過去拍手置き場

□21話 本陣突入
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転送先は前後左右岩に囲まれた洞窟でした。
不思議な事に暗くはなく、不自然なぐらい明るいこの場所はとても狭く、部屋全体を見回してもトランスサーバーと正面に見える扉ぐらいしかありません。
見れば見るほど殺風景な場所ですが、アッシュたちは体の奥底から感じる何かがありました。
『……分かるか?2人とも』
モデルAが静かに問うと、アッシュとグレイは同時に頷き、
「ええ……しっかり感じているわ……天才美少女ハンターアッシュちゃんを拒む負の気配……それは例えようのない愚かな行為……」
『ちげーし』
「僕はモデルVのプレッシャーを感じるなぁ……今までにない強い気配」
いつもの自論を展開するアッシュと違い、グレイは真剣な眼差しで扉を見つめています。この先に待っている真実を見据えているよな瞳でした。
「さすがグレイ……アタシの下僕も様になってきたじゃない」
『それっぽい事言ってごまかしても無駄だからな』
と同時にアッシュのロックオンは解かれ、一瞬の内にモデルAをトランスサーバーのモニターにぶつけて顔面強打させると、何事もなかったかのようにロックオンしなおしました。
「あれ?さっきロックオン解けてなかった?」
「気のせい気のせい。ほら、さっさと奥に進みましょ」
モデルAは心の中で泣いたという。



ドアの先に見渡す限りの水面が広がっていたので、2人は迷いなく水の中に飛び込み、突撃してきたエビ型メカニロイドをバスターショットで粉砕。エビが無残に散りました、この状況をエビチリと呼びましょう。
「なんか今ものすっごくくだらない何かが聞こえたような気がする……」
「僕には聞こえなかったし、きっと気のせいだよ」
グレイもそう言うので聞かなかったことにして、水底をまっすぐ進んでいたアッシュたち。イレギュラーを蹴散らしつつまた奥にあった扉に入れば、
「わあ!外に出たね!」
出た先は白くてサラサラとした砂地に、あちこちに見える山々は、水中にも関わらず頂上から赤色の炎を吹き出し、辺りに岩を降らせていました。
「すごーい!水の中なのに火山があるよーアッシュ!」
「さしずめ、海底火山と言った所かしら……?とんでもない所に来ちゃったみたいねぇ、アタシたち」
これもまた自然がつくり出したモノなのでしょう。大自然の偉大さに2人と1個が深く関心していると、すぐ近くにある別の山が轟音を上げて噴火を始めたのです。
「うっわ、あんな所で爆発とかマズくない?」
『ああマズイぞかなりマズイ……』
「わあ」
見上げたグレイが気の抜けた声を出すので、アッシュも釣られて真上を見れば、沢山の岩が一直線に落ちて来る様子が確認できました。水中なので動きが遅いのが唯一の救いでしょう。
「ヤバイ!急いで逃げるわよ!」
「おっけー」
バスターショットで岩を1つ1つ破壊することももちろん可能ではありましたが、、数が多すぎるため相手にしきれません。よって逃げる選択。
『海底火山が活動してるから人はみんな近付けない……隠れ家を作るには絶好の場所だったってワケか!』
「うーむ敵ながらアッパレ。このアタシが感動するんだからかなりの偉業をやってのけたわよアルバートは。後世にまで誇れるでしょうね」
真剣な顔をしてツッコミ所満載の台詞を言っていましたがモデルAは何も触れません。
「逃げるのは良いけどいっぱい爆発してるよ!」
「マズイ、完全に警戒モードに入ったっぽい。アルバートのことだし自然の驚異に人の手を加えて自分用の防衛システムを作ることぐらい可能なんでしょうし」
なんて推測を展開している場合ではありません。周囲の火山だけでなく正面の火山も次々と噴火を始め、赤色の岩を吐き出しています。火山の熱で水温がじわじわ上昇中、まるで夏に行ったプールのよう。
「不快以外の何物でもないわよこの場所ー!次なる道はまだなのー!?」
叫ぶアッシュの真上では、遊泳していたエビ型メカニロイドが岩と衝突にバラバラになっていました。
『イレギュラーを一掃できるのはいいけど、いつオイラたちに被害がくるかわかんないのがなぁ……』
「あ!そうだ!クロノフォスにトランスオン!」
ぴっかーん。とグレイは突然クロノフォスにトランスオン。そのままアッシュの真上までやってきます。
「え、なに?どうしたのいきなり」
動揺して立ち止ったアッシュが目を白黒させている最中、降ってきた岩が甲羅に命中。そのまま岩が砕け散りました。
「うっそ」
「やっぱりクロノフォスの甲羅なら岩を防げる!これで行こうよ!」
「よ、よしよし!グレイにしては名案だわ、これでアタシたちだけ岩を防げて周りのイレギュラーはみんな落石にやられエビチリになっていく……パーフェクトかつ美しい作戦ね!」
どこがだよ。と心の中でツッコんでおいたモデルAです。
「とはいえ頭上にグレイをキープさせて進むって……なーんか違う気がするのよねぇ。派手さが足りないわ」
『敵の本陣攻略に派手さも何もいらないだろ』
「わかってないわねモデルAは!一体何年アタシたちと付き合ってると思ってるの!いい加減覚えなさいよね!」
『そういうリアルな数字はいいから。さっさと進もうぜ』
「待ちなさい、ついさっき天才的なひらめきが下りてきたから』
どこに行っても彼女は相変わらず己のペースだけでしか動きません。ナルシストというより究極にマイペースなだけなじゃないかと思い始めたモデルAです。呆れて言葉を失っている間にも、小声でグレイと打ち合わせをしています。
今の所、相手の攻撃手段が落石しかないので、クロノフォスになったグレイの下にいればかすり傷1つつきません。よって落ち着いて相談ができるのです。
こうして話すこと3分、カブトガニ型のメカニロイドの前足を掴んで浮遊し、高速で海底火山を進むアッシュが出現したのでした。
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