その魔女、ゼロに恋する

□Episode 3
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部屋に着信を知らせるバイブ音が響く。
スマホを操作して通話ボタンをタップすると、耳に当てたスマホから聞き慣れた声が聞こえてきた。


「降谷さん。
例の女性ですが・・・
やはり神崎 凛は、つい最近になって警視庁の者の手によって新しく戸籍などつくられていました。
それ以前はイギリスにも籍はありません。
詳しい事は、今朝お渡しした書類に纏めてあります。」

「わかった。
仕事が早くて助かる。
礼を言う、風見。」

「恐縮です・・・
ではこれで。」


通話を終えると、今朝風見から受け取った資料をパラパラとめくりながら降谷は眉間に皺を寄せた。


「元無戸籍の謎の女・・・か。」


資料にはーーーー
氏名:神崎 凛
年齢:27歳
血液型:A型
出生日:4月21日
出生地:無
国籍:無
住所:無
親族:無
様々な項目のほとんどに"無"と記されていた。


(組織に関係のある人間なら、幹部に籍を置く自分の耳にも少なからず入るはず。
一応、連絡先は渡してみたがやはり連絡がくる事もない。)


降谷はトン・・・トン・・・トン・・・と、右手の人差し指でローテブルの上を軽く叩きながら考えていた。


(・・・一般人にしては怪しすぎる点が多い。
あるべき情報がどこにもない。
無戸籍者は珍しくもないが、それでもどこかしらに情報は残るはず・・・
彼女の場合はどこにも情報が残っていない。
この国にも他国にも彼女の情報がないという事は、この名前が偽名である可能性が高い・・・
それにあの時の不快感はなんだったんだ?
まるで俺の記憶を誰かに覗かれているかのような不快感だ。
とにかく彼女が、こちら側の敵となるかどうかを優先的に詳しく調べる必要があるな。)


降谷は資料をローテーブルの上に置き、ベッドにもたれて天井をボーッと見上げた。


(・・・しかし駅まで送った時に初めて見せたあの笑顔・・・
あれだな・・・可愛い・・・
ーーーーっ!?
俺は何を考えているんだ!
よくそれで公安が務まるな!
・・・落ち着け、よし。
幸い彼女は俺の潜入先であるポアロで働き始めると聞いた。)

「・・・君は一体何者だ。」


降谷は擦り寄って来たハロをひと撫ですると立ち上がった。
そして玄関に向かう降谷のお見送りをする為に付いて来たハロに微笑んだ。


「行って来るよ、ハロ。」


降谷は部屋を出ると、立体駐車場へと移動した。
そして白のRX-7に乗り込み、潜入先である喫茶ポアロへと車を走らせた。
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