A3!

□克服のSUMMER!
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乃愛side

「オーディション、人来てくれますかね……。」

「前回はどうだったんでしたっけ?」

「オレ一人でした。」

マンツーマンでしかも何も言われずその場採用だったらしい。

怪しさ満点すぎる!!
よくそのまま所属しようと思ったね!!

すると入口から見慣れた顔が入ってきた。

『あー!カズと幸だー!!』

「のあのあ、やっほー!
相変わらずかわうぃーね!!」

「どーも。」

監督の言ってたスカウト枠ってこの2人のことだったんだ!!

カズは軽いノリでやる気満々!って感じだけど幸は話を聞いてみてから決めるらしい。

でも実際に自分で衣装を着て舞台に立ってみる、ということには興味があるらしく綴のように裏も兼役でやって見るのもいいかもしれない、ととりあえずやってみるということになった。

カズと一緒の組ということにはちょっと不満気だったけど。コミュ力高男だって!相変わらずあだ名のセンスやべーね!!

「す、すみませーん……。」

『!!』

およ?男の子だ!!

『こんちゃ!!』

「わ!こ、こんにちは……!!」

ちょっとおどおどしてる男の子に駆け寄って挨拶すると驚きながらもしっかり挨拶してくれた!いい子だ!!

『もしかして、入団希望!?』

「は、はい。」

やったー!!入団希望者3人目だ!!
会話に夢中で気づいてないみんなの所に連れてくる。

『みんなー!!入団希望者ごあんなーい!!』

「!!」

「あれ……?」

みんなやっぱり気づいてなかったんだね!ウケる!!

「向坂、オーディション受けるの?」

「え?瑠璃川くん……!?」

およよ!?ひょっとして知り合い!?

聞くと同級生らしい。凄い偶然だね!!

ちょっとネガティブなところはあるけど幸くんと普通に会話してる分には大丈夫そうだし、多分大丈夫だよね!!

「それじゃあ、ひとまずオーディションを始めようか。

幸くんと一成くんも一緒に参加してくれるかな。」

『あ!監督!!』

やべ!言うの忘れてた!!

「?どうしたの??乃愛ちゃん。、」

『あのね、私の方からも一人スカウト枠で声掛けたの!』

言うの忘れてた!ごめんなさい!!

ぺこりと頭を勢いよく下げて謝ると、いいよいいよ!と頭をあげるように言われたので、ばっ!と頭をあげる。

「乃愛ちゃんのスカウトってことは同じダリアの子とか?」

『ううん!違うよー!あのね−−』

その人の名前を出そうとした時

「−−おい、オーディション会場ってここか?」

『あ!天馬ー!!』

私がスカウトした人物、皇 天馬が劇場に入ってきた。

「やっぱボロいな、この劇場……。」

『入って早々失礼ヤツめー!!』

こうしてやる〜!!と肩に飛び乗って頭をぐしゃぐしゃにしてやると、やめろ!!とそのまま抱き抱えられる形で抑え込まれた。不覚!!!←

ちょっと天馬の顔赤いけど風邪かな?それとも顔真っ赤にするレベルで怒った!?みみっちいぞ!!

「えっと…キミが乃愛ちゃんがスカウトした人かな?」

「そうだけど、アンタは?」

「監督兼主宰の立花です。よろしくね。」

「ああ、アンタが。
乃愛さんから話は聞いてたがずいぶん若いんだな。」

相変わらず上からというかなんというか……。

まあ芸歴15年となるとこうなっても不思議ではないかー。芸歴というか芸能界で仕事をしてきたのは私より天馬の方が一応先輩だし。

監督はその生意気ともとれる態度を気にしていないのかみんなと一緒に並ぶように指示を出し名前を聞く。

皇天馬、と天馬が答えると流石にみんな気づいたのか驚きの声が上がる。

「オレ、この人、テレビで見たことあります!」

「超有名人じゃん!すっげー!」

「皇天馬って俳優だっけ?」

「子役から始めて、高校生にして芸歴十五年の実力派俳優だよ。」

「てか、そんな大物をオーディションに呼べる乃愛さんって一体……。」

綴がちょっと引き気味な顔でこっちを見る。

私だってドラマとかで作曲の仕事してたって言ってたじゃんかー!!
私だってプロなんだよ!!役者じゃないけど!!

