日本一小説

□旅の始めはスパイシー
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十分後。剣の錆になったファンクス達は、リベア達にさばかれてお肉屋さんで売っているようなお肉にされ、火に焼かれました。

「うーん、味はイマイチですがこの際贅沢は言っていられませんね」

肉にかぶりつきながら、ダネットは満足そうに言いました。

「三頭分のお肉もありますし、これで当分食料には困りませんね。自然の恵みに感謝です」

「もぐもぐ」

リベアは一心不乱に、下品にならない程度に肉に食らい付いていました。周囲の音も声も、彼女の耳にも入っていないようです。

「お前相当お腹がすいていたのですね、目が血に飢えたファンクスみたいですよ」

「もぐもぐ」

まだ食べています。

「さて、お腹も一杯になったことですし、そろそろ行きましょうか」

「もぐもぐ」

「・・・お前、聞いているのですか?」

ダネットが尋ねた瞬間、彼女はあることに気づきます。

「あれ?ここに置いてあった、非常食用の残り一頭分のファンクスの肉はどこですか?」

「食べた」

リベア即答して、再び肉に食らい付きました。

「・・・・・・え?」

ダネット呆然。そして、すぐにギグの呆れている声が飛びます。

「コイツ、ファンクス二頭分の肉をあっと言う間に平らげてたぞ」

「もぐもぐ・・・」

まだまだ食べています。

「おいバカセプー、相棒ってこんなによく食う女なのか?」

彼の質問に、ダネットは首をかしげて答えます。

「おかしいですねぇ・・・ついこの間までは少食だったんですが・・・」

「・・・・・・」

じゃあ何故突然?とギグが疑問に思っている間に

「あー美味しかった。ごちそうさまー」

キレイに肉を平らげたリベアが、両手を合わせて丁寧に食後の挨拶をしました。

その時、ダネットが呆然としている様子に気づき

「ん?ダネットどうかしたの?」

キョトンとした表情を浮かべて尋ねました。





「お前が非常食全部食べるから、また食料探しをしなければいけなくなってしまったじゃないですか」

「ゴメン・・・」

現時刻は太陽の場所からして午後0時頃。リベアとダネットは食料を確保するため、お手製の釣竿を製作し、池で魚を釣ろうと釣りを試みましたが

「全然連れませんね・・・」

「エサがさっきのファンクスの骨だったのがいけなかったのかな・・・」

思いのほか、現在当たりはゼロ。小魚すら連れない状況でした。

「エサが悪いから魚が釣れないんじゃねえよ・・・その手製の釣竿が悪いんだ」

冷静そうで、実は内なる怒りを隠しているようなギグの声が聞こえてくると、二人は何故?と言いたそうな顔を浮かべます。

まあ彼が絶叫するのも無理ありません。なんせ二人が作ったお手製の釣竿は、ザリガニ釣りの時によく使われるような、小枝に紐をくくりつけただけの粗末な作りの釣竿なのですから

「んー?私はよくできた方だと思うけどなぁ」

「私も同感です。やはり紐のくくりつけ方が間違っていたのでしょうか」

手製釣竿をまじまじと見ながら、二人は疑問を浮かべます。

「間違ってんのはテメーらの頭だよ!!」

『え?』

何の疑いも無く、小枝に紐をくくりつけただけの釣竿を、釣竿として扱ってきた二人は、何故ギグに怒られるのか全く理解できていませんでした。

その時です。突然ダネットの釣竿が物凄い勢いで引っ張られました。

「おおっ!?」

「ダネット!?」

彼女はそのまま成す術も無く、池の中に落ちてしまいました。

「ダネット―――!」

「おいおい、何で魚一匹に引っ張られただけで池に落ちるんだよ」

絶叫するリベアとは裏腹に、ギグは完全に呆れていました。

それと同時に彼らは見てしまったのです。

池の中に、魚の形をした大きな黒い影が映っているのを・・・

「・・・相棒」

「・・・食べ応えありそうだね」

そっちかよ。
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