書庫‐T

□こひねがふ
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「兄さん兄さん」

「どうした」


イタチの部屋の廊下に面した、
開け放たれた障子の陰から顔を覗かせたサスケに、
イタチは読んでいた忍術書から顔を上げた。


「これ、書いて、」

「?」

「いっしょに飾ろう?」


そう言ってイタチに差し出されたのは、
淡い藤色をした細長い、一枚の。


「ああ、短冊か」

「うん。今日七夕だから」


いいでしょう?サスケは少し不安そうな表情でイタチを伺う。
イタチはその様子に小さく苦笑しながら、手元の忍術書を閉じ、
机の上にも広げられていた忍術書を手早く片付け、
墨と二本の小筆を用意した。


「ほら、おいで。いっしょに書こう」

「うん!」


そう言われた途端サスケは、
イタチの方へ駆け寄って、隣に座り、
筆をとりかわいらしい字で早速願い事を書き始めた。


「何だ、願い事決まっていたのか」

「へへ。いっぱいあって迷ったけど、
でもやっぱりいちばんのだけ、書いた方がいいかと思って」

「そうか。それならオレもそうするとしようか」

「うん!」


おそろいだと嬉しそうに笑みを浮かべるサスケを微笑ましく思いながら、
イタチは自分も一番の願い事を、とさらさらと綺麗な書体で書き込んでいく。


すぐに願い事を書き終わったイタチはふと思い出したように、
まだ半分程度しか書き進んでいないサスケの方へ顔を向けた。


「そうだサスケ。願い事はひとに言ってはいけないんだよ」

「え。どうして…?」

「ひとに言ってしまうと、願い事が叶わないんだって」

「…そうなの?」

「だから、オレにも言ってはだめだよ?その代わり、オレも言わないから」


理由を聞き、わかったと頷いて、
止まっていた筆を真剣な面持で再び動かし始めたサスケを見つめながら、
イタチは口元に小さく苦笑をのぼらせた。



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