A3!
□バットボーイポートレイト
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乃愛side
振付師候補の子に連絡をしてから数日後、綴の脚本が出来上がったので秋組と監督と私で読んでいる。
今回の話はギャングスターのアクション劇で主演の万里が演じるルチアーノと準主演の十座が演じるランスキーのバディものだ。
春夏と続いて今回の脚本もめちゃくちゃ面白い!作曲意欲がわいてくるー!!
みんなも脚本が気に入ったのか絶賛している。
ただ問題なのが……。
「だが、この芝居は摂津と兵頭の息が合わないと総崩れになる。」
そう、敵対設定なら何も問題は無いんだろうけど、この脚本はバディもの。お互いの信頼関係と息を合わせた芝居をしないと成り立たなくなってしまう。
当人たちも顔をめっちゃ顰めている。
絶対無理ですって顔に書いてあるよー…。
しかもそこからまた喧嘩を始めてしまい、このままでは収集がつかない。
仕方なしに、ハリセンを取り出そうとした時左京さんが迫田!と誰かを呼んだ。
迫田…??だれ??
「へい!」
うわ!いつからいたの!?全然気づかなかった!!
迫田って呼ばれたチンピラ風の人。
左京さんリアルヤクザだから、この人もヤクザなのかな…??なんか私の知ってるヤクザとは大分違うんだけど…。
「アレよこせ。」
「−−どうぞ!」
アレで通じるんだ!?
左京さんと迫田さんって何?熟年夫婦か何か!?めちゃくちゃ息ピッタリじゃん!!
いや…それよりは迫田さんが左京さんのことなんでも知ってます!って感じなのかな…。
そしてそこで取り出したものを見て皆騒然とする。
「荒療治だ、二人とも、手出せ。」
「おい、やめろ……。」
「ふざけんなよ−−!」
−
−−
−−−
−−−−
「……マジ最悪。」
「……うるせえ、聞き飽きた。」
げんなりとした様子でソファに隣同士で座る二人。その二人の手を見ると……
『あっははははは!!
て、手錠とか…アニメみたい!あはははは!!』
そう、お互い仲良く手錠で繋がれているのだ。外そうにも左京さんが鍵を持って寮を出ているから帰ってくるまでそのままになる。
もう…おかしくておかしくて笑いが止まらない!!ウケる!!
『あはははは!!』
「笑ってんじゃねえよ!乃愛さん、どうにかなんねえのかよ!?」
『なんねえ、ね!』
だって左京さん鍵もってったし!とドヤ顔して胸を張ると、うぜえ…と舌打ちする万里。なんだよー!そのサラサラヘアー撫で回すぞー!!
太一と臣は二人に同情と憐れみの視線を向け、他の組は完全に面白がっている。勿論私も面白がってる組!!
「また何かやらかしたのか?あの二人。」
『あ、天馬!』
仕事から帰ってきた天馬に事の経緯を伝えると呆れていた。幸と天馬も中々のものだったと思うけどね!流石にあの二人ほどではないけど。
「乃愛さん、これ…良かったら一緒に食べないか?」
『わー!!桜餅ー!!』
天馬が取りだしたのは私の大好物の桜餅。しかも老舗の高級和菓子店の所ではないか!!
食べるー!!と元気に返事をすると嬉しそうに笑った天馬。いつもなら可愛いやつめ!と頭を撫でているんだけど流石にしなかった。
まだ告白の返事はしてないけど、弟として見ない、って約束したから。
「オレも食べる〜。」
『わあ!三角!?』
「三角、お前…。」
後ろから抱き着いてきた三角。
天馬が悔しそうに三角を見ている。
そこから結局、夏組みんなで食べることになり、天馬が同情した幸に珍しく優しくされていたのを私は知らない。
天馬たちと桜餅を食べて上機嫌になった私は監督の買い物を手伝うため監督と玄関に行くと−−
「……。」
「……。」
ガタイのいい不良二名(手錠付き(笑))が玄関で仁王立ちしてました。
すげーね!光景がシュール!!
どうやら左京さんの帰りを待っているらしい。余程ストレスが溜まっているのか喧嘩をしないで大人しく待っている。顔は全く大人しくないんだけどね!ウケる!!
監督が財布を忘れたから部屋に取りに戻ると言われたので玄関の外で待っていて監督が玄関から出てきたので行こうとすると……
「………!」
『うぎゃあ!?』
「乃愛ちゃん!?」
バイクに乗った人に連れ去られました。←
え。なにどういうことこれ…。
まさかこれ噂に聞く誘拐ってやつ!?
