過去拍手置き場

□8話 元軍人とハンターの彼女は似ている
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油田に墜落した違法ハンターの飛空艇には、多くの違法ハンターたちが乗ったまま、イレギュラーに阻まれて身動きがとれなくなっていました。

「ヒイイイ!」

彼、24歳独身彼女は8年前に分かれて以来それっきりの違法ハンターの男は、寝室の壁に背を預けたままゆっくりと座り込んでしまいました。

油田に飛空艇が墜落してからというもの、わんさかやってくるイレギュラーと交戦しつつ脱出のチャンスを窺っていましたが、つい最近現れたとんでもない女のせいで平行線を保っていた戦況はムチャクチャ。雪崩のごとく入り込んできたイレギュラーに仲間は次々と殺され、彼にも今まさに窮地が迫っているのです。

その窮地とは目前にいるガレオン2体。感情など持たない無慈悲なイレギュラーの兵士は彼に右手の銃口を向け、しばし待って神への祈りの時間をくれてやります。

「そんな・・・俺も・・・ここまで・・・」

こんな事になるぐらいならまっとうなハンターになっておけばよかった・・・今更遅い後悔の念を掲げつつ、人生の終わりを確信した・・・

その時でした。寝室のドアが開いたのは。

「そこまでよ!」

てっきりイレギュラーの増援が来たのかと思ったのですが甲高い声と堂々とした態度からしてそうではなさそうです。男がマスクの下の目を見開き、ガレオン2体が反射的に振り返りました。

「弱者をいたぶって楽しむゲスい集団イレギュラーめ!アンタたちの相手はこの絶世の美少女ハンターアッシュちゃんが成敗してあげるわ!」

「成敗してあげる!」

彼らが見たのはノリノリで喋りながら二丁拳銃の銃口をイレギュラーに向けている2人組。絶世の美少女ハンターアッシュちゃんと名乗ったのは右側のポニーテール娘で、まるで彼女の子分のように同じ台詞を続けたのは左側の褐色肌の少年。

なにこいつら・・・という空気が一瞬だけ流れましたが、ガレオンはそのまま銃口を2人に向けました。

ああ!なんかよく分かんない2人組がイレギュラーの毒牙に・・・!と男が手を伸ばそうとした刹那

「どらあああ!何いきなり華の乙女に銃口向けちゃってんのよ馬鹿か!この誰もが羨む美貌に傷でも付けようって魂胆なんでしょそうなんでしょえぇ!?傷付けて所有物扱いですか――――?アタシをアンタのモノにするつもりですか―――――?でも残念、美少女ハンターアッシュちゃんは誰の者にもならないの!孤独は美人に付き物なんだから!」

と、絶叫してから

「てなわけで排除」

チャージショット連射。2発の弾はガレオンの頭部を確実に貫き、その場で小さく爆発して機械片が辺りに飛び散ったのでした。

「先に銃口を向けた方が負けるのよ・・・覚えておきなさい」

「分かった!」

『(えー?)』

元気よく返事をした少年とは違い、先に銃口向けて他のアンタだったよね・・・?というツッコミをしたかったけど、彼女の有り余る勢いを目前にしてツッコミの言葉1つ出てこなかった違法ハンターの男。助かったと歓喜するのも忘れて心の中であきれ果てるのでした。

それがモデルAと一致していたなんて夢にも思わずに。



前回のあらすじ

エレメンタルなんとかを無事に起動させ、ようやく当初の目的である油田にたどり着くことができたアッシュとグレイのロックマンモデルAご一行。

しかし主人公に試練はつきもの、この地に不時着していた違法ハンターの飛空艇とそこに取り残されたハンターたちはとんでもない奴に襲われているとのこと。

困っている人は誰であっても放っておけないアッシュと、ハンターたちにはお世話になったからたとえ違法ハンターでも見捨てられない心優しいグレイは、彼らを救うため、そして飛空艇の部品を手に入れレギオンズへ行くために油田の奥地を爆速で進むのでした。



生き残っていた違法ハンターたちを全員救出する事に成功したアッシュとグレイ。

飛空艇内のイレギュラーは全て排除し、室内を機械の部品だらけにしてしまいましたが命には代えられず、操縦室前に集まったハンターたちは深々と頭を下げるのでした。

「ありがとうございますありがとうございます!この恩は一生忘れません!むしろ孫の代まで語り継いでいきたいぐらいです!」

全員がこれと似たようなお礼を口にするものですからアッシュは鼻高々となるどころかちょっと照れ臭そうに頬をかいて

「そんなにはしゃがなくってもいいわよ〜困っている人を助けるのは強者の義務なんだし、語り継ぐならアタシが絶世の美女ハンターだってこともちゃんと付け足しなさいよ」

『はい喜んで!』

一斉に返事をする彼らを見て、宗教ってこういう風にできていくんだな・・・と感心したモデルAなのでした。

「でもまだリーダーと副リーダーが指令室の奥に閉じこもったままなんじゃあ・・・」

ふと、一人のハンターが独り言のように言うと他のハンターたちは顔を見合わせて

「そういえばそうだったな」

「自分が生きるか死ぬかでいっぱいいっぱいになってたからすっかり忘れてた」

「まあ別にいいけどな、リーダーだし」

「次のリーダーはアミダで決めるのナシな、ハズれたら大変だもん」

酷い言われようです。人望の薄さが伺えます。

「まだ2人残ってたの?」

「はい、リーダーと副リーダーがとんでもない奴に追われて指令室の地下に引きこもって・・・“この強化シールドがあれば安心だぜ!”とか訳の分からない事を言って」

人望はかなり薄そうですがどうやら彼らよりもピンチなようです。例のとんでもない奴というのが謎ですが、このまま黙って見過ごすなんてアッシュたちにはできません。

「なら話は早いわ!手遅れになる前に助けに行かなきゃね!人助けに人望の薄さなんて関係ないんだし!」

「うん!ところでジンボウって何?」

「アタシみたいな美しくて強くて頼りにある人間の事を人望があるって言うのよ!覚えておきなさい!」

それはつまりウチのリーダーは美しくなくて弱くて頼りにならないって事なんですかね。

とはツッコまず勢いよく駆けて行き、指令室の扉をくぐっていく2人の背中を黙って見守るハンターたちなのでした。

「とりあえず・・・部屋の片づけしようぜ」

「そう・・・だな。誰かイレギュラーが入ってこないか見張りしててくれー」

「おーう」
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