book
□しーらない
1ページ/1ページ
【唯side】
『みほぉ〜』
渡邉「ふふふ、はいはい(笑)」
『まただよぉ』
沈んだ気持ちとともに私はいつも通り美穂の膝に沈む。
仲のいい陽菜と遊ぶのはいいけど、遊びが謎すぎて入れないし。みーぱんさんと絡みが独特すぎてイチャイチャしてるし。
2人とも私がひよたんの恋人って知ってるよねぇ。
ひどいよぉー、泣きそうだよぉ。
渡邉「唯がばしっといってあげないと、ひよたん気づかないかもよ?」
『だって、メンバーとメンバーが仲良いのはいい事だよ』
「そうだねぇ〜」って美穂は頭撫でてくれる。あんたはいいやつだよ。
いつまでフリーでいるの、早くいい人みつけてよ。
美穂の惚気聞いて胃もたれしたいよ。
私にとって美穂は親友的ポジションだからね。
でもね、正直ひよたんに構って貰えないのは辛い。ただでさえ、2人のときでも好きという心情を言葉にしないからね彼女は。
…まぁ、手とかは繋いでくれるけど。
渡邉「唯〜。気持ちは分かるけど、毎回毎回傷ついてたら、ひよたん逆に悲しむんじゃない?」
『もう結構ヒビ入ってるよ私のハート』
渡邉「言葉にすればいいじゃん」
『それができたら苦労しないよ美穂』
「ごめんごめん、頭もっと撫でたげるから」って髪が乱れない程度に頭を撫でてくれる美穂。
そしてこの美穂の太ももたまらん。
居心地よすぎ。
今日も輝いてる、美穂の笑顔。
こりゃ、ポカポカきゅんだね。
渡邉「あ!?いいこと考えたよあたし。天才だわ」
『なになに』
渡邉「『ひよたん…もう唯たち別れよ』大作戦だよっ!」
美穂の突拍子もない一言に私はすかさず起き上がって、美穂のおでこにでこぱっちんした。
『なにが天才だばか』
渡邉「でもでもぉ、そしたらひよたんの行動しだいだけど、唯のことどれだけ思ってるか分かるしぃ、やめてくれるかもしんないじゃん?(笑)」
『…うっ』
「大丈夫、絶対上手くいく。」って美穂はいうけど私は正直自信ない。
毎日会うのに、最近の私たちを繋ぎ合わせるのは夜のLINEだけだよ。
こんな寂しいことあるぅ!?
倦怠期とは言わせないからな、皆。
『やるだけやってみる』
渡邉「そうこなくっちゃ」
親友が出した助け舟。
泥舟だろうがなんだろうが向こう岸まで渡って見せようじゃないの。
♢ ♢ ♢
『ひよたん…』
濱岸「ん〜?」
『ちょっと来て』
美穂に背中押されて来たけど、やっぱり無理ぃぃぃ!
私別れたくないもんっ!
さっきまでひよたんと一緒にいた陽菜は顔赤くしてたし。
陽菜、照れたいのは私のほうだよ。
私は頭をグルグルさせながら、ひよたんの手を引いて楽屋のほんとはじっこで止まった。
『あのさ…私たちもう別れよ、、?』
できるだけ美穂が言った通りの言葉で伝えてみた。
なんとなくでついた嘘に、
ひよたんはわかりやすく悲しそうに顔を歪めたわけで。
ひよたんが私のことでこんな顔するのを見るのは初めてでなんか新鮮。
なんだか不思議な感じがする。
嘘で言った言葉だから別れたい理由なんてこれっぽっちもないしそんなの考えたって浮かばない。
私ってそんなに器用じゃないから。
別れたいなんて思ったこともないから
黙りこくってると、少し遠くにいたひよたんは私と距離を詰めてきてぽすって私の胸元に頭を預けてきた。
手には力がこもってて、それでいてすがりつくように。
なんだか心まで掴まれた気持ちになって胸が痛い。
濱岸「やだよっ、、別れたくない、、、」
私の胸がきゅーってあつくなる。
ひよたんはあまりすきとか言ってくれないから不安になることもあったけど
ちゃんと愛されてるんだなあ、なんてね。
濱岸「好きなの、唯のこと。好き、すきなの、唯」
『あのひよたん』
濱岸「いいの、私の話聞いて唯」
今だとばかりにストレートに気持ちをぶつけてくるこの子をどうしよう。
胸が苦しくて苦しくて仕方ない。
すきで、すきで、もうそれ以外考えられない。
ひよたんの体に両手をまわして、
ひより、って名前を呼ぶとひよたんは涙が溜まった目で私を見た。
もう今更ここまできて、ドッキリの4文字をいうのが怖すぎる。
でも名前を読んでしまった以上、何かを言わなければ変な間ができるわけで、
やけにその間がリアルでまたひよたんを不安にさせてしまう。
『あ、あのひよたん』
濱岸「な、に、、、」
『ごめん、これ嘘なの』
濱岸「…ほんと?」
『…………………(コクン)』
『別れるとか考えたことないよ』って素直に言うと、「よかった」っていいながらさっきまで頭を預けていた私の胸元をポカポカ殴ってくる。
濱岸「ほんと唯のばか、」
『ごめん、ひよたん』
濱岸「…もう絶対こんな事しないで」
『うん、』
涙目のひよたんをみて、
自分の情けなさが身に染みて。
こんなに好いてくれてるひよたんにしてはいけないことをした気がして。
でも美穂が出した助け舟はちゃんとした潜水艦のようにしっかりした舟だった。
濱岸「…なんでこんなことした訳?」
「聞いてんのか」って少し怒り気味のひよたん。
…まぁ、そりゃ怒りますよね。
ごめんなさい。
今日は謝ります、私が悪いので。
私は嘘偽りなくひよたんに「寂しかったよ」って旨を伝えた。
濱岸「そんなこと、ちゃんと言えばいいでしょ」
『…ごめん』
濱岸「まぁ、いいよ。唯のこと好きなのは嘘じゃないから」
その後、ひよたんは陽菜と遊びながらも私のことを気にかけてくれるようになりました。
私が元気なかったらちゃんと私のそばにきて、頭を撫でてくれたりぎゅっとしてくれるようになりました。
end