過去拍手置き場

□5話 愛が薔薇薔薇
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そんなこんなでタワーのてっぺんを目指す事になったアッシュ一行は。

「あ〜ダル〜イ」

「ずっと同じ場所だねぇ」

地上約10メートル程の箇所で飽きていました。

体力がありあまっているハンターと身体能力未知数の少年がこの程度でバテる事はないのでご心配なく、ただ飽きただけ。

『あのなぁ・・・飽きたとか言ってる場合じゃないだろ?てっぺんまで行かないといつまで経ってもタワーから出られないんだぞ?』

呆れたモデルAに諭されますがアッシュは頬を膨らませて。

「だってずーっと昇ってるだけなのよ!しかも出て来るのはイレギュラーばっかりでアタシを称える声明も拍手喝采もないのよ!」

『アウターにまで来て何を求めているんだお前!?』

序盤ですがこのパートナーが嫌になってきました。どうしてこんな奴がオイラで変身できるんだよ・・・。

「わ〜すご〜い壁から植物が生えてる〜」

言い争う少女と金属など別次元、純粋な心を忘れない少年は壁を見ながらそんな台詞。ただし帰って来るのは呆れた台詞。

「はあ?壁から生えたツタなんてここに来るまでで何度も見たでしょ?今更何を関心してるっていうのよ」

『記憶喪失だから電子頭脳の処理に不備があるんじゃね?』

アッシュが振り返った刹那、目に入ってきたのは壁から突き抜けてきた2本の緑色のツタ、他のツタに比べると若々しい色をしておりとても目立ちます。

ツタはお互い絡み合いながらグレイの方まで伸びて行き、彼の足元でぴたりと止まりました。

「・・・・・・」

アッシュ、愕然としつつもすぐに脳を切り替えて。

「これ。斬り落として売ったら高くつくかしら・・・」

今日初めて見せる真剣な趣で、ツタをまじまじと見つめるのでした。





深緑のタワー最上階。内部にて。

誰もいない静かな部屋にいるのは、1人の違法ハンターと球根の形をしたメカニロイドが1体という異様な組み合わせ。

違法ハンターの男はガスマスクを着けているため表情は分かりませんが、メカニロイドと対峙してから体は常に震え状態、加えて声まで震えて誰がどう見ても緊張状態だという事が分かります。

「ここまで来るとは違法ハンターにしてはなかなか魅力的な男ではないか」

メカニロイドが怪しげな声と口調で言えば、じわじわとハンターに迫ってきます。

「ひっひいっ!来るな!来ないでくれぇ!」

一歩ずつ後ずさりして逃げるハンターですが、たった今、背中と壁がくついってしまい退路が断たれてしまいました。

「このままモデルVの生贄にするか・・・今後のお楽しみタイムに参加するかそれとも私の“美・コレクション”の1つになるか選ぶがいい」

「待って!後者!後者2つは何だ!?そっちの方が内容によっては生贄より怖い気がする!」

死ぬよりも生き続ける事に恐怖する時もあるといいますが、このハンターの場合はまさにそれでこのメカニロイドの問いの選択で自分の人生は左右されてしまうのです。

「ちなみに“美・コレクション”になれば生きる辛さも死ぬ苦しみもなくなり、私に愛でられながら永遠を過ごす事ができるぞ!」

「後半の文面が怖い!」

これならここで殺される方が100倍マシ・・・と言いかけた刹那。

どごん。と轟音が響いたかと思うとメカニロイドたちと反対側の壁が崩れ、それと同時に弾丸のように飛び込んできた影が2つ。

「ひえっ!?」

「何だ?」

ハンターが悲鳴を上げ、メカニロイドが鬱陶しそうに振り向いた先にいたのは

「すごーい!アッシュの言った通り壁を蹴破り続けたら広い部屋に着いたー!」

純粋無垢な少年のような口調で話す、ディアバーンでした。

メカニロイド唖然。

「フフン。ステージを適当に進んだ先には必ずボスがいて、ボスっていうのは広い部屋でふんぞり返ってるもの。だったらステージの広い場所を探せば自然とボスの部屋にたどり着くアタシの天才的な推測は当たっていたみたいね」

ディアバーンの隣にいるのはポニーテールの女。嫌に自信満々な女。

「チッ」

「んん?アタシを否定する声が」

無駄に耳の良い彼女が辺りを見回している間にもメカニロイドは睨みつけながら。

「何かと思ったら女か、私は女には1ミリも興味はない。とっとと失せるがいい」

「アタシに興味がないなんて見る目がないわねぇ・・・絶世の美少女ハンターアッシュちゃんが目と鼻の先にいるっていうのに無粋な反応なんて有り得ないわ」

「有り得ないのはそのポジティブすぎる思考だ!」

ああイライラする!とメカニロイドが球根型の体から伸びた茨のムチを地面に叩きつけ、自分がいかに苛立っているかを見せ付けました。

それでもアッシュは怖気好きもせず、というかメカニロイドの相手すらせず。

「グレイ、とりあえずフォルスロイド戦っぽいからその動きにくそうな格好やめなさい」

と隣で立ち尽くしたままのディアバーンに声をかければ、彼は間の抜けた声で「わかった〜」と軽く返事をし、まばゆい光に包まれます。

ぴっかーん

「トランスオン解除〜」

光が消えた時、そこにはディアバーンではなく褐色の肌をした少年が立っていました。彼こそグレイ。
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