そのゼロ、魔女と再び恋する
□Story 8
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『はぁ?
リンの様子がおかしい?』
『えぇ・・・
Mr.スネイプにはいつも通りでしたか?』
『アイツに変化は特になかったが・・・』
『そうですか。』
悩ましげに小さく溜め息をもらしながら、皿の上のミートパイをフォークで切り分けている降谷に、その向かい側と隣に座っていたグリフィンドールの男衆3人は首を傾けた。
そしてシリウスはニヤニヤと笑みを浮かべながら降谷の肩に腕を回した。
『何だ?
ついにフルヤはリンに嫌われたんじゃねーの?
可哀想だから俺が慰めてやろーか?』
『随分と嬉しそうな表情で気持ち悪い事を言わないでもらえませんか?』
『え、なんか俺への態度ひどくね?』
『あと馴れ馴れしく僕の肩に腕を回さないでください。』
『ねぇ、なんか俺への態度ひどくね?』
ホグワーツの1、2を争う美形の2人が絡む姿に、周りの女子生徒たちが黄色い声をあげる中、降谷は再び溜め息をもらした。
『嫌われてるワケではなさそうなんですよね・・・』
『じゃあ、何がそんなにもMr.フルヤの哀愁フェロモンを溢れ出してるんだい?』
『今日のフルヤは一段とフェロモンがすごいね!
女子生徒たちの視線が痛いくらいだ!
お陰で僕たちに穴が空きそうだよ!
嫌われてないと思う根拠はなんだい?』
リーマスとジェームズが首を傾げながら降谷に尋ねた。
降谷は本来なら自分の隣にはシリウスではなく凛が居るはずなのに、と悲しげな表情でグリフィンドールのテーブル席でリリーと食事をする凛に視線を移した。
『僕が凛を見つめると、決まって彼女はいつも顔を真っ赤に染め上げて・・・
それはもう破壊力抜群の可愛さで、潤んだ大きな瞳で僕を見上げてくるんです。』
『・・・なんだ、惚気かよ。』
シリウスが左手の甲に乗せてた顔をずり落としながらツッコミを入れた。
『それが今朝、その反応じゃなかったんです。』
『どーゆー事だい?』
ジェームズの質問にスネイプが顎に手を添えながら『そういえば・・・』と話し始めた。
『今朝、医務室からリンが1人で寮へ帰ってきた時・・・
やけに顔が赤かったな。』
『体調がまだよくないとかじゃ?』
リーマスが心配げに尋ねると、スネイプは首を左右に振った。
『いや、僕もそう思ってリンに熱があるのかとか聞いてみたんだが・・・
アイツは"体調は万全だ、熱はない"と言っていた。』
『リンの事だ。
どーせ、いつもの無理して平気なふりしてるやつなんじゃねーか?』
シリウスが尋ねると、スネイプは再び首を左右に振った。
『確かに熱はなかった。』
『うーん・・・
フルヤ、今朝君は一体リンに何をしたんだい?』
ジェームズが腕を組みながら首を傾げて降谷に尋ねた。
『・・・僕をからかう凛があまりにも可愛らしかったので、少し意地悪しようと近くで彼女を見つめました。』
『うん、何やってるんだぃ?』
『ポッター、これはフルヤの日常茶飯事だ。
一々深く聞く事ではない。』
『・・・ねぇ、スネイプ。
君、なんかフルヤに感化されすぎじゃない?
そんなんだったっけ?』
『毎日、こいつらと一緒に居てみろ。
自分の考えを変えた方が早いと悟る。』
『そ、そーかい・・・』
しばらく考えてたリーマスは左手に顔を乗せながら『うーん・・・』と呟いた。
『つまり・・・
Mr.フルヤはいつも通りの行動をしたのに、その行動に対してリンは違う態度を示した、と。』
『えぇ。
あんなにも全力で拒否をされたのは初めてで・・・
正直、かなり凹んでいます。』
『でも嫌われての拒否じゃなかったんだろ?』
『そうですね。
凛は以前と変わらず僕の事をとても好いているようですし・・・』
『・・・ハッキリ言うじゃねぇか・・・』
降谷の発言に、シリウスはコメカミをピクピクさせて呟き、スネイプとリーマスは溜め息をもらした。
そしてリーマスは再び考え込んだ。
(・・・確かに認めたくはないが、リンはMr.フルヤの事を好いている。
なら何故いつもは受け入れていた彼の行動を拒否するんだ?
今までのリンと今日のリンでは何が違う?)
そこでふとリーマスはある答えを見出した。
そしてその答えがストンとリーマスの心に落ちて、納得がいった。
『・・・あぁ、なるほど。』
『?
リーマス、どうしたんだい?』
ジェームズが尋ねると、リーマスはニコリと微笑んだ。
『ん?
僕たちの完敗だなぁって。』
『?どーゆー事だい?』
ジェームズが再び尋ねるが、リーマスはニコニコと微笑んでいるだけだった。
(・・・リンがMr.フルヤに恋してる事を自覚した、だなんて癪だから僕の口から言わないよ。)
リーマスは『ご馳走様。』と言って席を立つと大広間から出て行った。
その後を慌てて追い掛けるジェームズとシリウス。
『ルーピンのやつは一体なんだったんだ?』
スネイプはポツリと呟くと、考えて込んでいた降谷もリーマスの意図に気が付いた。
そしてリンの不可思議な行動の意味も。
『・・・なるほど、そういう事ですか。』
『何がだ?』
『ついに自覚してくれたようです。』
先程までの気落ちした降谷とは違い、すこぶる爽やかに満面の笑みで嬉しそうに話す降谷に、さすがのスネイプも理解したようだった。
『・・・久しぶりにお前のその顔が、こんなにも腹立だしいと思った。』
『ふふ、光栄ですね。』
『・・・褒めてないぞ。』
降谷は席を立つと、嬉しそうに大広間から出て行った。
残されたスネイプは盛大に溜め息をこぼした。