過去拍手置き場

□10話 黒幕登場
2ページ/2ページ

「アルバート・・・アンタもしかして、アタシやグレイの事を何か知ってるの?」
「全部聞こえてたのね!そう!私は君たちの全てを知っている!全てね!」
やっと真面目に話を聞いてもらえるようになったお陰か、少しだけテンションが上がったアルバート。単純なオッサンだな・・・というモデルAの独り言は聞かなかった事にしましょう。
「じゃあ・・・僕の事も?昔の僕も知ってるの?」
「もちろん」
「超絶美少女ハンターアッシュちゃんの半生も!?」
「そうだね」
「パンドラが僕の事をグレイきゅんって呼んでた理由も?」
「あれはパンドラちゃんが君の事をペット扱いしてただけだから」
「アタシが昔から超絶美少女ハンターになる素質があるって知ってたのね!」
「それは知らない」
『全てを知ってるって言った癖に!』
「逆ギレしないの!」
こればかりはアルバートが正論です。他の三賢人の2人も大きく頷いていました。
モデルAがツッコミ放棄してしまうほど逆ギレしてしまったアッシュとグレイはすかさずバスターの銃口をアルバートに向け、ためらいも無く引き金を引きます。
途端に銃弾が雨のように降り注ぎますが、浮遊していた黒いライブメタルが銃弾を1つ1つシールドで防ぎ、グレイが放ったチャージショットも弾きました。その衝撃によってアルバートの背後にある窓ガラスが吹き飛びました。
「嘘でしょ・・・全然通用しないなんて・・・いっそグレイと一緒にギガクラッシュでフィニッシュするしか・・・」
『それは駄目だ!こんな所で2人一緒にアレを使ったら間違いなくこの部屋が吹き飛ぶ!』
使用回数が少なく、まだギガクラッシュの危険性が分かっていないアッシュにモデルAの叱咤が飛んだと同時に、アルバートはふわりと宙に浮きます。
「ここで決着を付けようとしなくてもいいさ、また会えるからね」
「どうして?」
「君たちは、私の影なのだから」
意味深な言葉を残すと、彼は姿を消しました。
「逃げた!」
「待ちなさい!アタシを騙した罪は海より深くてアフリカゾウより重いのよ!」
急いで駆けた2人でしたが、割れたガラスの向こうには黒煙が上がる街が広がっているだけ。このビルの真下に人影は1つもありませんでした。



「なるほど、君たちの話は大体わかった」
アルバートが去った後、ロックオンを解いたアッシュとグレイはモデルAに関する今回の出来事やここまで来る道中等を一通りトーマスに説明したのでした。
「ビルの屋上に現れたキングフライヤーのパーツを使ってホバーを改造する技術には度肝を抜かれたが・・・ここまで派手に登場する必要はなかっただろう」
さすがは三賢人のリーダー格、レギオンズのイレギュラー騒ぎを鎮静化させた英雄に対しても、まるで厳格な父親のように接します。
さすがに実際の三賢人を前にすると、いつもテレビや雑誌で見るのとはまた違った迫力があり、2人を圧倒させてしまうのでした。
「は、はい・・・」
「もっと別の方法でアタシの名前を歴史に刻みこむわ・・・壁に名前掘るとか」
「全然反省してないな」
さらに目つきを鋭くさせたトーマスですが、アッシュは「反省してるけど?」とキョトンとするので何も言えなくなってしまいました。呆れて。
「まあ・・・いい。我らは機械の体を持ち、数百年の時を生きることを許されている。アルバートは三賢人となる数百年前に、既にモデルVを作り上げていたのだな」
「暇なのねぇ」
「・・・後、データベースで君たちの事を調べさせてもらったよ」
「本当!?僕の事、何か分かったの!?」
「アタシの麗しき半生も分かったのね!?」
後者の少女の台詞にツッコみたくなるのをグッとこらえて
「2人のデータは・・・なかった。君たちは世界に存在していない者という事になる」
『ナンダッテ―――――――――!!』
三賢人になって気が遠くなるような年月を生きてきた彼ですが、ここまで息の合った絶叫は今まで一度も見た事がありませんでした。
「恐らく・・・データはアルバートが消したと考えられる。それほど君たちがヤツにとって特別な存在だったのだろう」
「アタシほどの超絶美少女ハンターが特別じゃないなんて考えられないわ」
「少し黙ろうか」
トーマスが静かにキレても「黙る」という文字を知らないのか、ナルシストとマイペースは真剣な趣で「アルバートが自分たちを特別扱いしている理由は何か」という話題で話し合っています。真剣なのは結構ですが、場所をわきまえてほしいと思わずにはいられません。
すると、一度部屋の外に出ていたミハイルが戻り
「諸君、悪い知らせだ。世界の各地にイレギュラーが現れている。アルバートめ、モデルVの生贄を集めるために狩りを始めおったのだ」
『クソッ!正体バラしたらもうお構いなしのやりたい放題かよ!行こうぜアッシュ!グレイ!』
モデルVの生贄のための狩り。それを聞いたモデルAはここぞとばかりに叫びますが
「駄目だわ、どう考えてもアタシの美貌を知った上での犯行としか思えない。アタシの魅力は1人の三賢人を狂わせてしまったのね・・・美しいって罪・・・」
「アッシュがうつくしいのは悪い事じゃないよ!前も言ったじゃん!アタシの美貌は世界を救うんだって!アッシュがうつくしくなればきっと何とかなるよ!」
「ありがとうグレイ、ちょっと変な慰め方だったけど元気が出て来たわ」
『話を聞け―――――!どこまでもマイペースだなぁ!オイ!』
トーマスとミハイルの耳には決して届かない絶叫が頭の中で響くものですから、ようやく話の本筋に戻れました。
「今はアルバートの目的やアイツにとってのアタシたちの存在意義について予想を立てるのはやめましょ!」
「今はイレギュラーで困っている人たちを助けないとね!」
「アルバートが何を知っているのかは直接聞くわ!ボコボコにして吐き出させてやりましょ!」
「今度こそギガクラッシュ!だね!」
2人は笑顔でしたが会話の内容はやや恐ろしいです。とにかく、今は前を向いて歩くしかないのだと分かってくれたところで。
「ありがとうアッシュくん、グレイくん。改めて君たちにミッションを頼みたい。アルバートの計画を阻止し、各地の人々を救ってほしい」
「任せなさい!この超絶美少女ハンターアッシュ様が全部解決してあげるわ!ぶっちゃけ今日が最終回だと思ってたからちょっとホッとしてるし!」
『そこまで思ってたのかよ・・・』


続きますよ
2015.9.3
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