過去拍手置き場
□5話 愛が薔薇薔薇
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壊れた列車のパーツ確保のため、プロメテ襲撃時に墜落した違法ハンターの船からパーツを回収するという、ミッションという名の火事場泥棒を行うため、アッシュとグレイは油田を目指します。
油田はハンターキャンプから徒歩で何とか行ける距離ではありますが、道中にはイレギュラーが徘徊するアウター地区を通らなければなりません。
転送装置を使おうにも違法ハンターの船の墜落の衝撃か故障しているため利用できず、アッシュの「使えないわね!」という罵倒と蹴りが転送装置に喰らわされたのでした。いい迷惑。
やむおえず徒歩を選んだ2人はハンターキャンプからすぐ出た場所にある、深緑のタワーを進んでいました。
「いや〜深緑のタワーってだけはあるわね〜緑が覆い茂っていてフカミドリって感じだわ」
タワーに入ってすぐ目に飛び込んできたのは固いコンクリートの壁や床、天井を貫いて生えてきているツタ。1ヶ所や2ヵ所といった数ではなく、所構わず無数に生えてから別の場所に絡み付いています。
お陰でタワー内のほとんどが緑色、他の場所ではまず見られないような光景にアッシュは足を止め、ツタが絡み付いた壁に触れてみます。
『アッシュ、深緑のタワーってフカミドリって読むんじゃなくてシンリョクって読むんだぞ?分かってるか?』
「失礼ね!グレイみたいな子供じゃあるまいしそれぐらい分かってるわよ、ちょっと言い換えて表現してみただけ・・・」
刹那、壁から緑色のメカのアームが飛び出してアッシュの顔面を狙います。
「んぐえ!」
顔を襲った鈍い衝撃に思わずひっくり返ってしまうアッシュ。慌てたグレイが駆け寄ろうとしますが
『待て!今はそこのイレギュラーを倒すのが先だ!モタモタしてる間にアッシュがまた襲われたら大変だぞ!』
と、モデルAに言われて銃口をイレギュラーに向けます。アームの先からは花のような刃物が現れ、生えてきた場所をぐるぐる回っています。
「ていや!」
チャージバスターはイレギュラーを貫き、一瞬で鉄くずと化するのでした。
「もう!美少女の命ともいえる顔面を狙うなんて真の外道ね!」
文句たらたらのアッシュは常にグレイの前をキープして足を進め、グレイは目に映るモノ全てが新鮮で常に目を輝かせながら進んで行きます。
「確かに顔を狙ったら相手はひるんで攻撃のチャンスは生まれるけどさぁ・・・女の子相手にするんだったらこんな姑息な戦法はやめるべきよ、むしろ違法として取り締まるべきよねそうよ!今回はアタシがとびきり強くて頑丈だったからかすり傷で済んだけ」
「アッシュ!アッシュ!あれは何!?」
盛大に文句を漏らすアッシュの憂鬱など知らない純粋な少年は、タワーのホールに入った途端、ツタから生えている花型のイレギュラーを指して無邪気に叫んでいます。
「あー・・・それはイレギュラーよー電気の玉を飛ばしてくるから気を付け・・・」
『アラート!アラート!ガイブニイジョウハッセイ!ケイカイレベル3ヲハツドウ!ガイブヘノルートヲフウサスル!』
突如タワー内が赤色のランプが照らされ、けたたましいサイレン音とアナウンスが響き、2人を動揺させます。
「えっ何!?アタシがタワーを訪れた祝福の言葉でもくれるの!?」
「わー赤いなー」
訂正、動揺しませんでした。
そうしている間にもホールの先にあった道にはシャッターが閉じられ、来たドアにもロックがかかってしまいます。
「あれ?閉じ込められちゃったよ?」
「マジ!?この可愛らしい美少女ハンターアッシュちゃんをこんなタワーに閉じ込めて永遠に観賞していたいっていうの!?いくら監禁系のヤンデレでもこんな横暴は許され」
『君のその自惚れた台詞はいつ聞いても飽きないなぁ』
突然通信を入れてきたのはマスターアルバート。前回アッシュたちに依頼を申し出てきた世界のトップ、三賢人の1人です。いつも目を閉ざしてるおじさま。
「あら、マスターアルバート。聞いていたの?」
『嫌でも聞こえるからね。その様子なら心配するまでもなく大丈夫そうだ、よかった』
「閉じ込められちゃったけどどうしたらいいの?」
世界のトップ相手にも己のペースを崩さない2人ですがアルバート、前回の会話で慣れてしまったのか覚悟ができたのか、冷静な対応を続けます。
『そのタワーは付近の環境を調べるために作られた物でね、イレギュラー用にセキュリティが強化されているのだけど、何か異常がったみたいだ』
「タワーがアタシに美しさに惹かれてこんな強引な方法でアプローチしてきたて事ね!でも生憎束縛系は嫌いなのよ!」
こいつうっぜぇなぁ・・・とアルバートも読者も思った事でしょうが、今は言葉を飲み込んでください。
『君に惚れたかどうかはどうでもいいとして、タワーのてっぺんにセキュリティを管理するコンピューターがあるはずだ、そこまで行ってロックを解除するしかないだろう』
「検討を祈るよ」と言ってアルバートは通信を切りました。これ以上アッシュに喋らせておきたくなかったからに他なりませんが。
「切れちゃったね」
「しょうがないわよ。三賢人は忙しいからアタシたちの相手をしている暇は元々ないのよ」
という解釈をしたまま先へと進みます。