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□泣くなよ。
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【東村side】
『別に私のこと好きじゃなくてもいいよ。ただ、私の知らない場所で泣かれるのだけはごめんだよ。芽依』
東村「はぁ…」
久美「またため息?今楽屋中に響いたよ(笑)」
「めいめいもついに恋の味をしめたか…」っていう久美。
となりでうるさいねんほんと。
「そんなに悔やむのね(笑)」って彩花まで。
まぁ、まだこの2人がいるから泣くの抑えられんねんけどな。
久美「たぶん、あいつ以外は聞いてたと思う(笑)」
聞いた人ーって久美がみんなにしゃべりかけるからみんなこっちをみて。
はーいってほぼ全員挙手。
高本「ははっ!案の定あいつ以外(笑)」
久美「今日もぐっすりね唯(笑)」
寝る子はよく育つっていうけどほんとやなって思う。唯はグループで1番身長が高いし、大人っぽい。かといって、ノリが悪いとかじゃなくって、そこは久美と似とる。
面倒見がいいから、2期生とかひなのからも人気で、勉強をおしえたり、ゲームしたりしてる。
うちは過去に1つだけ、こんな楽屋中に響く程のため息をつく過ちを犯してしまったんや。
それは唯とのこと。
唯はうちのことをひらがなのときから好きでいてくれたらしい。
そして、唯はうちの寮の部屋で告白してくれた。
芽依のことが好きだよ。つきあってくれない?って。
そのときうちは風邪でベットに寝ていて、付き添いで唯がとなりにいる状態。
唯が今までみたことない顔でうちをみつめるから胸がギュンってつかまれたようだった。
でもそのときだしたうちの答えは
No。
東村「芽依、まだ恋とかわからへん。唯の気持ちはすっごくうれしいねん。けど、嬉しい分、生半可に唯と付き合いたくないねん。ごめん。」
『生半可に付き合いたくない、か…』
うちがその場で答えを出すと、なぜか
唯は笑いだしていた。
そして『ありがと、芽依。…なんか、元気でたわ』って。
唯のことをふった後も唯は献身的に看病してくれて風邪もなおったし、ふった後日も唯は普通に対応してくれている。
それだけだったらたぶん唯とは少し気になるいや、仲のいいメンバーってだけだったんだと思う。
けど、この日があってからうちは唯のこと好きになっちゃったんや。
それはうちがレッスン中に足を痛めて医務室にいかなきゃいけないときに唯がおぶってくれた。
でもそんな唯の優しさがふってしまったうちにとっては痛くて、申し訳なくて。
「もう芽依のことかまわんくていい」って泣きながら言ってしまった。それでも唯は
『別に私のこと好きじゃなくてもいいよ。ただ、私の知らない場所で泣かれるのだけはごめんだよ。芽依』
って。
その時は医務室にスタッフさんがいたから、唯はうちを運んでレッスンにもどった。
その日からいや、その言葉を言われた時から唯を見る度ドキドキして。目で追って。誰かと一緒にいたり、イチャイチャしてると彼女でもないのにモヤモヤして。
久美や彩花にイジられるくらい好きになって、もう自分でもていいっぱいで。
だから、答えをだしたその日のことを後悔してる。うちがだした答えが悪いとは思わないけど、もっとほかの言い方はなかったかなって。
そして、1回唯をふってしまったうちに唯に告白する権利はあるのか否か。
もしあの時唯がうちが唯を愛すぐらいうちのことが好きで、うちが唯をふってしまったのならどうだろう。
うちならその場で泣き崩れてたかもしれん。
なのに、唯は涙を流すどころか声1つあげなかったで。
でも、あの時の唯に嘘はないなぁって。
久美と話してたんや。
「そんなばかなことをする唯じゃない。唯はほんとうにめいめいのこと好きだったんだよ」って久美がいうから、あぁ、どうしてこうも上手くいかへんのやろってまたため息。
高本「私じゃなくていいの?」
東村「ええ。唯がいい」
高本「京子は?」
東村「唯がいいんやで」
久美「やばい、純愛だ。」
ひゃーとかいってまた楽屋で踊り出した久美。
角では美穂の寸劇。
よく眠れるなぁ、唯。
寝顔幼くって可愛ええなぁ。
高本「話しかければいいじゃん、」
東村「む、むりや。今はむりや」
高本「…あ、唯起きた。」
むくって起きてソファで伸びしてる唯。どんな寝かたしたら髪型崩れないで寝れるんや。
唯が起きたから2期生はそれに群がって、構ってもらおうとしてる。
あぁ、芽依もあの輪の中に入りたい。
唯と話したい。
久美「みんなーそろそろ撮影するってー」
「「「はーい」」」
よかった。
タイミングよくスタッフさんが伝えに来てくれたおかげで、唯と2期生のわちゃわちゃをみずにすんだ。
モヤモヤしたまま撮影なんていやや。
ただでさえ、撮影中しゃべれないのに、モヤモヤして不機嫌な顔しとったら視聴者さんに勘違いしかねないねんな。