過去拍手置き場

□10話 黒幕登場
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レギオンズ本部。最上階。
広いホールのような部屋に壁は全てガラス。現在進行形でイレギュラーに襲撃され、至る所から黒煙が上がっているビル街が一望できます。
「ええい忌々しい、イレギュラー共め・・・」
痛々しい光景を見ながら、ミハイルは言います。
「奴らが組織的に行動するとは、信じがたい話だな」
「イレギュラーを指揮する者がいるのかもしれませんね」
トーマスとアルバートも険しい顔で言葉を発すると、ミハイルは振り返り
「だが、その者の狙いはなんだ?全ての国家を敵に回そうと言うのか!」
ミハイルが声を荒げて叫べばトーマスは険しい顔つきのまま黙り込み、アルバートは手元の本を閉じ2人に背を向けました。
「理由ですか・・・例えばこの世界に愛想が尽きた、とか」
静かに、そして確かにそう言いました。
「・・・何だと?」
冷静さを保ったまま、心の奥底にできた動揺を隠しながらトーマスは静かに問いかけました。
そして、アルバートの背後から浮かんできた黒い三角の物体を見て、何かを確信しました。
「新たな支配者、究極のロックマンへと進化するため・・・そして、一人の科学者として進化の行きつく先を見たいがため、ですかね」
黒い物体は2つ、3つと増え、とうとう4つの物体がアルバートの周りを静かに浮遊します。
「それは・・・一体・・・!?まさか貴様!」
「これは、提案ですよ。数百年かけて導き出したこの世界への提案です、我ら三賢人は三人の協議を持って公平な答えを導き出すためのシステム・・・否定をするのなら、アナタ方2人で止めて見せたらどうです?そう、三賢人として」
トーマスもミハイルも、黙ったまま何も言えません。表情1つ変えませんが、非常に緊張した場面だからか額から汗が流れました。
「さあ、どうしますかね?2人と」

ごごごごごごごごごごご

大変緊張感のある空気をぶち壊すように、ジェット機のような轟音が遠くの空から聞こえてきました。
轟音はすごい勢いでこちらまで迫って来るので、この音は町から出ている音ではないと物語り、アルバートが「何だ・・・?」とぼやいた刹那。
『イヤッホォォォォォォォォォォォォ!!』
窓ガラスを突き破ったのは、ジェット機のついたホバーに乗っているアッシュとグレイでした。今回も常に高いテンションを更に上げて、レギオンズの本部に突っ込んできたのです。
トーマスとミハイルが唖然とし、アルバートは窓ガラスが割れたと同時にホバーの進行方向上に自分がいると気づいたのですがもう遅い。
「ギャアア!?」
哀れ黒幕。ドアまでホバーもろとも突っ込み、小さい爆音が聞こえた後は火が消えたように静かになりました。
黒煙が立ち込めるドア付近。最初に顔を上げたのはアッシュでした。
「ぷはー!レギオンズ史上最高の登場を演出しようと思ったのにちょっとミスっちゃったーまさかブレーキがないなんて!」
「折角2人で一緒にホバーを改造したのにねー」
次に顔を上げたグレイも、体についたススを払って立ち上がります。アッシュもグレイもロックオンしたままです。
やれやれーとか惜しかったねーとか、天下のレギオンズ本部に来た一般人とは思えない言動の2人にたまらず、トーマスは。
「・・・いや、君たちの登場は間違いなくレギオンズの歴史に刻まれる事だろう」
「・・・悪い意味で」と小声で付け足したのは誰の耳にも届きませんでした。ミハイルが驚きすぎて変な声を上げるのも聞かなかったフリ。
「マジで!?やった!歴史に名を刻むっていうアタシの人生の目標が早くも達成できた!」
「よかったねアッシュ!」
悪い意味で。ですが。
「てかすっごい空気重いけど何かあったの?」
「今気付くのか・・・そもそも気付けたのか・・・」
呆れるあまり額を抑えるトーマス。ミハイルはもう何も言いません、見るだけで疲れてきました。
「やっと来たか・・・適合者たち」
「!?」
不意に響いた声に反応し、とっさに振り返った先にいたのは
「ぶっちゃけ死ぬかと思った・・・」
頭からドバドバと血を流しているアルバートがいました。黒い三角の物体も4つちゃんとあります。
「なんで初っ端から死にかけてるのー?」
「君たち自分がした事全然理解してないね!一度自分の胸に手を当てて考えてみようか!」
必死になって訴えても目前の適合者2人、首を傾げてキョトンとするだけ。同時にどうしてこんな2人がモデルAで変身できるんだ・・・とあきれ果ててしまうのでした。
『お、おい!あれ、ライブメタルじゃないか!?』
アッシュたちがホバーに乗り込んでからずっとツッコミ放棄していたモデルAが、アルバートの周りに浮遊している4つの物体を見て叫びました。
「マジ?あのおにぎりみたいなヤツが?」
「おにぎり違う!ねえ君ら本当にプロテクト2つ解いたの?私ちょっと信じられないんデスケド!」
アルバート、もはや涙目。虚しい気持ちに駆られた黒幕の心境など知らず「プロテクトって何かしら?」「よく分かんない」と雑談を交わす適合者たちのせいで虚しさは増すのでした。
「グレイを早めに処分しようとしたけど失敗するしパンドラちゃんは毎日癇癪起こすし4人の適合者たちは反抗期真っ盛りだしなんなのこれ・・・アッシュの成長だけが唯一の喜びだけど自意識過剰すぎるし素直に喜べない・・・」
「むっ?アタシを称賛する声が聞こえた」
さすがは地獄耳、壁に手をついてボソボソと独り言を零していたアルバートの言葉を瞬時にキャッチ。
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