書庫‐U

□ぬくもり
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「……ん…」


静かに髪を梳かれる感触に、微睡みに漂っていた意識が引き上げられる。

枕に顔を半分沈めたまま薄く目を開けば、そこには昔と変わらない見慣れた黒髪と瞳。


いつからそうしていたのか、こちらを見つめる眼は寝起きのものではなく。



今は何時頃だろうかと視線を彷徨わせれば、気にするなと言うように視界を覆う掌。
その手に自分の手を重ね、弱く握る。


「まだ寝ていろ」


囁く声に無言で頷けば、目を覆っていた掌が頬まで降り、親指で目元を優しく撫でられる。


暫くそうしている内、再び微睡みの波に飲み込まれ意識は遠のいてゆく。


徐々に薄れてゆく意識の中で、そっと引き寄せられ口唇に触れる柔らかなぬくもり。


その暖かさに、ずっと空虚だった心がじわりと熱で満たされていく。










それを感じた瞬間、その熱と共に零れ落ちた想いが一筋、頬を伝う。







‥‥‥
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