過去拍手置き場

□11話 スクラップステージ
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レギオンズ本部がある国・・・の外にあるスクラップ置き場。つまりは国外施設。
転送装置のお陰で国外だろうが国内だろうがひとっ跳びできます。いい時代になったものですね。
「スクラップ置き場!」
「すぷらった!」
「それは恐怖映像よ」
アッシュとグレイのこのやりとりも、すっかりいつもの光景と化してしまいツッコむ者は誰もいません。色々と諦めてしまったのかモデルAもすっかり口を閉じてしまっています。
ゴミと化した機械や金属片や赤白黄のコードを踏みつけ。
「こういう所にはたま―――――――にお金になるような機械とかがあるけど、スクラップあさりはこの素敵無敵美少女ハンターアッシュちゃんには向いてないのよねー時代はスクラップより金銀財宝だし」
「あれ?超絶美少女ハンターアッシュじゃなかったっけ?」
「ふっ・・・グレイ、覚えておきなさい。1つの事に固執しすぎると前に進めなくなってしまうわ、だからアタシの2つ名は定期的に変化・・・否、進化していくの!だから超絶美少女ハンター改め素敵無敵美少女ハンターよ!覚えておきなさい!」
「分かった!また代わった時は教えてね!」
『おまえさんら、よくもまあいつも飽きもせずにそんなやりとりできるもんじゃな』
通信機から呆れた声が聞こえてきます。三賢人の1人、マスターミハイルです。
世界中に現れたイレギュラー討伐ミッションという仕事のため、ナビゲートは三賢人が務めてくれています。よく考えれば凄く名誉な事ですが、自分が一番だと信じて疑わないこのハンターはそれが世の常だと本気で思っているらしく。
「あら、誰かと思えばマスターミハイルじゃない?アタシの美貌は通信機だけじゃ伝えられないのが残念だわ〜」
世界のトップに対してもこの台詞です。出会った時からこんな感じだったので、ミハイルは既に考える事をやめてしまっています。
『伝えられん美貌はともかく、このスクラップ置き場はつい最近まで雪に埋もれておったんじゃがな、よくもまあここまで積み上げたもんじゃ』
「雪?雪って極寒の流水で見た白くてふわふわしたモノだよね?ないよ?」
キョロキョロと辺りを見渡すグレイ。後ろで壊れた機械がノイズの混じった何かの曲を奏でており、哀愁漂う光景に。
『雪は機械の熱で溶けてしまったんじゃ。動かなくなって捨てられたハズの機械たちが、イレギュラーとなって動き始めておる』
「えっ何で?何で?スクラップって動けないからスクラップなんでしょ?」
「やっぱりすくらっぱ?」
『分からんからお前さんらに来てもらったんじゃろうが。この奥にスクラップを操ってる奴がいるハズじゃ、そいつを倒してイレギュラー共を黙らせてくれ』
彼らのペースに乗せられると話がミクロ単位で進まなくなってしまうのも分かっているため、伝えたい事だけ伝えてさっさと通信を切りました。良い判断です。
『おいおい三賢人にまで・・・』
「おっしゃー!グレイ!華麗に決めてスマートに終わらせるわよ!」
「おー!」
脳内に響くモデルAの呆れ声をスマートにスルーし、アッシュとグレイは意気揚々とスクラップ置き場の奥に足を踏み入れて

ぐしゃ

「おん?」
何を踏んだのか?と思って足を止めて見下げてみると、スクラップが積み重なった山の上に立っている事が分かります。そして、スクラップたちの中に沈んでいく足。
「にゃああああああ!?」
「アッシュ――――!」
グレイのやや貧弱な腕力では腰まで沈んでしまったアッシュを助けるのは困難を極め、モデルAの助言もあって30分程かかりました。





スラップ置き場、内部。
ミハイルとやりとりをしていた入り口とは比べ物にならない量のスクラップが目立ち、いくつかの機械は人の手もないのに稼働して音を出しています。中にはスクラップ同士が合体して生まれたイレギュラーが、両腕を伸ばして2人たちに襲いかかろうと。
「邪魔」
して、アッシュに頭と胴体をチャージショットでぶち抜かれて崩れ落ち、ただのスクラップに戻りました。
「あ〜あ・・・こんなスクラップだらけの所を歩き回っていたらアタシの美貌がスクラップで埋まってしまうわね・・・」
近くにイレギュラーがいないと確認してからバスターを下げ、ため息を吐くアッシュ。己の美貌より世界の平和を優先するのが主人公というものですが、彼女にとって己より大切なモノは存在しないので無理な話。
イモムシ型のイレギュラーをホーミングショットで倒したグレイもバスターを下ろすと。
「ごめんねアッシュ・・・僕がもっと早くアッシュをすくらっぱの山から引っ張り出せたらアッシュがすくらっぱだらけにならずに済んだのに・・・」
申し訳なさそうな顔をして俯いてしまいました。まるで主人に叱られた子犬のようです。
しかし、アッシュは決して叱りはせず。
「グレイに怒って言ってるんじゃないから落ち込まなくてもいいわ、アタシが起ってるのはアタシの美貌を汚そうとしているイレギュラーやスクラップよ。それにアンタはアタシの美貌を保つ最大かつ最強の防具であり僕であり相棒であるんだからもっと胸を張って生きてもいいの」
「そっかーよかったー」
安心するグレイですが、モデルAはとても冷静でした。
『良い話に水を差すようで悪いけど、そのグレイの扱いってどうなんだよ』
「下僕以上友達以下よ」
『それってそこそこ最低レベルじゃね?』
なんともかわいそうな話ですが、グレイ本人が首を傾げているのであまり言及できません。無垢すぎる少年の心を守るため、モデルAは口を閉ざすのでした。
「さ〜てお悩みも解決した所だし、素敵無敵美少女ハンターアッシュちゃんの華麗な爆進劇を披露しちゃおっかな〜」
「おお〜!」
この中で唯一歓声を上げている少年は台詞の意味を何1つ理解できていません。ただアッシュが何かすごい事をするんだろうな、という確信はあるようです。
「まずは華麗にあの穴を飛び越えるわよ!大丈夫、ロックマンの脚力ならイケるわ!」
「は〜い」
何をどう華麗に飛び越えるのか知りませんが、アッシュとグレイは一緒に踏み込んで地上から空中に飛び立ちます。
真下は底が見えない黒くて暗い世界、イレギュラーが徘徊して所々から機械音が奏でられているスクラップ置き場だというのに、穴の中だけは恐ろしいほどの静寂が広がっており、まるで別世界の入り口のようでした。
飛んでいる間、モデルAは暇なのでそろそろツッコミ役からボケ役に転身を狙ってみるのもありかなーと、路線変更しようか悩んでいると
真上から、何かが近づいてくる音がします。
『んむっ?』
気のせいか?と思いましたが音はどんどん近づいてきます。丁度空中散歩中のアッシュとグレイは身動きなんてとれませんしそもそも音に気づいてすらいません。そして、サーチ能力など備わっていないモデルAは何が起こったのかは理解できないまま1秒という時間が過ぎて。
スクラップが雨のように降って来たと気づいた時には全てが手遅れでした。
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