その魔女、ゼロに恋する
□Episode 1
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バシッ!!
凛が姿現しで降り立った所から少し遠くの場所で「今の音なんじゃ〜?」と、おそらく散歩をしていたであろう老人の声が聞こえた。
凛は慌てて茂みに身を伏せて隠れた。
(あっっぶな!
出るとこ間違えてたら、マグルに見られてた!)
凛はドキドキしながらやり過ごそうと息を殺した。
老人はしばらく辺りをキョロキョロとし見渡していたが、「ついに耳もおかしくなってしまったかの〜」と呟きながら歩いて行った。
その姿を確認した凛はホッと息をついた。
(おかしいな・・・
姿くらまし姿現しは出来るみたいなのに、何故実家やホグワーツには出来ないのだろう・・・
何かがおかしい。
知らない地名ばかりだし、いくら数十年ロンドンに居たからって知ってる地名が1つもないなんて・・・
あーもう!
早くしないと、こんなことしてる間にもセブルスたちはーーー!)
凛は焦りながらどうしたものかとうんうん唸り続けた。
そして自分が勤めていた闇祓い局へ守護霊で連絡してみようかと考えた。
凛は高架下まで移動して、周りに人が居ない事を確認すると呪文を唱えた。
『エクスペクト・パトローナム(守護霊よ、来たれ)』
凛の持つ杖先から銀色の糸のようなものが、ふわりふわり浮かび上がった。
そしてそれは次第に白い大きな鷲の形となった。
大鷲は凛の頭上でくるりと一飛びした後、凛の足元に降り立った。
『ホグワーツの状況はどうなっていますか?
至急、連絡ください。
この伝言を闇祓い局へ。』
凛が大鷲にそう伝えると、大鷲は翼を広げて空へと飛び立った。
しかし、しばらくその場でくるくると周ると再び凛の足元へ舞い戻って来てしまった。
「・・・え?」
伝言がーーーー
守護霊が届けられないーーーー?
知ってるはずの場所に姿くらましも姿現しもできないーーーー
そんな事有り得ないーーーー
だって
届けられないのは "そこ" が存在しないからーーーー
知ってる場所へ姿くらましも姿現しも出来ないのは "そこ" が存在しないからーーーー
知らない場所
知らない街
知らない・・・日本
凛はフッと消えた守護霊の場所をぼんやり見つめながら、背中に嫌な汗が流れるのを感じた。
「ここは・・・一体どこなの・・?」
その時、ザァッと強い風が吹いた。
どこからか飛んできた桜の花びらが、凛の目の前を舞って行った。