A3 短編集
□A3! 短編集
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※時間軸はACT1。
三角と乃愛、臣と天和は恋人同士。
いづみside
なんで…こんなことになったんだろう…。
『わー!目線高ーい!!なべおっきー!!』
『…………。』
時間を遡ること数時間前、乃愛ちゃんと天和ちゃんが久しぶりのオフで珍しく仕事やトレーニングをせずに出かけたなと思ったら、お互いの彼氏のためにプレゼントをサプライズで用意しようということになったらしい。
恋愛初心者な2人は仕事の時に見せる頼もしさはどこにもなく、ただ好きな人のために頑張るどこにでもいる普通の女の子で見てるこっちは微笑ましくて、ついつい和んでしまう。
そうして買い物を終えて帰宅し、あとは渡すだけとなった時に事件は起きた。
『喉乾いたー!!
なべ!飲み物なんでもいい?』
『うん。』
『あれ?なんだろこれー?』
乃愛ちゃんが取り出したのは2本のビンに入った謎のドリンク。
『私が入れといたジュースなくなってるじゃーん!これしかない!!』
『…なにその見るからに怪しさ満点なやつ。』
訝しげに乃愛ちゃんが持っている小さなビンを見る天和ちゃん。ラベルもなければ中身も見えない怪しさ満点のドリンク。
『なんだろこれー?
これしかないし飲んでみる?』
『は?正気??』
冷蔵庫に入ってたということは劇団員の誰かのだから安全だろう、という乃愛ちゃんの楽観思考に信じられない、という風に乃愛ちゃんを見る天和ちゃん。
でも確かに喉もかわいていたし、それしか飲み物はない。
『(まずは先に乃愛に飲ませて大丈夫そうなら私も飲もう。)』←
天和ちゃんの腹黒思考で乃愛ちゃんを先ずは犠牲にしようと言うことで、そんな天和ちゃんの心境を知らず、乃愛ちゃんが飲むと…
『んー、なんだろ?
オロナミ○Cみたいな味ー!』
不味くはない!と言う乃愛ちゃんに安心して、もう一つあったドリンクを飲み干した天和ちゃん。
しかしそれがいけなかった。
『はー!!さて!三角のプレゼントを部屋に…ってあれ?これなべのやつ?』
『………。』
『なべー!これ取り違…え、てる…。』
お互いの姿を見合った時、そこにあったのは親友の姿ではなく…
『『入れ替わってる…!?』』
自分自身の姿だったのだ。
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−−
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『わーい!目線高ーい!!足長ーい!』
『…………。』
そして今、私たちは乃愛ちゃんたちを、どうやって元に戻すか話し合っていた。
「そもそもそのドリンクは支配人が間違え入れたやつなんすか?」
「乃愛さんのジュースを勝手に飲んじゃったらしくて、代わりを入れようとしたらしいんだけど…。」
「それでこのドリンクを入れちゃった、と。」
綴くんたちも動揺してる。
それはそうだ。中身が入れ替わるなんて漫画みたいな事が起こってるんだから。
しかし、動揺している理由はそれだけじゃなくて…。
「天和さんがめっちゃ笑顔…違和感しかねえ…。」
「逆に不機嫌顔の乃愛さんはすげぇおっかねぇ。」
元々正反対な性格の2人が中身だけ入れ替わると普段とのギャップが凄すぎて調子が狂ってしまう。
普段クールな天和ちゃんがめっちゃ破天荒で、逆に天真爛漫で笑顔が絶えない乃愛ちゃんが人1人潰しにかかりそうな程危ないオーラを発している。
天馬くんなんてショックで気絶しそうになっている。
「てゆーか、そらぴは何で不機嫌?
