過去拍手置き場
□第21話 真実と扉。ついでにモデルV
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ようやく静かになった所で、プレリーは一度わざとらしい咳払いをして話を続けます。
「話を続けるわね。実はあのデータの中にはそれ以外にも、ライブメタルの力を受け継いだ者へのメッセージも入っていたの。恐らく、アナタたちに宛てたものだわ」
「それってもしかして、プレリーのお姉さんが・・・?」
メッセージと聞いて、いや〜な予感が脳裏を過ったヴァンは一つの希望をかけてプレリーに尋ねました。
あんなハイテクなぬいぐるみを作ったとはいえ、初代司令官なのですからきっと真面目な人に決まっている。真面目な人なら、データだって真面目のはず・・・。
そんな願望をめぐらせていると、プレリーは首を横に振って
「ごめんなさい、それはちょっと分からないわ。作成者の名前は記入されてなかったから・・・」
「そっか・・・なら、仕方ないな」
一瞬、エールが鋭い目つきでこちらを睨んだような気がしましたが、目を合わせると2,30分動けなくなりそうな気がしたので確認はしません。
「じゃあ、再生するわね」
プレリーは踵を返し、椅子の前にあるキーボードに何かを入力すると、青色のモニターが表示され、文字が現れました。
『ライブメタル・レポート分類ナンバー555913―チカラをうけつぎし者へ―
私が作ったライブメタルを手にするであろう選ばれし者にこのメッセージを送ります』
「(あれ?思ってたより普通だなぁ)」
いや待て、初っ端は普通かと思いきや途中から何かが弾けてツッコミ所満載のとんでもないデータが来るかもしれない。ここは何が起こっても良いように身構えよう。
いつも以上に真剣な表情になるヴァンに、エールは少しだけ不思議に思います。
「(あんなに真剣な顔してる・・・アイツでもこういう時になったらあんな顔するのね・・・ちょっと感心)」
まさかツッコミ待機中とは夢にも思うまい。
『私はイレギュラーを生み出すライブメタル・・・モデルVに対抗するため、英雄たちのデータをこめたライブメタル・・・モデルXたちを作りました。
けれど、ライブメタルには未知の部分が多く、モデルXたちはモデルVのデータを元に作るざるをえなかったのです』
「え゛?」
この瞬間、エールが物凄く嫌そうな顔をしてモデルXを見下します。
『ちょっとエール?何でそんな顔してるの?何を考えてるの?』
答えは言葉ではなく行動で表します。エールはそのまま彼を掴む手に力を加え始めたのです。
『イタタタタ!待って!待ってよエール!僕たち本当に何も知らないから!初耳だからね!』
「もしかしたら突然変異を起こしてモデルVに変貌するかもしれないじゃない。おにぎりみたいな形になるかもしれないじゃない」
『ならないから!僕たちはモデルVのデータを元にして作られたってあったでしょ!データを元にしてだから!モデルVを直接使ったわけじゃないから!間接的に使っただけだから!』
「エールー、どうどうどう」
ヴァンがなだめてくれたお陰で、ようやくエールはモデルXを苛めるのをやめました。
『つまり、モデルXたちの真の力を引き出せる者はモデルVの真の力を引き出せるという事・・・。あなたは世界を支配することも、世界をおもる事も・・・あっ、間違えた。守る事もできるのです。
どうか、その力で人々を、世界を、良き方向へ導いてください。それが私の願いです・・・』
全てのメッセージが流れると表示されていたモニターが消え、真顔のプレリーは二人を見据えて言います。
「データはここで終わり。・・・あまり言いたくないけどアナタたち二人は、モデルXの力を引き出すのと同時に、モデルVを使う事も可能なの」
「・・・・・・」
突然突きつけられた真実に、エールは言葉を失い下を向いてしまいます。
ヴァンも同じく、自分たちもセルパンのようにモデルVを使いこなせるという真実に戸惑いを覚えながら、激しく動揺しています。
「(えっ・・・?何?終わり?身構えてたのに何事もなく終わっちゃった?)」
話の本筋とは、全く関係のない部分で。
ちょっと空気読んで「あ、間違えた」って入れてくれてたけどさ、その程度のボケが来たところで俺動じないよ?今までのデータでボケ倒したせいでネタ切れちゃった?もしかして俺がただ単に期待を大きく抱きすぎちゃったせい?ハードル上げすぎた?
とか思っている彼ですが、彼の思考が分からなければただ難しい顔をして下を向いているだけなので、彼もまた、現実を真剣に受け止めていると周りは思ってしまう訳で
「(アイツ真剣な顔してる。アタシはまだ信じられないっていうのにあっさり受け入れちゃって・・・メンタル丈夫なのね)」
再び炸裂するエールの勘違い。ヴァンはきっと、ある意味丈夫と言えましょう。