傘の下
□ショコラティエ
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東京の一等地でスイーツ店を出す。
これは知名度アップにもなり人気かつ高級店になるのには必須なのかもしれない。
そこでお店を出してみた。
しかし閑古鳥が鳴くと言う言葉があるがその言葉がピッタリ…いや、閑古鳥すらいないのかもしれないほどなのかもしれない。
毎日1人来店すればいい。
酷い時は1週間人が来ないなんて事もある程だ。
かれこれ1年半経った。
貯金も資金も全てを切り崩して何とかなっているが恐らく持って半年だろう。
そう、あの人が来るまでは。
とある日、いつも通り売り場奥の厨房で新作のチョコを作っていた。
まだチョコに対する情熱があるうちに…!
という想いからだ。
すると自動ドアが開いた。
4日ぶりのお客さんだ。
海人「いらっしゃいませ」
1人で切り盛りしているので接客も1人だ。
お店にはマスクを付けた160cm程の女性だった。
麻衣「あの、このチョコ1ついいですか?」
そのチョコは俺がオススメと書いているものの値段が1万円程するチョコだった。
チロルチョコならいくつ買えるのだろう。
そんな事を思いながら会計を済ませた。
海人「あ、あの!」
麻衣「はい?」
海人「今、新作のチョコ作ってまして、良ければ試食していただけませんか?見ての通りお客さんも全く来ないのでお客さんの意見も聞いてみたくて…お時間あればでいいんですが…」
麻衣「じゃあ、是非お願いします」
急いでチョコを持って売り場に戻る。
最初は自信満々に美味しいと思い作っていたのだが売れないので自信がなくなっていた。
女性はチョコを1口口に入れると目を見開いた。
麻衣「美味しい…」
海人「良かった…」
麻衣「これいくらですか?」
海人「売るなら30個で2500円とかですね…ただ今回来ていただいたのでこれお持ち帰りいただいてもいいですよ?」
麻衣「え!いいんですか?ありがとうございます!」
女性は頭をぺこりと下げて帰っていった。
お客さんから直接感想を聞くことなんてまず無い。
だからこそ今日の女性の感想がとても嬉しかった。
初めて聞けた直接の評価は絶賛というのがピッタリ当てはまるような感想だった。
そしてこの人が俺の人生を変えることはまだ知らない。