のあのあの体ってそんなに不便なの?」
「乃愛の体だとダンスしづらくてストレス溜まるんだってさ。」
そう、プロの振付師でありダンサーでもある天和ちゃんの体に出来ることが作曲家でどちらかと言えばインドア気味な乃愛ちゃんの体では出来ないことが多い。
だからこそ、思うように体が動かずストレスゲージが溜まっていく一方なのだ。
「ふふ、体が入れ替わるドリンクなんて面白いものを持ってるんだね、支配人。」
「その支配人はついさっき渡部(外見響木)にボコボコにされてたけどな。」←
丞さんの言葉にバッ!と支配人の方を見るといつも以上にボロボロで見るに堪えない姿になっていた。
む…惨い…。
さて、そこで本人たちと同じくらい困るのがこの2人。
「うう〜、のあ〜…。」
「…………。」
乃愛ちゃんと天和ちゃんの恋人の三角くんと臣くん。
お互い恋人の中身が入れ替わってどうしたらいいのか、分からないのだ。
さっき天和ちゃんの体で三角くんに抱きつこうとした乃愛ちゃんを臣くんが物凄い勢いで止めに入ったし、その逆に乃愛ちゃんの体で殺気を放ってる天和ちゃんを宥めようとした臣くんを三角くんが物凄い形相で睨んでいたり…
三角くんは明らかにしょんぼりしてるし臣くんは笑顔のまま固まってしまっている。
「はあ…おい松川。
元はと言えばお前のせいだろ。何とかならないのか。」
左京さんが呆れたようにため息をついて床に転がっている支配人をゲシ!と蹴る。
ここに支配人に優しい人は存在しないのだろうか…。←
「うう…こ、これを飲めば元に戻るかと…。」
そう言って先程のビンによく似たやつを2本取り出した。
良かった。元に戻るやつもちゃんとあるんだ。2人に飲んでもらおうとするとパッと支配人の手からビンが消えていた。
どこにいった!?と辺りを見回すと…
『うむむむー!!?』
『………。』
乃愛ちゃん(見た目天和ちゃん)が天和ちゃん(見た目乃愛ちゃん)に無理やりドリンクを飲まされているという凄い絵面を見てしまった。
天和ちゃん…そんなにこの数時間でストレス溜まってたんだね…。
乃愛ちゃんが全部飲みほしたあと天和ちゃんも一気にドリンクを飲むと…
『お、戻ったー!!
視線低い!悲しい!!』
『支配人コロス。』
あっという間に元通りになった。
そして天和ちゃん。元に戻れたから支配人にトドメさそうとするのはやめてあげてね。←
「うう〜、のあ〜!」
『三角〜!!』
もう待ちきれない!と言わんばかりに乃愛ちゃんを抱きしめる三角くん。ずっと我慢してたもんね。いつも一緒にいる時は乃愛ちゃんにべったりだし。
臣くんも態度に出さないように必死なんだろうけど直ぐに天和ちゃんの所へ行って支配人にトドメをさそうとしているのを宥めて天和ちゃんの頭を撫でている。
すると殺気に満ち溢れていた天和ちゃんはみるみる黒いオーラが消え去り、それと同時に顔が真っ赤になっていく。付き合ってそれなりの時間が経つのに頭を撫でられるだけで、まだ顔が赤くなるなんて、天和ちゃんは相変わらずウブだなあ…可愛い。
「無事に戻れてよかったな。」
『…うん。』
ぴと、と臣くんの胸に顔を埋める天和ちゃん。臣くんは一瞬驚いてたけど直ぐに嬉しそうに表情が緩んでいた。
天和ちゃんから甘えるのは珍しいもんね。
至さん、リア充爆せろ、クソが。とか言わない。←
『あ!そういえばね!!
三角にプレゼントあるんだー!!』
「え〜、なになに〜!?」
『あ、私も臣に渡すもの…あって…。』
「オレに?」
乃愛ちゃんと天和ちゃんがそれぞれプレゼントを渡す。
乃愛からは三角くんへ、さんかくのペアネックレス。
天和ちゃんからは臣くんへ、黒のシンプルなカメラケースだった。
「わ〜!さんかく、さんかく〜!!」
「ケース壊れてたの、気づいてたのか。」
2人ともとても嬉しそうで乃愛ちゃんと天和ちゃんもお互い恋人の嬉しそうな顔を見て幸せそうだった。
「のあ、ありがとう〜!大好き!!」
「ありがとうな天和、大事に使わせてもらうよ。」
今日もMANKAIカンパニーは平和である。
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