日本一小説

□旅の始めはスパイシー
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三十分後、謎の巨大魚に引っ張られ、池に落ちてしまったダネットは、リベアに救出されました。

ダネットを担ぎ、リベアは池の辺から陸上へと上がってきました。

「はは・・・は・・・やっと奪還したよ・・・」

苦笑いを浮かべながら陸へと上がる彼女の様子からして、どうやら水中では相当大変なことがあったようです。

「まさか釣りエサの骨が魚の背びれに引っかかってたとはな」

感心しているのか、していないのか微妙な様子のギグが、静かに言いました。

ちなみにダネットは水中で酸欠を起こしたらしく、すっかり気を失っています。呼びかけてもうんともすんとも言いませんが、とりあえず生きています。

リベアはダネットを仰向けにして陸上へと降ろし、その場に座り込んで青空を見上げて呟きます。

「今のは・・・食後の運動にしてはハードだったよね・・・」

「これのどこが食後の運動だ」

ギグが答えると、リベアは青空をゆっくりと流れる白い雲を見ながら

「ギグー」

「んだよ」

「お腹すいた」

早すぎる腹減り宣言。これを聞いている彼に、もし肉体があったのなら、地面に想いっきりずっこけていたかもしれません。

「早っ!まだファンクスの肉食ってから一時間弱しか経ってねーぞ」

「そんなこと言ったって、お腹すいたものはお腹すいたんだもん」

さっきファンクス二頭分の肉食ったくせに・・・と、ギグは内心呆れました。

その時。近くの草むらからガサガサと音が

「ん?」「お?」

音がした方向に視線を向けると、見えてきたのは草むらから出て繰る出てくるファンクス達。その数、十頭以上。

『・・・・・・』

この時、何となくですが二人は理解しました。

このファンクス達は、さっき自分達が食したあの三頭のファンクスの仲間ということと、その仲間の敵討ちをしに、ここまでやってきたということ・・・

「これぞ仲間想いってやつだね」

「キレイ事言ってる場合か」

なんてコントしている内に、あっと言う間にファンクス達に囲まれ、リベアは呆然として言い出します。

「どうしよう・・・スタミナほとんど使い切っちゃったのに・・・このままだと私、ただではすまないかも・・・」

「じゃあ、俺の力使うか?」

「やだ」

ギグの誘いをあっさり断り、リベアは立ち上がります。

「仕方がない・・・ダネットは当分起きないだろうし、私一人で相手するしかないか・・・」

彼女はそう言って鞘から剣を抜き、ファンクス達にその刃を向けました。

「召喚使えばいいじゃねえか」

「それも思ったけど、GPで買い物しまくったせいで全然なくってね」

序盤でよくあることですね。買い物は計画的に

彼女の答えに、ギグは嫌気が差したのか

「じゃあもう勝手にするんだな。ちなみに、俺様の力を使いたくなった時はいつでも言うんだぞ」

「大丈夫だよ。ギグの手を借りるまでもないから」

微笑んで彼女はそう言うと、駆け出しました。

一対複数。無謀という以外何物でもない戦いが始まります・・・





それから、数時間経った頃、ダネットは目を覚ましました。

「うーん・・・あれ?ここは・・・」

ゆっくりと起き上がった彼女が見た光景、それはすぐ隣で倒れている体力と気力を全て使い果たしたりベア、それから周囲に転がっているファンクス達の成れの果てでした。

「はて?このファンクスは一体どこから来たのでしょう、しかも皆息絶えてますし・・・」

うーむと考えた挙句、手を叩いた彼女が出した答えは

「きっとお腹がすいて倒れているのですね!だから皆池の魚を求めてやってきたというわけですね!」

どうしてそうなる。

「これは好都合です。早速生け捕りにして食料にしてしまいましょう」

「・・・・・・」

「ほら、お前はいつまで寝ているつもりですか。早く起きてファンクスをさばくのを手伝ってください」

まさかリベアがここに倒れている全てのファンクスを倒したとは思ってもいないダネットは、リベアがその場で寝ているだけだと思っています。

どいつから生け捕りにしようかと迷うダネットを、リベアは生まれて初めて殴りたいと言う衝動に駆け巡られましたが、実行に移す気力は全くありませんでした。

「おお!コイツなんてよく太っていて美味しそうですよ!」

その翌日、ようやくフィーヌがいる荒野にたどり着いたリベア達が、コーホートと出会うわけですが、それはまた別の話だったりします。


END
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