バイクだから下手に動いたら危ないって言うのもあるけど、どんなに暴れてもビクともしない。元々小さくて力の弱い私には脱出は不可能だった。
うがー!こんなことなら、なべの護身術講座ちゃんと聞いとけばよかったー!!
変な人に声をかけられているのは慣れてるけど流石に、こんな強硬手段の誘拐経験がない。
どうしようか必死に考えていると……
「待てや、コラ!」
「!」
十座の声が聞こえたので何とか後ろを見ると万里と十座が追いかけて来るのが見えた。いや、でも流石にバイクに追いつくのは無理だよ…!?
次第に姿が見えなくなってしまう。
うぅ〜…やっぱり自分でどうにかするしかないか…。
そして着いたのは天鵞絨駅辺り。
ていうかヘルメットしてるから顔はわかんないけどオッサンキモイ!!
バイクが止まったから全力で暴れてもビクともしない。もうダメかも…と諦めかけたその時。
「……見つけたぞ。」
「!?」
「おっと、逃げらんねぇからな?」
万里と十座が待ち構えていた。
先回りしてたんだ!頭いいね!!
「く、くそ!どけ!」
「−−っ!」
『十座!』
焦ったオジサンが十座を殴り逃げようとする。だけどオジサン…めちゃくちゃ運が悪かったね。
「……殴ったな?」
「……殴ったな。」
「正当防衛だ。」
「だな。」
「ちょうどよかった。むしゃくしゃしてたところだ。」
「俺もだ。初めて気が合ったな。」
このストレスMAXな二人に喧嘩売って無事に逃げ切れるわけないじゃん。オジサンが小さく悲鳴をあげたけど、もう後悔しても遅い。
心の中でオジサンに合掌して、ことが終わるのを見ていた。
−
−−
−−−
−−−−
いづみside
「万里くん、十座くん大丈夫!?誘拐犯と乃愛ちゃんは−−!?」
「これ。」
「きゅう……。」
『スリリングだった!!』
「捕まえたの!?」
私一人では無理だと判断しすぐ近くにいた臣くんと太一くんを呼んで万里くんからの連絡で天鵞絨駅に向かうと全て終わっていた。
相手がバイクだったのに、先回りして追いついたらしい。凄いな……。
「乃愛さん、怪我ねえか?」
『んー多分大丈夫!ありがとう十座!』
「身内が目の前でやられてんだ。
黙って見過ごすわけにはいかねえだろ。」
十座くん…身内って思ってくれてたんだ。
乃愛ちゃんも同じことを思ったのか、ニコニコと嬉しそうな顔をして十座くんの頭を撫でていた。乃愛ちゃんが女の子だからなのか力づくで離そうとしない辺り本当に優しいんだなあ…。
「それじゃ、この犯人は警察に突き出してこようか。」
「しかし、やけにぼろぼろっスね。」
「……転んだんじゃね。」
「……かもな。」
『ふふふー!』
あれ?なんか二人の間の空気が少し柔らかくなったような……?
その後寮に戻り左京さんに事情を説明した。
「−−で、今日の夕飯が遅れたわけか。」
「二人とも大活躍でしたよ!」
『かっこよかったよー!』
「お前ら怪我はなかったのか。」
「私は大丈夫だったんですけど−−。」
乃愛ちゃんは強引に腕を掴まれた時と抱えられた時に着いたと思われる痣が手首と脇腹に出来ていた。痣なので暫くしたら消えるとは思うけど……。
『あい!大したことないので大丈夫です!』
当の本人も全く気にしてないし……。
「……気をつけろよ。特に響木。
お前は見た目的に襲われやすそうだからな。」
『否定できないのが悲しい!!』
あははー!と暢気に笑ってる乃愛ちゃんだけど天馬くんから話を聞くと、よく不審者に声をかけられることが多いらしいから今度は特に注意しないと……。
左京さんも乃愛ちゃんの危機感のなさに流石に心配したのか、今後は仕事や学校の送り迎えとかをすべきか、と真剣に考えていた。意外と過保護!確かに今回は仕方ない気がするけど…。
なんか左京さん、どんどん乃愛ちゃんの親みたいなポジションについてる気がするなあ…。小学生の娘を心配するお父さんみたいな絵面になっている。
その後手錠を外してもらって早々に喧嘩を始める万里くんと十座くんを左京さんが一喝し、乃愛ちゃんが爆笑しているのを見て、あの空気の良さは気の所為だったのかな…とため息をついた。
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