□月影の詩
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――今宵の月は

水中にたゆたったような目映さだ…


強き光が降るでもなく

淡く雲に霞むでもなく



ただただ


優しい…






『月影ノ詩』







「敦盛さんも一緒にどうですか?」



「え…?」



易々と私の中に踏み込んできた少女…



「お月見です。最近月が綺麗でしょ?暦のことはよくわからないけど…秋なんだなぁって感じるんですよ」


そういって微笑んだ彼女を


美しいと思った―…


私が穢れた存在だからかもしれないが

私には眩しい程に感じられる

神子はとても綺麗だ


「―…!!」


そんなことを考えていたせいか神子が驚いた顔をしているのになかなか気がつかなかった。

「敦盛さんの笑った顔…初めて見ました

男の人に使うのは失礼かもしれませんけど―…とても綺麗…なんですね」

照れながら囁いた彼女の言葉に

「…!」


ようやく微笑んでいる自分に気がついた。無意識のうちに笑んでしまう…

それが神子の…彼女の力




―綺麗なのは神子だ。


あなたはそれを知らない。

おごることのない神聖さ、

惜しむことのない優しさ、

降り注ぐ柔らかな微笑み―…



「神子…貴女の方がずっと綺麗だ」


「え?」


「穢れた私を綺麗だと言ってくれる神子の心が…月に照らし出される神子の姿が…


…神子

私は…幸せだった」


「あ…敦盛さんっ////」


「この世で最も美しいものを見ることができた」


私はその為に…怨霊に身をやつしてまでこの世にとどまったのかもしれない

【神子に会うために】

「敦盛さんっ最期みたいなこと言わないでください!!
月はこんなに綺麗で…敦盛さんは笑っていて…時はこんなに暖かなのに」

だから不安なんです

貴方が消えてしまいそうで…
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