。
「まさかもう逃げたの……?逃げ足早すぎない……?」
「逃げてない」
「え?」
アルバートでもグレイでもモデルAでもない声がしてとっさに部屋の奥に目をやると、そこには、
「……グレイ、アンタもうトランスオン……して、ない、わよ、ね?」
「うん、してないよ!あれ?」
『じゃあ、アレは誰……だ?』
2人とモデルAが一斉に首をかしげるのも当然のこと。突如として目の前に現れたのはアルバートではなく、かつての敵、ディアバーンだったのですから。
「裏切り者、モデルA……俺、お前、倒す!」
「はい?何で、アンタがここに……めっちゃ前に倒したハズだけど?」
モデルAと出会った列車の屋根の上で死闘を繰り広げた記憶はまだ新しい方です。アッシュが困惑を隠せないでいるとディアバーンの体が光に包まれ、
「シャーッシャッシャッシャッ!この時を待っていたぞ!復讐の時をな!」
光が消えたと同時に現れたのはクロノフォス。水中の多い場所ではトランスオンで何度もお世話になったあのカブトガニ型フォルスロイド。ここは水中ではありませんが、不思議なことに宙に浮いていました。本当に不思議。
「あれれ?どうして…」
グレイが首を傾けたままでいるとクロノフォスの体も光りだし、
「こんな所までやってくるとは……しつこい女だ」
「ギャアアア!!」
アッシュがちょっとしたトラウマを負ってしまった原因を作ったフォルスロイド、ローズパークが登場。今回もやはり悲鳴が出ます。
すると、ローズパークの体が光に包まれて、
「あら……私にもおもてなしさせてほしいわ」
「カイゼミーネ!?グレイが粉砕したハズじゃあ……」
突然現れたカイゼミーネにアッシュが驚愕している間にも再び光が、
「アンコールに応えて来てやったぜ!」
派手なギター音と共にコンドロック登場。彼もグレイが粉砕したフォルスロイドの1体です。
「あれ?どうして?あれれ?」
倒した本人が首を傾げている間にも光が、
「処刑はまだ継続チューなのよっ!」
テスラットが現れ、
「覚悟せよ!二度と不覚はとらぬ!」
アーゴイルとウーゴイルが現れ、
「王に仇をなす者め!今度こそ滅ぼしてくれる!」
バイフロストが姿を表したのです。
「ど、どどどどうなって……?」
文面から見てもわかりやすく動揺する彼女。グレイも目を白黒させていますしモデルAも、
『これは……トランスオン!?何がどうなってやがるんだ……?』
トランスオン!?とアッシュたちが叫んだ刹那、バイフロストが光に包まれ、それが弾けると同時にアルバートが再び姿を表しました。
「言ったろう?君たちは私の影だと」
「は!?アタシの方がアンタの50000倍輝いてるしー!影なんかじゃないしー!」
「もうそれはいいから」
ここまで長い付き合いになるとこんな返しが来ると大体予想がついてしまいますね。予想ができれば対処もし易い、アッシュの戯言は軽く流すだけで問題なくなります。
「だが、私の力はコピー能力などではない。モデルVの生贄となった全ての魂が私の中で生き続けている……全ての命を操る力……それが究極のロックマンの力……真のトランスオンだ」
「モデルVの生贄になった人が全部……じゃあ、新緑のタワーでモデルVに殺された違法ハンターの人や、ハイウェイでイレギュラーの襲われていた人たちも……全部……?」
声を震わせるグレイに対し、アルバートが返したのは口元を緩ませた不敵な笑み。
「この奥に彼らの新しいボディを用意した遊んでやってくれ、私の元までたどり着けたら……全てを教えてあげよう」
「教える?アンタに教わることなんて何もないわよ。その悪趣味な髪の染め方ぐらいしか聞くことないし」
『あるじゃないかオイ』
モデルAの正論、その言い方だと髪をピンクに染めたい願望でもあるのかと思ったアルバートでしたが、一度話を脱線させてしまうと軌道修正にとんでもない時間がかかってしまいます。急ぎの用事がある訳ではありませんが、非常に無駄な時間を過ごす事態は避けたいもの、ここは疑問を飲み込んでおきました。
「教えてあげよう……何故、君たちが不完全とはいえトランスオンを使えるのか……君たちの……正体をな」
「正体?正体も何もアタシはアタシでしょ?オンリーワンでナンバーワンの」
「うんうん」
「ねえなんでここまで来ても君らはシリアスに染まらないの?いい加減緊張感持ってミッションに挑んで?」
これに関しては、一流のハンターはいかなる時も心に余裕を持つものだとアッシュは得意げに語ったという
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