過去拍手置き場
□4話 お偉いさんとハンター
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ディアバーンが爆発した衝撃により列車内は一瞬で黒焦げになり、前回よりも多くの瓦礫が床に無造作に散らばりました。
『・・・・・・』
アッシュとグレイ、この悲惨な状況にただただ呆然とするだけ。モデルAノーコメント。
「・・・何で?今までじゃあどれだけボスが爆発しても自爆しても辺りは無傷だったのに・・・どうしてこんな事になってるの?意味が分からない」
「真っ黒だね、壁も床も天井も機械も真っ黒になっちゃったね」
呆然とする最中でもグレイはどこかのん気そうですが、アッシュはこの悲惨な状態を目の当たりにしてから「フォルスロイドを喰い止めなかったお前が悪い!」と責任を押し付けられて賠償金を請求されるんじゃないかと不安になっています。
不安のあまりブツブツと独り言を呟き出すアッシュの目の前に、四角い枠の中に球体が浮遊している緑色の謎の物体が浮遊しているのですが、彼女はそれどころではない。
「何これ?」
現実逃避中のアッシュよりも先に気づいたのはグレイです。何でもかんでも興味を持つお年頃の少年はゆっくりと手を伸ばし。
「あっ」
触れる寸前で物体は手を避け、グレイの胸に吸い込まれるように入ってしまいました。
「わっ、何なに?」
大した驚きも見せず、胸の辺りを触ったりさすったりしてみますが何もありません。普通の感触だけ。
あれは何だったんだろう?と首を傾げるグレイにモデルAの得意げな声が頭の中に響きます。
『へっへーん驚いたか?これがオイラの特殊能力、トランスオンだ』
「とらんすおん?」
『試しにこう叫んでみな“ディアバーンにトランスオン”!って』
「分かった!ディアバーンにトランスオン!」
ぴっかーん
まばゆい光がグレイを包み、その拍子に我に返ったアッシュがようやく現実に帰ってきました。
「えっへっ何!?アタシの美人さに引かれて誰かがスポットライト引っ張り出したワケじゃないわよね!?」
『違う』
モデルAが一蹴した時には光は消え、アッシュの隣にディアバーンが立っていました。グレイの姿はありません。
「はいええええええ!?」
『すっごい珍妙な悲鳴だな』
絶叫しつつもアッシュはバスターを構えるのを忘れません。さらに少し下がって間合いをとれば、グレイは!?グレイはどこ行ったの!?と叫びますが。
「うわーすごーい!ディアバーンになってる!」
目の前のディアバーンはまるで無邪気な少年のような口調で喋り出し、状況の異常を確信しました。
「・・・え?」
アッシュ、呆然。
『すごいだろ?これがトランスオンだ』
「とらんすおん?」
アッシュがグレイと同じ反応。現在で分かっている事は、目の前にいるディアバーンは無害そうだという事のみ。
ディアバーンの姿になったグレイも、イマイチ状況が把握できていないためモデルAの言葉を待ちます。
『トランスオンっていうのは今まで戦った敵に変身できる能力のことさ!ディアバーンみたいな強力な敵のデータを得ることでソイツの姿形だけじゃなくて、能力まで完全にコピーすることができる!』
『すごーい!』
アッシュ&グレイは感動のあまり頭の中(にいると思われている)モデルAに拍手喝采を送ります。グレイはディアバーンの姿を借りているため、ガシャガシャと金属がぶつかり合う音が聞こえていますが。
『ディアバーンがどんな技を使えるかは今度じっくり教えてやるから、今は元に戻っときな』
「はーい」
ぴっかーん
まばゆい光がグレイを包み、その光が消えると同時に彼はロックマンモデルAの姿に戻っていました。
「うわぁ〜すご〜い」
元に戻った事を実感するように、自分の両掌を握ったり開いたりする少年。とても感動している様子。
「さて、モデルAの特殊能力も分かった事だし・・・」
感動に浸るグレイを無視し、アッシュは一旦周囲を見渡し
「・・・電車、止まったのよね」
「あ、そういえばそうだったね。ディアバーンが爆発したせいかなぁ」
『これ以上は進めないな、とっととキャンプに戻ろうぜ』
「何言ってるのよ!怪我をした人たちの手当をするのが先でしょ!これだから人の感情を持たない金属の塊は!このゆとり!」
モデルAの身勝手な発言に怒声を上げたのはアッシュでした。自分大好き!アタシが一番!と常日頃から言っている彼女が人のためにここまで怒るとは思いませんでした。
ただし、現在実体がないモデルAに文句を言うのにどこを見ればいいのか分からず、天井にぽっかり空いた青空を見上げて叫んでいる姿はなんだかマヌケに見えてしまうのでした。
『お、おう・・・』