ディスガイア小説
□悪魔的運動会
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五分後、タローは「ご自由にお取りください」と書かれた小さなダンボール箱の中に体操座りをしてインしていました。
「・・・・・・姫様?」
「うむ、我ながらよい出来じゃ」
腕を組み、段ボール箱の中にインしているタローを見ながら、ロザリーは満足そうに言いました。
「余は隠れておる。タローは絶対に動いてはいかんぞ?よいな」
「はい!」
「よい返事じゃ、流石は余の家来じゃな」
ロザリーはそう言い残し、近くの茂みに隠れました。
「・・・・・・」
ダンボールにインしているタローは、どうしてこんなことこをするのかはよく分かりませんでしたが、とりあえず今は自分の御主人様の為に、命令に従い、ダンボールの中でじっとしておくことにしました。
およそ三分後、ダンボールに一人の馬鹿が近づいてきました。
「ご自由にお取りください?わーい♪」
それはやっぱりヤイナでした。実は彼女、完全悪魔化したタローとハナコを自分のペットにするという野望があり、それをこの前アデルの前でうっかり喋ったら顔面ボコ殴りにされたそうです。
そんな馬鹿は嬉しそうにタローがインしているダンボールに近づきます。しかし
ぱんぱんぱん
近くに隠れてたロザリーの銃に撃たれ、彼女はその場にぱたりと倒れました。意外とあっさりやられました。
「やっぱり馬鹿じゃの」
顔面ボコ殴りにされたいた場面に最初から最後まで遭遇していたロザリーは、倒れている馬鹿を見下してそう吐き捨てました。
「試合終了ー!!白組の姫さんがヤイナを籠に入れたぞー!でも実際入れたのは姫さんに頼まれた雪丸だぞー!」
メガホン片手のラウトが叫ぶと
『何だと―――――!!』
アデルとリアスの怒りの声が同時に発せられました。そしてロザリーの銃のダメージから回復しつつあったヤイナをボコボコにしましたが、誰も助けようとは思いませんでした。そして実際ボコボコにしたのはリアスとリンリンでした。
「第二回戦は“村一周レース”!各組代表者二名が次々と襲い掛かる相手を蹴散らし、生きてゴールした組の勝ちだ!」
「また嫌なのが出てきたな・・・」
楽しそうに言うラウトとは裏腹に、アデルはとても嫌そうでした。
五分後、スタートラインには赤組のリアスとアデル、そして白組のサラと天里が並んでいました。
「お、白組はサラと天里か」
「はい、リアスさん。よろしくお願いします」
さらりと言うリアスにぺこりとお辞儀する天里。さらに
「お互いがんばろうね!」
正々堂々戦おう!という意味が取れる言葉を発するサラ。
それを見ていたアデルは考えます。
「(今思えば・・・白組って毒の少ない奴ばっかだな・・・一部除くけど)」
一部ってロザリーのことですね。
さて、各組メンツがそろったところで、台上ラウトはクラッカーを上に向け、紐をつかんで
「アデルさんの家を中央に村を一周南から逆時計回りで走ってもらうぞ!でも、さっきもいったが道中には色々と邪魔をしてくる奴らがいるから注意しろよ!」
大きくそう叫ぶと紐を引きました。
ぽん
再び音と共に色とりどりの紙がクラッカーから出てくると、四人は一斉に走り出しました。もう見えなくなりました。
第一コーナー。村の東。
「言っておくがお前には負けないからな!」
「はい、私もリアスさんには負けませんよ」
リアスに敵意を向けられる天里ですが、彼はにこやかにそれを返しました。しかもその彼の返事がリアスにとって余裕の言葉にしか聞こえませんでしたが、いちいち怒る程彼女は子供ではありません。
そんな二人の後ろを走っているアデルは思います。
「(リアスの奴、もしかしてまだ負けたこと根に持ってんのか・・・?)」
誰に負けたかって?天里にですよ。何って?戦いにですよ。
世界最強を目指す彼女にとってはかな―――りくやしかったんでしょうね。それ以来天里のことを軽くライバル視してます。まあその後ちゃんと勝ちましたが。
ライバル視されている天里も負けたのが悔しかったんでしょうね、彼もリアスのことライバル視してるようです。
「(いいなぁ・・・あんな絵に描いたようないいライバル関係・・・。俺には“俺がお前のライバルだ!”ってつっかかってくる馬鹿しかいないし・・・・・・ん?そういえばサラはどこに消えた?)」
いつの間にかサラが自分の視界から消えていたので、アデルは周囲を見回して彼女を探します。サラは自分の前にも、後ろにも、横にも、上空にもいません。