DFF小説
□宿命の再開〜次元の狭間から〜
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次元城にその男はいました。
真っ赤な頭巾を頭にかぶり、腰にはいくつかの武器を下げ、何とも奇抜なメイクをした男が、次元城の屋根の上に立っています。
彼はもう二時間もこうしている訳ですが、微動だにせず空を見上げ、想いをはせています。
「バッツ・・・」
あの男、宿敵と書いて「友」と呼ぶあの男を、彼はずっと探し続けていました。
偶然この世界に流れ着いた時、親切にしてくれた人がここで奴を見かけたと教えてくれた後、いてもたってもいられなくなった彼は二時間以上もここで待っています。
しかし、ずっと立ちっぱなしだというのにいつまでもその体制を維持している所からすると、かなりできる男なのでは・・・
「うう・・・そろそろ、足が痺れてきた・・・立ち続けるという行為が、ここまで過酷なものだったとは・・・」
前言撤回します。
「だが!ここで奴との長きに渡る決着をつけるため!ついでに感動の再会をするため!俺はあと三分ぐらいなら待てる!いや後一分かもしんない」
この場に彼しかいないため、オートアビリティ「常にツッコミ不足」が発動中です。ご了承ください。
一人きりで自身の想いを叫ぶ赤頭巾の男。そろそろ足も限界が近いので、座り込んで待とうかと決め、ふと下を覗いた時
「むむむむむ!?アレは・・・もしかしてもしなくとも!」
芝生が生えた緑色の土地を、茶色く短い髪の青年がスキップしながら進んでいる姿が赤頭巾の男の視界に収まりました。
「今日は機嫌がいいなー、思い切って“この木なんの木エクスデス”の替え歌第三弾作ってみようかなー」
「バァァァァァァァァァァッツ!見つけたぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「んあ?」
バッツと呼ばれた青年がキョトンとしながら見上げてみれば、赤頭巾の男が自分目がけて上から落ちてくるではありませんか。
いくら自由人な彼でもこの状況に危機感を感じないはずがありません。すぐさま振り返ると野球選手さながら地面に滑り込むようにして避けました。
「危なかったぁ〜、今のは何だ?プリッシュの新しい遊びってワケじゃなさそうだし」
うつ伏せの体制から芝生の上に座り込む彼は、瞬きしながら男が落ちてきた場所を眺めます。無視できない台詞があったような気がしますがスルーで
落下の衝撃は凄まじいものだったのでしょうか、落下地点からは砂煙が昇り青い空の色に混じろうとしています。
バッツはぼんやりとそれを眺めていると、砂煙は真っ二つに裂かれて消えてしまうと、赤頭巾の男が姿を現します。
手には、大層立派な剣を持って。
「ようやく見つけたぞ、我が宿命のライバルよ!ここで会ったが一千五百七十二万年!今日こそ決着をつけてやる!」
いつまでもマヌケ面を浮かべたままのバッツに剣の刃先を向けて絶叫する赤頭巾の男。よく見れば、彼の頭部には小さなたんこぶが乗っかっています。
しかしバッツ、言葉の意味は分かっているの、何度か瞬きをしてキョトンとすると
「ライバル?それって俺の事?
「とぼけても無駄だぞ!橋の上の戦い!船の上の決戦!そして城での死闘!全ての戦いのメモリーが俺の脳内に焼き付きやがてそれは、“決着”という二文字となり俺の中で疼き、暴れ回っている!その時を迎えろとばかり吠えている!」
「はあ」
「だから俺はそれだけを生きがいに、お化け・・・じゃなくてバケモノだらけの次元の狭間を行き交い、こうしてこの場所に流れ着いたところを親切な鎧の人に拾ってもらい、お前がここにいる情報を得て・・・」
「すいませーん、もしもーし」
「んあ?」
手を挙げて声をかけてくるバッツに、何とも間抜けな声を上げてしまった赤頭巾。次の台詞も忘れてキョトン。
バッツは「どっこいしょっと」などとオッサン臭い掛け声を出して立ち上がり、お尻についた汚れを掃います。
武器を向けられているとは思えない、余裕のある態度の上に冷静な口ぶりで言ってのけます。
「俺、アンタの事知らないんだけど」
「・・・はい?」
「てか初対面だし、人違いだと思うんだけど?」
赤頭巾の男は何も言いません。いえ、厳密に言えば何も言えなくなってしまっています。
武器をバッツに向けたまま、赤頭巾は一瞬にして雲のような白に変色。白目を向けたまま石膏のごとく固まってしまいました。
相当ショックを受けた様子ですが、この自由人は大して気にする様子も無く続けます。
「でも、戦いたいっていうなら相手してやってもいいぞ?丁度暇だったし」
ニッコリ微笑んで言えば赤頭巾は元の色を取り戻します。
ところが、どこか様子が変でした。