そのゼロ、魔女と再び恋する

□Story 5
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ほとんどの人が寝静まったであろう ある日の深夜3時ーーーー

仕事柄、何徹続きを平気でする降谷にとって、学生の規則正しい生活リズムは未だ慣れなかった。
その為、今日もすっかり夜も深まっているにも関わらず目は冴え、暇を持て余した脳は暗記していた公安事件の捜査資料や報告書のページをひたすらめくっていた。


(・・・あとは先週逮捕した拳銃密輸の報告書・・・
1箇所訂正があったな。
よし、急ぎで処理するのはこれくらいか。)


ついにやる事すらなくなってしまった降谷は、談話室で本でも読もうかと思った。
ゆっくりベッドから下りるとチェストから適当にカーディガンを引っ張り出し、ナイトテーブルの上に置かれていた"上級魔法薬"というスネイプから借りた本を手に取って部屋を出た。

本を小脇に挟み、談話室へと続く階段を静かに上りながら、カーディガンに袖を通す。


(10月半ばだっていうのに、もう肌寒い・・・
季節が進むに連れてイギリスの日照時間が短くなっていくから、十分な日光に当たれない対策として、ビタミンをしっかり摂っておかないと体調を崩しやすくなるな。
今日の朝食では、凛の皿にビタミンが多く含まれてる食材を使ってる料理を多めに取るか・・・)


降谷が談話室に着くと、スリザリン寮の入口が開いていた。
今しがた誰かが出ていったのだろう、入口はすぐに閉じた。


(・・・ん?誰だ?
こんな夜更けに・・・
夜は寮から出てはいけないと校則でもあるのに・・・)


降谷はそこでハタと止まった。


「・・・凛?」


凛が魔力を解放する為に、夜な夜な飼っている梟のライと飛び回っている事を思い出した降谷は、迷わずスリザリン寮から出た。


普段のよく知るはずの廊下が真っ暗で、別世界のような不気味な雰囲気だった。
その廊下に、絵画の中の人物たちのイビキや寝言が響いている。
降谷は杖を取り出して、『ルーモス(光よ)』と小さな声で唱えた。
辺りを覆い隠した闇の空間に、杖先から淡く発せられる光の点が現れる。


(・・・確か、記憶での凛は天文台まで上って行ってたな。)


降谷は凛の記憶を頼りに、凛の姿を追い掛けた。




天文台に続く階段がある場所まで来ると、その辺りは月の光に照らされていてほんのりと明るかった。
天文台に続く階段をゆっくり、そして静かに上って行くと、人の話し声が聞こえてきた。


『いつも付き合ってくれてありがとね。
貴方と飛ぶ空はとても楽しいんだ。』


凛の声に反応するように聞こえてきた梟の鳴き声。
降谷が天文台に上ると、白に近い薄い金色の長い髪と真っ白の翼を携えた凛の背中を見付けた。
その腕には梟のライが乗っている。
ライが首をキョロキョロと動かしていると、降谷と目が合った。
ライは翼を大きく広げ、嘴をカチッカチッと鳴らしながら威嚇し出した。


(あれ・・・
俺、ライに威嚇されてる?)


未来でライに威嚇などされた事なかった降谷は何故だ?と疑問に思った。
突然一点を見つめて威嚇し出したライに、不思議に思った凛は首を傾げた。


『ライ?
急にどうしたの?』


凛も振り返って、ライの視線の先を見た。
そして凛のヴァイオレットの瞳と降谷のグレイッシュブルーの瞳が合った。
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