「……オレのこと知らないとか、どこの田舎もんだよ。」

「はあ?」

『天馬ー!アウトー!!』

天馬の一言で幸と一触即発になりそうだったので、スパーン!!とお得意のハリセンで天馬と頭を叩く。

ちなみにちょっと威力強めでお送りしました!!←

「いってー!何すんだ!!」

『天馬相変わらずお口が悪い!
そんなんだから同年代の友達出来ないんだよ!!』

「う、うるさい!」

『ごめんね、幸!天馬の言うことは気にしないでね!ツンデレさんだから!』

「はあ……。」

俺だってなー!とキャンキャン言ってる天馬を放置し幸に謝ると、別にアンタのせいじゃないでしょ。って言ってくれた。

天馬より大人だ!!←

そんなこんなしているとオーディション開始の時間になった。

1人ずつ名前と演技経験を聞かれる。

最初は幸だったんだけど自分より年下なのに礼儀がなってない、と突っかかる天馬にまたハリセンを叩き込み、次お願いしまーす!と促す。

カズ、椋ときて流石に学んだのか言葉には出さなかったけど全員演劇経験なしと聞いて不満そうな天馬。

「……皇天馬。高校2年。役者としては15年。…舞台経験はなし。」

「なし?1度も?」

「オレ、基本映画メインだから。」

カズのコミュ力のおかげで何とか機嫌が戻った天馬だけどなんだかなー。

この舞台を通して成長して欲しいところだけど…。

自己紹介のあと課題をやることに。

「課題って、この舞台の上でやるのか?」

「うん。そうだけど……?」

「……課題なら問題ないか。乃愛さんもいるし。」

『……さーて!!じゃあお邪魔虫は退散だ!!』

舞台から降りる前に、天馬の頭をぽんぽんと撫でる。

「!」

『天馬なら大丈夫だよ。』

「…おう。」

"舞台の上"での課題と聞いて表情が強ばっていた天馬だけど頭を撫でると少し肩の力が抜けて表情も柔らかくなる。

それを見てからぴょん!と舞台から下りる。

課題はシンプル。
"おはよう"を喜怒哀楽で表情をつけるというもの。

やっぱり天馬は不満気に突っかかてたけどハリセンは出さなかった。

問題は大ありだけど、あれは今の天馬にとっては緊張をほぐす方法のひとつだから。

何より……

「おい、誰に向かってポンコツ役者って言ってんだ?」

「そこのセンス悪いオレンジ頭のポンコツのことだけど?」

「ああ!?」

同年代の子とこんな風に喧嘩してるとこなんて見たことないからちょっと新鮮。

そして天馬の番。
セリフだけで喜怒哀楽を的確に表現して見せた。

実力派俳優の名は伊達では無い。
天馬は決して口先だけの人間でなく昔から血のにじむような努力で登りつめた。

実力は間違いなくここにいる誰より上にいる。

みんなも圧倒されていた。

オーディションが終わり、結果は全員合格。

天馬は愕然としてた。

そしてまた始まる天馬と幸の言い争い。
春組は楽しんでる節あるけど…

うん……流石にもうダメだね。

『天馬。』

「!!」

ぽつり、と普段の私に比べれば小さな声。

けどしっかりこの広い劇場に響く。
そして、ビクッ!っと肩を揺らす天馬。

おそるおそるといった感じで私の方を向くと青ざめていた。

『天馬をスカウトしたのは私。
天馬がそこまでワガママいうなら天馬だけ降りてもらうよ。』

「は!?なんでオレが−−」

『今の状況で私が天馬に曲を作ると思ってるの?』

「!!」

そこまで言えばもう何も言えない。
……悪かった。と幸たちに素直に謝ったのをみて、よしよし!と天馬の頭を撫でる。

「あのポンコツ役者が素直に謝るとか…ロリ詐欺モンスター何者?」

「のあのあマジやべー!」

「かっこいい……!!」

夏組メンバーからは驚きと尊敬の視線を受ける。いやん!照れるぜ!!

「ねえ、天馬くんは、どうしてうちのオーディションに来たの?

乃愛ちゃんのスカウトとはいえ、うちは小さな劇団なのに…。」

「それは……。」

監督の問いに咲也と私に視線を向ける天馬。

私は天馬の視線の意味が分かってたけど、何も言わない。

「今まで本格的な舞台経験がないから、演技の幅を広げるために劇団を探してたら、乃愛さんに誘われたんだ。」

『誘ったのだー!!』

「乃愛さんがどうしてもっていうから、そこの奴らの公演見に来たら…ちょっとはマシだなって思っただけだ。」

ま、ラスト以外グダグダだったけどな。っていう天馬だけど…。

『私が感想聞いたらめっちゃ褒めてたくせにー!!』

「そ、そんなことない!!」

照れるなよー!と小突けば、アンタなぁ!と私の両頬をつねる天馬。

いひゃい〜!!と手をパタパタさせてるとカズがねぇねぇ!と声をかけてくる。

「お2人めっちゃ仲良いけど、もしかして恋仲!?」

「こいっ……!?」

『こいなかー?』

顔が真っ赤になった天馬の隣で思わずきょとーんとしてしまう。

キラキラと期待しているカズにあはは!と笑いながら

『ちがうよー!
私と天馬は昔から一緒に仕事してるから仲良しなだけだよ!』

「えー!?めっちゃお似合いなのにー!?」

『天馬、純情少年だから彼女いない歴=年齢なんだよ!!』

「純情少年じゃねぇし、いない歴はアンタも一緒だろうが!!」

『おうとも!!』

ふふん!と胸を張ると、自慢にならねぇからな!とツッコミを入れる天馬。

相変わらずキレッキレだね!!

「それにオレは……。」

『???』

急に黙ってしまった天馬にどうしたの?と聞いたらなんでもない!!と大きな声で言われる。

なんで怒るのー!逆ギレだー!!

私たちからちょっと離れたところで幸が"ああ、そういうことか……。"と呟いたのは気づなかった。




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