そのゼロ、魔女と再び恋する
□Story 3
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降谷が4年生に編入してから1週間が経った。
この日、降谷は夕食後に地下の魔法薬学の教室内の奥にある部屋に居た。
その部屋は、スラグホーンの自室だった。
『え?僕がですか?』
ソファに座る降谷の前でニコニコと微笑みながら、スラグホーンは頷いた。
『君の飛行術の素晴らしさはマダム・フーチから聞いているよ。
君と同学年のリンやグリフィンドールのポッター並の飛行能力を持っているとか・・・
私は是非とも君に我が寮のクィディッチの選手となって、1週間後に開催されるトーナメントに出て欲しい。』
クィディッチというものを、降谷は凛の記憶を通して少しなら知っていた。
しかしルールなどまったくわからないスポーツの為、返答に渋った。
凛と同じ選手となってフィールド内を飛ぶのは嬉しく思えたが、自分のせいで足を引っ張ってしまう事を危惧した降谷は断ろうかと思った。
『・・・すみません、僕はそのスポーツのルールをよく知らないので・・・』
スラグホーンは『何、そんな事か!』と目をパチクリとさせた。
そして本棚から"クィディッチ今昔"と書かれた分厚い本を手に取ると、降谷に差し出した。
『ルールならこの本に書かれている。
もちろんレイがやってくれるというのなら、トーナメントまでの間専属コーチもつける。』
『専属コーチ?』
『君と同学年のリンはどうだ?
実は君にはチェイサーの役割を担ってもらいたいんだ。
そしてリンは我がスリザリンの優秀なチェイサーの1人なんだよ。』
『やります。』
専属コーチの名前を聞いた降谷は即答した。
スラグホーンは大きな腹を揺らしながら、御満悦の表情で喜んだ。
『おおっそうか!
それなら良かった!』
降谷はスラグホーンの手からクィディッチ今昔と書かれた本を受け取った。
そして頭を下げて礼を述べると、ソファから立ち上がろうとした。
その降谷をスラグホーンは慌てて呼び止める。
『あぁ、あともう1つ!』
『なんでしょう?』
『レイは魔法薬学の知識や技術も素晴らしい。
もちろん他の科目の知識も実に優秀だ!』
『ありがとうございます。
魔法薬の調合は特に楽しいですから・・・』
スラグホーンはうんうんと頷いた。
『君のその優秀な腕前や溢れる才能を私はすごく気に入っている。
そこで、君に私のお気に入りが集う"スラグ・クラブ"に、是非とも参加して欲しい。』
『スラグ・クラブ?』
『私が主催するクラブだよ。
よくパーティを開くんだがね・・・
その目的は、優秀な学生をクラブに入れる事で君たちの才能をさらに開花させ、名声に近づける為なんだ。』
降谷は凛の記憶の中で見た、スラグホーンが開催するパーティを思い出した。
(・・・なるほど、あれがスラグ・クラブか・・・)
降谷は名声などにまったく興味なかったが、凛もそのクラブに居るならと、降谷自身も参加する事に即決めた。
そして愛想のいい微笑で承諾した。
『スラグホーン教授に、そのような素晴らしいクラブへのお誘いを頂けて嬉しい限りです。
是非とも僕もそのクラブに参加させて頂きたいです。』
『そうかそうか!
いやー私は実に鼻が高い!
次回のパーティの日程については、また招待状にて教えるよ。』
スラグホーンは満面の笑みを浮かべながら降谷に右手を差し出した。
降谷も右手を差し出して、スラグホーンと握手を交わした。