++ Akatsuki ++

□揺れる紅い雲…
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~



「こいつ…死んでるのか?」


とある小さな国の国境付近。深夜、二人ペアで国境の警備をしていた者が俯せに倒れている不審者を覗き込んだ。


「……いや、脈も呼吸もある。しかし…」


不審者の状態を確かめていた一人は言い淀むとさっとその者の風貌を確かめた。


「黒地に紅い雲模様の外套…噂の"暁"の者か?」

「だとして、何故こんな所で倒れて…」

『別に倒れてる訳じゃない…』


突如聞こえた第三者の声に警備の者は素早く身構えた。
地に伏していた体を緩慢な動きで起こした不審者はゆっくりと辺りに視線を巡らせてから二人に焦点を合わせた。血のような紅い瞳に二人の姿が映る。


『ただ疲れたから寝てただけだ』

「ね、寝てただけだと…っ!ふざけた奴だ!!」


淡々とした返答に警備の者は刀を手にし突き付けた。
不審者は驚きもせず冷めた目でそれを一瞥しただけで動きはしない。


「…お前は"暁"の者だな?」

『そうだ』


月明かりに照らされた容貌は紅い瞳、白いふわふわな癖毛に少し幼さを残した顔立ち。歳は十代後半といった所だが、質問に答える表情には変化が全くみられない。


『所で…あなた達は俺の敵?』

「敵か?だと…!!よくもぬけぬけとッ!S級犯罪者の集う組織・暁は各国から指名手配されている!我々にとっての敵だという事は明らかだッ!!!」

『そう…』


憤る二人とは対象的に静かな声で答えると、同時に紅い瞳に危険な光が点る。
少年が見せた初めての表情の変化だった。


『…敵は……殺す』











血で真っ赤に染まった地に立っているのは一人の少年。彼の周りにはすでに肉塊と化した物だけである。
少年は血の海と同じ紅い瞳でぐるりと見回した後、おもむろに右手を虚空に差し出した。
それに答えるかのように地を紅く染めていた血がうごめき、少年の手に纏わり付く。
するすると這うように腕に纏わり付くと、血は少年の皮膚に吸い込まれるかのようにして消えた。


『…次は何処に行こう』


独り言を零し、去っていく少年の背中には紅い雲模様が揺れていた。










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