そのゼロ、魔女と再び恋する

□Story 2
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天井には魔法による幾千もの星が瞬く夜空が広がり、そこに無数のロウソクが浮かんでいる。
その大広間にはグリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフに分かれた4つの長机があり、ホグワーツの教員は正面前方の壇上の机に座っていた。
その壇上の隅に1つだけ置かれた椅子に、降谷は真新しい制服とローブを身にまとって座っていた。

ついに今日から新年度が始まる。

降谷は、記憶するスリザリンカラーである緑と銀の色の寮旗が浮かぶ長テーブルを見つめていた。
そこには寮と同じ紋やカラーをあしらった制服に身を包んだ生徒たちが集まっている。


(・・・凛はまだ来ていないのか・・・)


降谷は早く凛に逢いたくて、この日を今か今かと待ちわびていた。
しかし凛の姿を確認出来なかった降谷は、小さく溜め息をもらしながらも微笑んだ。


(幼い頃の凛に逢える。
君は俺を見てどんな反応をするのだろう・・・
日本で初めて君と出逢った時のように、俺に疑いの目を向けるだろうか・・・)


降谷は自然に上がっていた口角に気付き、慌てて口元を隠した。
その時、前方の席から聞こえるヒソヒソと声を潜めた話し声に気付いた。


『あそこに座っている人は誰かしら?
まるでモデルみたいね・・・』

『待って・・・
彼ってすごくイケメンだわ!』

『あそこに居るって事は転入生だよな・・・?』

『あんなカッコイイ人、今までに見た事がない・・・』

『何学年への転入生だ?』

(・・・俺の事・・・か?)


降谷は顔に出す事なく、聞こえないフリをしながら、しばらく自身を探る話し声を聞いていた。
すると、大広場に凛がスネイプと一緒に入って来たのに気が付いた。


(凛・・・)


凛はスネイプに話し掛けながらスリザリンの後ろの方の席に腰掛けている。
その姿を見て、やっと逢えた嬉しさとスネイプと仲良さげにしている姿に嫉妬する気持ちが入り交じって複雑になった。
その時、校長席を立ったダンブルドアの声が大広場に響いた。


『皆の者、久しぶりじゃな。
ごきげんよう。
休暇は楽しく過ごせたかの?
今日から皆の者は新学年じゃな。
勉学、スポーツ、娯楽と大いに励み、そして楽しみ・・・
この学年の年も各々元気よく過ごすように。
さて、まずは恒例の新入生の組み分け儀式から始めようかの。』


ダンブルドアの合図で新入生たちが大広間に入ってきた。
その後はマクゴナガルが新入生の名前を1人ずつ呼び、そして組み分け帽子によって次々と新入生の寮が組み分けされていった。

降谷はその光景を間近くで見ながら、凛の記憶で見た空間に自分も実在する現実に心が踊った。
新入生の最後の生徒の組み分けが終わると、ダンブルドアは再び校長席を立った。


『新入生の組み分けは無事に終えたようじゃな。
さて・・・実はあともう一人の生徒の組み分け儀式が残っておる。
すでに何人かの生徒は気になって仕方がなかったじゃろう。』


ダンブルドアは降谷が座っている椅子の近くまで歩み寄った。
そして降谷が椅子から立つと、ダンブルドアは降谷の肩に手を乗せて微笑んだ。


『彼の名前はレイ・フルヤじゃ。
4年生へ編入する。』


降谷は愛想のいい微笑で軽く会釈をした。
前方に座っていた女子生徒たちは、降谷の美貌に当てられたのか、赤面して勢いよく机に突っ伏している。


『さぁ、あちらの椅子へお行き・・・』


優しく微笑んでいるダンブルドアに背中を押され、降谷は1つだけポツンと置かれている椅子へと腰掛けた。
そしてマクゴナガルがそっと降谷の頭に組み分け帽子を被せた。
さらに4寮の女子生徒のほとんどが、是非とも我が寮に降谷が来る事を願うかのように、前のめりでその様子を凝視する。

次第に降谷の頭に被せられた帽子が動き出し、そして口を開いた。


『・・・ん?
おお!!
これはこれは珍しい!
また日本の子が来たようだね。』


降谷は大人しく組み分け帽子の話を聞いた。


『ふむ・・・
知性が素晴らしく高い・・・
そして非常に勇敢でもある・・・
だが、やはりここはーーーー
レイブン・・・『はぁ????』』


組み分け帽子が寮の名前を叫ぼうと一際大きな声を上げた。
その瞬間、レイブンクローの席に座る女子生徒たちの歓喜の声が大広間に響いた。


『・・・・・・』


しかし降谷のドスの効いた声によって、組み分け帽子の言葉は途中で止まっていた。
最後まで寮の名前を言わなかった組み分け帽子に、レイブンクローの女子生徒たちも次第に歓喜の声を止めた。


『・・・レイブンクローは嫌か?
ならばーーーーー
グリ・・・『ーーーチッ!赤は嫌いだ。』』


次はグリフィンドールの席に座る女子生徒たちの歓喜の声が大広間に響き渡った。
だがしかし、再び組み分け帽子が最後まで寮の名前を言わなかった事に疑問を抱いた女子生徒たちは黙った。

降谷の近くに立っていたマクゴナガルも、一体どうしたのだと言わんばかりに、組み分け帽子と降谷を交互に見ていた。


『グリフィンドールは論外です。
スリザリンだ。』

『・・・え?え?
スリザリンがいいのか?
しかし君は・・・スリザリンにはあまり合わないと思うが・・・』

『僕がスリザリンと言っているんです。
僕をスリザリンに選ばないと言うなら・・・灰になるまで燃やし尽くすぞ。』


組み分け帽子は降谷の凄まじい圧にゾッとしてすぐさま叫んだ。


『・・・・・スリザリィィィィン!!』


その瞬間、降谷の身にまとっていた制服とネクタイに緑色と銀色が入り、ローブの左胸元にはスリザリンの紋である大蛇が入った。
そしてスリザリンの席に座る女子生徒たちから歓喜の声が上がり、他の寮の女子生徒たちからは盛大なブーイングが起こった。

降谷に早くも目を付けたスリザリンの女子生徒たちは、自分の隣へ座るよう早速声を掛けた。
しかし降谷は女子生徒たちの誘いをすべて無視して、ツカツカと目的の場所へと早足で向かう。

降谷はスリザリンの席の後ろの方までやって来ると、目の前に並ぶ空っぽの皿に向かって『早く豪華な料理が出ないかなぁ。』とボヤいている凛の左隣に迷う事なく腰掛けた。
そして目尻を下げて柔らかく微笑んだ。


『初めまして。
俺の名前はレイ・フルヤだ。
よろしくな。』


降谷に無視されたスリザリンの女子生徒たちが、一斉に不満の声を荒らげた。
そして他の寮の女子生徒たちは、動揺の声を上げた。
さらに凛の右隣に座っていたスネイプは、眉間の皺をより深く刻むと降谷を睨みつけた。

しかし降谷は一切気にせずに、ニコニコとしながら凛を見つめていた。
すると降谷の右隣に座っていた凛が、ゆっくりと降谷に視線を移した。
凛のヘーゼルの瞳と降谷のグレイッシュブルーの瞳が、この世界で初めて交ざり合った。
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