過去の拍手SS
□拍手5(藍ゆう)
1ページ/10ページ
真っ暗な夜空に、少しだけ光を放つ小さな星。
雲一つない空なのに、光が少ないのは、きっとこの街が明るすぎるからだろう。
帰り道空を見上げ、流れ星でも来ないかななんて、恋する乙女のようなことを考えてみたり。
「恋する乙女……か」
神田さんに言われた言葉。頬に片手を付きながらにやけた顔で神田さんは言った。
この年になって乙女だなんて自分では思えない。
だけど、恋はしている。
それだけは認める。
だけど、その相手はとても近いようでとても遠い。
叶わない恋……だからかな。
もっと仲良くなれるようにと、振り向かせると決意した日から数週間。
メールを増やしたり、ご飯に誘ったり、自分でも驚くくらい積極的になったと思う。
優しい彼女はいつだって全力で返してくれる。
そのことに嬉しくなり、元気がでる。でも、ふとたまに思うんだ。
……期待はしちゃいけないと。
優しいから……ただそれだけのこと…
特別な存在でも、何でもないんだなんて思う自分も嫌で、真っ黒な空に飲み込まれて道が消えてしまいそうで。