過去の拍手SS
□拍手9(藍ゆう)
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降り続いた雨の中。
拳をぎゅっと握りしめたまま、目の前にいる彼女を見つめる。
綺麗な緑色の傘を両手で握り締めたまま、雨に打たれていく私を見つめていた。
傘で少し影になり隠れた表情は結局どっちなのだろうと……私を悩ませた。
〜片想い編(ラスト)〜
「ゆーちゃんっ」
隣から肩を突かれ、座って待っていた私は声の主のほうへ顔を向ける。
「野中…さん」
「……何か…あった?」
「へっ?」
「さっきからどっかフワフワしてるよ?」
フワフワ飛んでると言われるのはいつもの事。
たくさんの人に「また飛んでたでしょー」と言われるが、私自身そんなに意識的には飛んでいるつもりはない。
だが、彼女が言うときは決まって本当に飛んでいたときだけ。
「ゆうちゃんわかるよー」などと笑顔で言われる。
自分自身をよく知られているようで、恥ずかしくもあり嬉しい。
「で、何かあった?」
「い、いえっ!とくに何もないですよっ??」
「……ふーん、ならいいけどさっ」
少しだけ頬っぺたを膨らましながら隣に座る。
その様子に少し苦笑いになりながらも、今の感情を隠すことでいっぱいだった。
だって、今貴女に声をかけられるまで、貴女でいっぱいだったから……
いや、いつもか。
そんな真実を口に出して伝えられる訳もなく。
「寝不足気味なので…」と本当だが、嘘の理由をつけて、貴女にまた隠す。
「昨日寝れなかったの?」
「は、はい…///」
「……そっか///」
今日は二人きりのデートだ。
デートだと思っているのは私だけかもしれないが、野中さんに一緒に遊ぼうと誘われた。
嬉しくて、眠れなくて…
遠足前の子どものように興奮していた。
だが、その理由は野中さんとだからというのと、もう一つ理由があった。