そのゼロ、魔女と再び恋する

□Story 1
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それはある日の夜の出来事ーーーー
今夜は満月。
それも闇夜を燃え尽くすかのような赤くて大きな満月だった。

降谷の率いる公安警察は、とあるテロ組織を追っていた。
逃げ惑う組織の末端を次々と捕える事に成功したが、あともう少しという所でテロ組織の主犯格である男には逃げられてしまった。
しかし降谷は執念の結果、ついにテロ組織の主犯格の男を追い詰める事に成功した。


「そこまでだ!」


降谷は古びた倉庫に逃げ込んだテロ組織の主犯格の男に銃を構えながら、ジリジリと迫る。
すると、主犯格の男は肩で荒く息をしながら振り返り、降谷を見て乾いた笑みを浮かべた。

次の瞬間、主犯格の男は自身のコートの前を開けて降谷に見せ付けた。
その主犯格の男の身体には、なんと無数もの爆弾が巻き付けられていたのだ。
そして主犯格の男の右手には、爆弾の起爆スイッチであろうボタンが握りしめられていた。


「ふっ・・・はははははは!
馬鹿な公安め!
終わりだっ
俺も・・・お前もなぁ!!」

「なっっ!
しまっーーーーーー!?」


主犯格の男が叫んだと同時に起爆スイッチが押された。
降谷は咄嗟に主犯格の男から距離を取り、急いで倉庫内から離れようとした。
しかし時間的にそれは厳しく、一瞬にして目の前は強烈な光で覆われた。
降谷は来るであろう爆発の衝撃に備え、顔前で両腕をクロスにしながら奥歯を噛み締めた。


ドォォォォォォォォォン!!!


凄まじい爆音が倉庫内に響き渡る。
降谷は完全に逃げきれず、ネクタイに着けたネクタイピンにかけられている強い護りの魔法と降谷自身にかけられていた護りの魔法が発動した。
そして降谷は爆風によって、その場から吹き飛ばされてしまった。








「ーーーーーーーっ」


どれくらいの時間が経ったのだろうか。
意識を飛ばしていた降谷は、意識を取り戻して重い瞼を持ち上げた。


「いっ・・・
クソッどうなった・・・?」


爆風によって勢いよくふっ飛ばされ、うまく受け身を取る事が出来ずに身体中の至る所を打ち付けたのだろう。
意識を取り戻した途端に身体中を襲う痛みに、降谷は顔を顰めた。
襲いかかる痛みに耐えながら先程の状況を確認すべく、降谷は腕にグッと力を加えて上半身を起こした。
そして霞んでいた視界が鮮明になってきた瞬間、降谷は愕然とした。


「・・・は?」


そこには先程自分が居たはずの古びた倉庫は何処にもなかった。
それどころか、辺りは草木が生い茂り、目の前には広大な湖があった。
そして闇夜だったはずの空が、空気が澄んで青々とした空に変わっていた。


「どこだ・・・ここは?
まるで外国のような風景だが・・・
それに身体が・・・縮んでいるだと!?」


着ていたスーツの袖が明らか長くなり、指先が僅かに外に出ているくらいで、スラックスも裾が長くなっていた。
降谷は状況がまったく理解できず、ただ愕然と辺りと自分の身体を交互に見る事しか出来なかった。
その時、背後から1人の人物がゆっくりと近付いて来る気配に、降谷はいち早く気付いて勢いよく振り返った。


(・・・何者だ!?)

『おやおや、これは・・・
まことに珍しい人物が来たものじゃな。』


降谷が振り返った先に立っていたのは、降谷自身は一度も逢った事はないがよく知る人物だった。
柔らかなパープル調のグレーの衣装を身にまとい、白髪の長髪と髭を蓄えた老人ーーーー


「ダ・・・ダンブルドア?」


降谷が目を見張ってポツリと呟くと、ダンブルドアは小さく拍手した。


『おお!御明答じゃ。
儂の事は知っているようじゃな。』

(どういう事だ!?
ここは凛が居た世界だ!
だが、何故彼が生きている!?
凛の記憶を見た時には、すでに彼は・・・)


降谷は今居る場所が、凛の世界である事を瞬時に理解した。
しかし目の前に生きて立っているダンブルドアに、信じられないといった驚愕の表情で固まっていた。
すると、ダンブルドアは口の端を持ち上げて柔らかく微笑んだ。


『ほっほっほっ・・・
なるほど・・・
にわかに信じ難い事じゃが・・・
そうか、君は未来から来たようじゃな。』

『何故わかったのです!?』


降谷は目を見張った。
すぐさま英語でダンブルドアに尋ねると、ダンブルドアは降谷の揺れるグレイッシュブルーの瞳をジッと見つめていた。
降谷はその行動が何を意味するのかわかり、強く抵抗してすぐにダンブルドアから視線を逸らした。


(開心術か!)

『御明答じゃよ。』

(しかも凛より読むのが早い!)


ダンブルドアは降谷の心境を知りながらもニコニコと話を続けた。


『未来を知りすぎる事は実に危険じゃ。
儂はこれ以上、君に開心術をかける事などせんよ。』


降谷は警戒をしつつも、ゆっくりとダンブルドアへと視線を移した。
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