book
□コーヒー
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※2人は同棲してます
【唯side】
『…ただいま』
真っ暗で人気のない部屋に声をかけても、返事はない。
重い足を引きづりながら電気をつけ、そのままソファーに倒れ込む。
今日も1日お疲れ様だった。
けやき坂から日向坂になってから毎日がチャレンジの連続。
1回酷い扱いをうけてそこから這い上がってきた私たちには、今いただいたお仕事一つ一つがありがたい。
だが、ここ最近はまとまった休みなんてもらったことないし、当たり前のように美穂とすごす時間もない。
ありがたいこと。幸せなこと。
そんなこと分かってる。
けど、心も体も疲れきっていることを日々感じる生活は心地いいとは言えない。
あいにく最近は美穂と入れ替えで仕事にいくことが多いから話すどころか顔をみてない。
『はぁぁあ……ふっ』
1人静かな寂しい部屋にため息が響いてこだましそうでどこかおかしくなった。
今日も美穂は朝方まで仕事か。
あ、でも明日美穂午前中オフだな。
…私午前中撮影じゃん。
やばい、もっと疲れてきたぞ…。
ソファーに倒れた体に力を入れることなく脱力しながら考える。
美穂は寂しくないのかなぁ。
電話をすれば出てくれる。声を聞きたかったと理由に、美穂はなんて言うかな。珍しいねと驚いて、笑いながら話を聞いてくれる気がする。
あ、出ないか。
きっと美穂だから、楽屋に携帯おいて撮影に集中してるだろうなぁ。
何事にも全力なのが美穂。
…ま、我慢することぐらいなれてるさ。
結局電話しないことにした私の頭は考えることやめて、ソファーに脱力する。そのまま、睡魔にまかせて目を閉じた。
♢ ♢ ♢
んん…。まぶし…
カーテンから差し込む日差しが目に刺さって起きる。
カーテンなんて空いてたっけ。
いや、昨日は夜帰ってきたから閉めてあったはず。
渡邉「おはよ唯」
『…美穂。おはよ』
「朝ご飯できてるよー」なんていうから、なんか泣きそう。
いつぶりだよ、こんな幸せ。
起きたら君がいるなんて。
『…あ!まって撮影!』
渡邉「そうだね、撮影だねぇ」
『ちょっ!なんで起こしてくれなかったのさ!』って美穂に怒ってしまう。美穂は別に悪くないのに。
しっかし、アラームかけたら普通に起きる自分が起きないなんて。
でも美穂は「まあまぁ」ってなだめながら、起き上がろうとする私の肩を押してまたベットに寝かせる。
渡邉「撮影なくなったよ、さっき電話あったの。カメラマンさんが体調不良で休むから撮影自体なくなったって。」
『え、あ、、』
渡邉「びっくりさせてごめん(笑)」
「久しぶりに唯の驚き顔みたくて」なんて言いながら頭撫でてくれる美穂の顔が母性全開で笑っちゃう。
でも私もうれしくって、目を閉じると美穂も私の横に寝そべった。
渡邉「もぅ、びっくりしたよ。ソファで寝てたから」
「いつもは絶対ベットでねるのに」って。「考え事でもしてたの?」って聞かれたから『美穂のこと考えてた』って返したら「そうかいそうかい」って。
『ほんとだよ。最近会えなかったから』
わたしは本気だぞ、美穂。
渡邉「やめて、照れる。」
そうやってまた話をはぐらかす。
そこは「私も寂しかったよ」でしょーが。こうなったら嘘でもそういうまで起こしてやんない。
『美穂は?』
渡邉「私も唯のこと考えてたよ。今度何作ってあげよっかなとか。」
『…寂しくない?』
渡邉「そりゃ寂しかったよ。次のオフのこと考えて紛らわせてた。」
『美穂も同じだったんだ…』
寂しいの一言に感化されて、寝ている美穂に抱きつく。
久しぶりの美穂の匂いが鼻をくすぐって、心地いい朝だ。
渡邉「ねぇ、ちょっと。朝だよ」
『いいじゃーん、今日は私が』
渡邉「………その気?」
『そりゃもう』
渡邉「んじゃあ私がこっち」
さっきまで美穂の上に馬乗りになってたのに、下にいる美穂に手を引っ張られて転がって、その隙に美穂が上から私の目を捕らえる。
『ちょ、美穂っ』
渡邉「どうしたの?その気なんでしょ?」
私が睨んでも上目遣いになるだけでニコニコしながら私の服に手を入れようとする。
渡邉「あのさ、あんまりひどいと私時間関係なくするからね」
『ひ、ひどいって、、?』
渡邉「唯があんまり可愛いことするとってこと。私、意外と枯れてないからいろいろ」
せっかくの2人のオフがこれでいいのかって?
…私が聞きたいですよ。
でもまぁ、これでしばらくは、ソファで寝なくて済むかなって(笑)。
end