企画部屋

□写真
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もうすぐ日が落ちるそんな空模様。
ベランダへと向かい、洗濯物を中へと取り込む。
洋服たちを畳みながら、同時にクローゼットの中の夏服を少しずつ整理していく。

よく着るやつ。着ないやつ。
ゆうちゃんのお気に入りのやつ……
普通のやつ…

考えながら笑みがこぼれる。
そんなことをしていたら整理などできないなと感じた。
だって、彼女は私を褒めるから。
自慢ではないが、似合わないと言われた記憶がないなと苦笑い。

時計を見ると、そろそろゆうちゃんが帰ってくる頃だなという時間だった。
それまでにこの洋服たちを片付けようと探る。
すると、夏特有のものがひょっこりと顔を出した。

ピンポーン…

「あっ、帰ってきた」

パタパタと小走りで玄関へと向かい、彼女を迎え入れる。

「ただいま戻りました」

「おかえりっ」

バタンと扉を閉め、買い物袋を受け取る。
中には先程頼んだものが、ぎっしりと入っていた。

「ごめんね、頼んじゃってっ…」

「大丈夫ですよ。これもありましたし…」

「あっ!現像したの!?」

「はい…、皆川さんに頼まれて、教えてもらったお店まで行ってきました」

鞄からゆうちゃんが取り出したものはデジカメと現像してきた写真たち。
この夏の思い出のアルバムが、やっと届いたようだ。

「見たい見たいっ」

「ま、待ってくださいっ!わ、私も見たいですっ」

ゆうちゃんから写真を奪い、ソファーへと走る。
そんな私の後ろをパタパタと追い掛けてきた。

「いい?見るよ?」

「はい、どうぞっ」

ガサッと写真を取出し、一枚目が現れる。
それは今年の夏に四人でいった海の写真だった。
だが、そこに写っていたのは八人の女の子。

神田さんのぎこちない運転と、レンタカーを借り向かった海。
海に行きたいと言い出したのは私だったが、その提案にのり、皆川さんに相談したのはゆうちゃんだった。
「懐かしいねー。最近行ったのに〜」

「ですね、何だか随分前のような気がします」

「ふふっ、さっきね、実はタイムリーなの出てきたんだぁー」

「たいむりぃ……ですか?」

「ちょっと待ってて」と言うと、立ち上がりクローゼットの前へ。
中に半分ほど体を入れたままガサゴソと何かを取り出そうとしているようだ。

待っている間にもう一度写真に目を向けるゆうちゃん。
思い出しただけで頬が弛むのがわかる。
そして何より……

「じゃーんっ」

「へっ?……あっ!そ、それはっ」

「さっき見つけたんだぁ。ちゃんとしまってなかったからさ」

「………///」

「あっ、今想像したでしょ?」

「し、してないですっ!水着姿の野中さんなんかっ!!」

「思いっきりしてんじゃん」

「あぅ……っ」

海に行くためにと神田さんと内緒で買いに行った水着。
水着を見せた時、倒れそうだったゆうちゃんを思い出して笑いが溢れた。

「楽しかったよね…」

「…ですね」

聞こえてくるのは波の音と、ゆうちゃんの慌てた声。
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