過去拍手置き場
□6話 極寒の戦い
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ハンターキャンプの地下っぽいような場所にある扉の向こうには、氷の世界が広がっていました。
何故彼らが真冬にこんな見るだけで寒くなるような場所にいるかというと、前回の冒頭を参照にしてください。油田あたりの
「雪だ!」
「氷だ!」
『極寒の流水だ!』
『寒い!』
のっけからこのテンションですが最後までお付き合いください。
アウターというのもあってすでにロックマンモデルAに変身しているアッシュとグレイのコンビ。ロックマンとなりヒトとしての身体能力を超越した存在となっても寒いものは寒い。
「ちょっと!何これめちゃくちゃ寒いじゃない!ロックマンに暖房機能とか備わってないの!?」
ガチガチと歯を震わせながらアッシュはモデルAにクレームをぶつけます。ロックオンしている状態ではモデルAの姿形は無いため、何も無い場所に向かって叫ぶ羽目になってしまいます。傍から見れば電波です。
『ねーよ!?ロックマンはそんな生活感満載の能力備わってないから!』
「チッ、思ったより脆いわねロックマンって、トゲに刺さったりマグマに堕ちただけであっさり死ぬし」
『死ぬわ!普通死ぬわ!そんな目にあって死なない奴なんていないからな!どんなチートゲームだよそれ!』
「え?赤い帽子にオーバーオールのおじさんは・・・」
『やめろ!』
とても濃い上にギリギリな会話が繰り広げられていますが、頭がカラッポなグレイには何1つ理解できない難しい会話。首を傾げて1人怒鳴り散らすアッシュを傍観するしかできません。
「ほえ〜」
『君たちは真面目に油田を目指す気はあるのかね?』
通信が入りました。ちょっと胡散臭そうで怪しげな声に該当する人物は1人しかいません。三賢人の1人、マスターミハイルです。
「何よ?今アタシはモデルAと大事な話をしているんだから邪魔しないでくれる?」
『大事じゃねーよ!めちゃくちゃどうでもいいよ!』
常にゴーイングマイウェイなアッシュは相手が世界のトップであってもこの態度。ずさんな教育を受けてきたのか天性の性格なのかはここにいる者たちだけでは分かりません。
ちなみに、適合者ではない人はライブメタルの声を聞くことができないため、ミハイルはモデルAが何を言っているのかは把握できていないものとします。
『しっかしまあこんな真冬にとんでもない場所に足を踏み入れたもんじゃのう。とはいえ油田まで行くルートは限られておるから何とかここを突破するしかないのぉ・・・というか』
「何?どうしたの?」
突然言葉を濁すミハイルにグレイはキョトンとしています。アッシュといえば彼が話をしている間に氷に映った自分の顔を見てうっとり。ナルシストの典型的スタイルです。
『前回、新緑のタワーを攻略して油田に行くルートを確保したのではなかったのか?』
「えっとね、油田のゲートを見つけたのは委員だけど、えれめんたるげーとが開かないとかなんとかで進めなくなっちゃったから、別のルートから進めば行けるんじゃないかってアッシュが」
分かるようで分からない説明にミハイルは首を傾げるしかありませんが、とりあえず、新緑のタワーを攻略するだけでは油田に行けないという事は分かりました。
『まあよい。進めるのであれば何の問題もなかろう、頼んだぞロックマン』
「はーい」
アッシュも態度を改めませんが、頭がカラッポなグレイも同じです。三賢人相手に友達のような反応と態度。先日の通信でそれがよーく分かっているミハイルは何もツッコまず、そのまま通信を切りました。
「消えちゃった」
「あら?ミハイルの通信切れたの?あのオッサン何か言ってた?」
「進めば問題ないって」
「は?」
話の大部分を省略した説明では何も伝わりません。今度はアッシュが首を傾げる番でした。
「まあ、何はともあれ進めばいんでしょ?こんな寒くて氷まみれな所を」
グレいの言葉の真意は置いといて、アッシュは目の前に広がる氷を恨めしそうに眺めて言いました。
とはいっても氷が張っているのはほんの一部の足場に過ぎず、後は見るだけで寒気がしそうな冷たい青色の水が一面に張ってあります。
「おお〜お風呂の水の何倍あるんだろう」
こんなに大量の水は記憶を失って初めてなのでしょう。グレイは目を輝かせながら波打つ水に触り、その冷たさに小さな驚きを見せていました。
『そんなに水に入りたくなかったら氷の足場から足場を飛んでいけば進めなくはないだろ?』
「そうは言っても冷たい冷たい水の上を歩くなんて、寒がりのアタシにとっては拷問に近いわ」
『ワガママ言ってたらいつまで経ってもすすめないぞーレギオンズから報酬もらえないぞー』
「クッ・・・」
この会話で心底悔しそうな顔をするのも珍しいです。寒いのが嫌でも進まなければレギオンズから莫大な資産を頂く計画が台無しになってしまう・・・ここは腹をくくるしかないと思った矢先。
どぽん
何かが落ちる、音がした。