□蝶戯花
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それはもうずっと昔から……








大輪を思わせる花の香がしていた―…







この額に…


人には見えぬ紅珊瑚のような石を



感じるようになってから――…





〜蝶戯花〜




「京の地ねぇ…悪くはないんだけど…」


俺はいつものように六波羅から京の様子を伺っていた。


「悪くはないんだけど
気に入りませんか?ヒノエ」


ヒノエの登っていた木の枝をかき分け伯父の弁慶が顔を覗かせる。



「ヒュー…何?伯父さんも偵察?(微笑)」

「違いますよ。それより…何かあったんですか?」

「いや…ちょっと…ね。」

いつものように笑ってみせる。

どうせ気のせいだ。

熊野の頭である俺が
【ここんとこ毎晩同じ夢を見るから気になる】だなんて口が裂けても言えないね。


その夢はここ一週間続いていて

不思議な程鮮明。

そして俺は必ず大輪の花(女人)に出会う。
天より舞い降りたその天女があんまり
神々しくて
懐かしくて…
愛しくて……………



目が覚めると必ず

俺の目は涙に頬が濡れている―…




「珍しいですね…。熊野好きな貴方が京に赴くだなんて」


「弁慶(伯父さん)こそ珍しいんじゃない?にぎやいだ場所は嫌いじゃなかったっけ?」

「ふふ…神子殿のお供ならば仕方ありませんよ。」

「龍神の神子か…」

「ヒノエ……貴方も八葉の一人なんですよ?神子に会うだけでもしたらどうです?」

「(微笑)」

「………(溜息)」



龍神の神子には会えない。熊野はどうあっても中立にいなきゃならない。平氏だか源氏だか関係ないし…何より……負け戦をするつもりはないしね。

「では私はそろそろ行きますね。
…でもいつかは会うことになるんです。そのことを忘れてはいけませんよ?

八葉と神子は否応無しに引き寄せられるんですから」



「ふぅん…
だったら逢ってみるのも悪くないね。
龍神の神子といっても人間の女―…
興味がないわけじゃないからね」


軽い逢瀬
軽い仲間

命をかけて国をかけて戦う役目は後7人もいるんだ。


逢ってみるのも悪くないね――…





「やだ…っ!!やめてったら!!!!」

「いいじゃねぇか」

「………
また奴らか…懲りないね。」

いつもの悪連中を見つけ急いで女の助けに向かう



「女性は優しく扱うものだろ?」





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