傘の下

□まーいーやん
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社会人一年目。
覚える事も多く、怒られてばかりの毎日。
朝起きる度に気持ちが沈むのは誰でもある事だろう。
けど起きてすぐ毎朝幸せになることがある。





海人「麻衣?起きて?」




優しく肩を揺すり起こす。
寝惚けてまだ開いてない目で俺の姿を視界に捉えるとクシャッと笑う。
毎朝、憂鬱な気分から幸せになる。
彼女はモデルとして活躍している白石麻衣。
元乃木坂メンバーとしても活躍していた彼女が卒業して恋人として選んだのは何故かこの俺だった。
疑問しか無く、最初は断っていたが猛烈なアタックを受けて付き合うことになった。













海人「麻衣、仕事は?」
麻衣「ん?…休みぃ…」
海人「俺は仕事あるから行くね?」
麻衣「えー…行っちゃうの?」
海人「仕事だからね…」
麻衣「ねぇ、最近海人辛そうだよ?大丈夫?」






さっきまで寝ぼけていた目がしっかりとこちらを見ていた。
朝の7時半には家を出て仕事場に行く。
夜は21時頃に帰る。
こんな生活を続けていた。
確かに辛いし心もズタボロだが家に帰ると天使のような彼女がいる。
これだけがボロボロの心を支えていた。
彼女にだけは心配をかけまいと気丈に振舞っていた。
でも彼女はそんな事お見通しだったようだ。










海人「しんどいけど大丈夫だよ?心配かけてごめんね」
麻衣「…ダメ、海人無理してるもん。
私、海人が思ってるより海人の事好きなんだよ?だから、少しの変化も気付くし無理してる笑ってるのもわかる。
私、彼女だよ?そんなに頼りない?相談できないくらいの関係なの?」













寂しそうな、ただどこか怒っている様な表情で言われた。
恋人とはどういう関係なのか。
身体を重ねる事なのか。
それはただのせフレであり恋人ではない。
ただイチャイチャするだけなのか?
ただの薄っぺらい関係ではないか。
もう、同棲している事だからそんな薄っぺらい関係ではないはずだ。
麻衣はしっかりと考えてくれていたが僕がまだこの関係を簡単に、薄っぺらい関係にしていたのは僕の方だった。


















海人「…ごめん、僕が悪かった。
麻衣に心配かけたくなくて…でも、麻衣が頼りないとかそういう事じゃなくて…麻衣が笑顔でいてくれる事が何よりも嬉しいし…」
麻衣「…ありがとう、でも海人は優しすぎるんだよ。
もっと迷惑かけてよ…私だけ海人の事好きみたいで寂しかったんだから…」













俺が優しさと思っていた事が麻衣を苦しめていた。
その事実だけが重くのしかかっていた。









海人「ごめん、ちょっと席外すね」
















そう言って寝室を出てリビングに向かった。
ポケットからスマホを取り出して会社に電話をかけた。













海人「すいません、体調崩しててお休みを頂きたいのですが…」













電話の相手は俺が所属する部署の部長だった。
部長は【わかった、最近頑張ってたから身体に疲れが来たんだろうからゆっくりと休んで明日から元気に出て来いよ】
そう言われた。
普段は厳しい部長だったが少しの優しさが心に染みた。












海人「麻衣、ごめんね?今日休み貰ったから2人でゆっくりしよ?」
麻衣「うん!」













嬉しそうに笑う表情を見てこっちまで嬉しくなった。
すると麻衣はとうっ!と声を上げ俺に飛びついてきた。
咄嗟のことで少しよろけたが優しくもしっかりと受け止めた。












麻衣「海人、大好きだよ?」
海人「俺も好きだよ」













どちらともなく唇を合わせた。
唇が離れた後は2人で目を見て微笑みあった。
身長差の関係で麻衣が上目遣いになるその姿に心をまたまた射抜かれた。
たまには息抜きでサボる事もまーいーやんと思った。
何も無い平日が愛や優しさを確認できた有意義な朝になったのは間違え無かった。











海人「あ、休みの理由体調不良にしたけど詳しく聞かれたらどうしよ」
麻衣「恋の病とか?」
海人「それは年中かな?まーいーや」
麻衣「まーいーやん?」







そう言って叩いた頭を抑える麻衣を見て一生大事にすると決めた。
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