ディスガイア小説

□片想いの受難
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「時空ゲートを使えばすぐに着くから問題ない!だからもうついて来るな!帰れ!」

『断る!』

見事にハモらせた二人はこれ以降もオルソドに文句を言われ続けましたがしつこく追いかけ続け、絶対に離れようとはしませんでした。

面白そうだから





時空ゲートを潜り抜け、三人はゾンビ池に到着しました。

今日の魔界天気予報は全面的に快晴との予報でしたがここは常に空がドス黒い紫色に染まっており、植物はおろか木すら生えていません。

目だった場所と言えば所々にある池のみですが、水の色は緑だったり紫だったり、お世辞でも池とは言い難い色をした池です。

さらにはいたる所にゾンビが生息しており、そのせいか腐敗臭が酷く、時空ゲートから出て来るなりオルソドは顔を歪めます。

「酷い臭いだ・・・鼻が曲がりそうだ」

「そうか?俺は何とも思わないけど」

「私も」

さすが悪魔というべきかリアスとアリナは涼しい顔。後ろにはさっきのモスマンが待機しており飼い主であるアリナの指示を律儀に待っていました。

オルソドは振り返りもせず、悪魔が同行してる状況に苛立ちを感じつつ奥歯を噛みしめ

「悪魔にとって腐敗臭なんて嗅ぎ慣れたも当然だから気にしないのも当然か、死体と一緒に寝たりしてるんだろう?」

「お前は悪魔に対してどんな偏見持ってんだよ・・・そんなことするのは死体マニアだけだっつーの」

呆れ声をかけても返事は来ず舌打ちが耳に付くだけ、オルソドはそのまま歩き始めます。

リアスはやれやれとため息をつきつつ足元にある池を見れば、そこからひょっこり顔を出すゾンビを見て「おっ?」と声を上げ

「誰かと思ったら三丁目の山田さんじゃないか、久しぶりー」

「知り合い!?」

このやりとりにはさすがに振り返らずにはいられなかった衝撃があったと、後の彼は語っている。



あても無く歩き続け、池の奥地までやって来ました。どれだけ歩いてもほとんど同じ景色が続くので奥まで来た実感がありませんが

山田さんの衝撃以降オルソドはひたすら沈黙を続けており、アリナとリアスは飽きもせず彼の背中を追うばかり。黙っているだけの二人でもないため会話は続けています。今は海鮮丼を食べる時の醤油の量について談議している所です

ちなみに、アリナをオンブしていたモスマンは彼女の命令により入り口付近で待機しています。これ伏線でも何でもありません。

しばらくして醤油の量談議に終わりが見えかけた時、オルソドは口を開きます。

「そういえば、お前たちはどうして僕について来たんだい?今さら血眼になってお見舞いの品を探す僕を笑いにでもきたつもりか?」

やはり振り返りもせず疑問をぶつければ、醤油の量談議を続けていた二人はお互い顔を見合わせた後「別に?」と口をそろえて返し

「俺はただ何となく、面白そうだなーって思ったからついて来た」

「私は・・・まあ、恋愛小説を書いている身として少しでもネタの臭いがするモノに飛びついておいて損はないかなーって感じただけよ」

「欲求だだ漏れだな」

薄々そんな予感はしていましたが本当に予想通りになるとは、悪魔の単純さを改めて理解した彼は悪態をつきつつまた口を閉ざし、会話を終了させました。

「(まあ、悪魔なんて自分さえよければそれでいいような奴らばかりなんだし、変な期待を持てば痛い目見るだけか・・・天魅さんは別だけど)」

言うまでもありませんがこの天使、天魅だけは悪魔として見ていません。

「しっかし、こーんな何もかもが腐った場所に草なんて生えてんのか?雑草すらない場所だろココ」

「文献によるとゾンビ池に生える唯一の植物、通称活力草はどんな地面にも根を生やして、ほんのわずかな栄養分を得て成長するらしいわ。どんな環境でも生き抜く生命力が体を内側から強くする効力の元なんだそうよ」

丁寧に解説してくれたアリナの手にはいつの間にか分厚い本が収まっていました。タイトルは「植物図鑑超・禍々しき復刻版」魔王城の図書館からパクってきました。

事実を知らないリアスは「へー」とのん気なリアクション、オルソドは相変わらず振り向きもしません。

「俺はただ生えてるのか生えてないのか知りたかっただけでそんな細かい知識は求めてないぞ」

「いついかなる時でも情報は剣や魔法よりも強い武器となり得るのよ、情報一つで魔王を屈服させたなんて話も聞いたことあるし・・・アンタの少ないオツムに知識の一つや二つ収納したらどう?もっと強くなれるんじゃないの?」

ほくそ笑みながら挑発するような言い方です。しかし、リアスだってこれだけでマジギレするほど子供でもないため、苦い顔を浮かべて

「頭が良くなくても俺は強いし、それに勉強とか嫌いだから別にいい、てか俺だって一つや二つぐらい知識持ってるし」

「へぇ?例えば何よ?」

「えっとまずは酒とか」

「それより、情報があるなら薬草がどういった場所に生えるのか分かるんだろう?」

リアスに酒の事を語らせたら話が長くなるのはオルソドだって知っている常識、話を逸らすべく振り返った彼は二人とは違って緊張感のある雰囲気を醸し出しているのですが、どうも上から目線な言い方でした。

その態度にアリナは眉間にシワを寄せてあからさまイラついた態度をとるのですが、下手に反論するのも面倒だと判断したのか、しぶしぶ答えてやります

「何でも高所を好むみたいだからよく高い場所に生えてるらしいわ。けど」

「けど?」
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