ディスガイア小説
□貴女と私の始まり
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「まさかこんな所に新人さんがいるなんて思ってなかったんだって、不可抗力不可抗力」
「・・・・・・」
結局ダイニング、さっきと同じソファに腰をかけているユイカは、天里に渡された氷水の入った袋を額に当てて応急処置を施していました。
ただし、めちゃくちゃ不機嫌そうな表情で。折角天界に戻ろうとしていたというのにこのリアスという女戦士のせいで計画が一瞬でおじゃんになったのですから当然です。
ヘラヘラ笑いながら言い訳を並べるリアスは無視。悪魔の言葉には耳を傾ける気にもなれません。
そしてテーブルの方ではアリナがリンリンに呆れた顔を向けていました。
「前から弟子ほしい弟子欲しいって言ってたけど何で天使なのよ、弓が得意な奴なら女戦士とか盗賊とか色々いたじゃない」
「まあまあいいじゃないですか、そんな細かい事を気にしなくても。それにあの方があまりにも無警戒に空を飛んでいたので・・・つい鳥を狩っていた頃のクセが出てしまって・・・」
「ついで済む問題か!」
鳥扱いされた事よりもそんな理由で弟子にされてしまった事の方がシャクに触ったユイカ、ソファーの後ろにいた天里に袋を投げつけて随分乱暴な返却をします。
「わっ冷たい!」
短い悲鳴が上がるのも気に留めず、ソファーから立ち上がると力任せに足音を立てながら、今度こそダイニングから外へと出てしまいました。
「あっ!待てよ天使!」
それに反応してリアスも立ち上がると急いで彼女の後を追います。並の悪魔なら放置するところでしょうが「変人」と言われているリアスは違いました。
「追いかけるワケぇ?」
文句を言いながらもアリナはユイカとリアスの後を追いかけるのでした。
ホルルト村外れにある村はずれの平原。大した魔物もおらず穏やかな風が吹き、絶好のピクニック日和です。
そんな平和真っ只中な平原を、物凄く不機嫌な趣でドスドス足音を立てながら突き進む天使が一人。ご存じユイカでした。
無言で歩く彼女の後ろからは
「おーい天使ーどこに行くつもりだよー」
興味本位なのか長屋からついてきたリアスが何度目かの言葉をかけて後を歩きます。一緒についてきたハズのアリナの姿は見られません、途中で力尽きたのでしょうか
運動オンチはさておき、何度も何度も「どこ行くんだー」としつこく聞かれてしまっては、金輪際悪魔に対して関わりを持たないと固く誓っていた彼女の意志なんて簡単に折れてしまうというモノで
「天界に帰るんだ!ウェルダイムが人間界とはいえ悪魔がはびこむ世界に長居などするか!」
振り返るどころか足も止めずに怒鳴って返してもリアスは一瞬たりとも怯まず軽い言葉を送ります。
「んな固い事言わないで少しは楽しんだらどうだー?天使としては滅多に触れ合えない悪魔と関わりあえる良い機会じゃん」
後頭部で腕を組んで軽口を叩くと、突然ユイカが立ち止まったのでそれに合わせて足を止めます。
小さく首を傾けて次の言葉を待っているとユイカは振り返ります。しかし彼女は鋭い視線を送り、この世の全てが憎くて仕方がないという、天使としてどーよ?と疑問視してしまうほどの凶悪な趣をしていました。
「この状況のどこをどう楽しめというんだ!貴様ら悪魔は毎日お気楽かつテキトーに生きているだろうが私たち天使はもっとデリケートに生きているんだ!それをもう少しわきまえろ!」
「・・・」
リアス、呆然。なんでそんなに怒ってんの?
それを尋ねる前にユイカは正面を向きなおすと足早に去ってしまいます。一刻も早く悪魔から離れたいのかすぐにその後ろ姿は見えなくなってしまいました。
「思ったより速いなー」
なんて声を上げて関心しながらその方向を眺めていると、後ろから聞きなれた声が耳に付きます。
「やっと追いついた・・・ちょっとアンタ、いつまでこんな不毛な追いかけっこしてるつもりよ」
呆れ顔で現れたのは体力が尽きて倒れていたのではないかと思われていたアリナでした。息切れ一つしていませんし汗もかいていません。
どのような手段でここまでこれたのか気になるところですが、リアスにとってはどうでも良い事なためそれには全く触れられず
「アイツをこっちに引き留めるまでに決まってんじゃん」
「どうして?アイツ天使よ?しかも悪魔に対して敵意むき出し、こっちと親しくなる気なんて微塵も感じられなかったじゃない」
肩をすくめて反論するアリナの意見、リアスは後頭部にあった腕を胸の前に持ってきて組み直し、しばらくずっと考え込みます。
さっきまで直感で動いていたのがバレバレですね。アリナの大きなため息が平原を突き抜ける風に乗って飛んで行った後、リアスはふと顔を上げて
「・・・それでもよ、今まで天使と会った事なかったし、こういう変わった奴とは仲良くしたい・・・とか思うじゃん。それにああいう種族なら仲良くなって損はない」
「アンタの仲良くなりたい相手を選ぶ基準っていうのがまるで分からないわ、それがなくても興味関心を抱く原理も分からないし・・・アンタって分からない事だらけね」
「別に理解してくれなくってもいいぞ。それにまあ、それを差し引いても俺はアイツに用事があるからな」
その「用事」とは何なのか、詳しい事は一切口に出さずリアスは歩みを再開します。もちろんユイカへ向かって
その後ろから少々キレ加減で「話を途中で終わらせんじゃないわよ!」と怒鳴りながらついてくるアリナの怒声を耳に入れながら