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□恐竜
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【唯side】





〔今日は恐竜のコスプレなんだね、すごく似合ってて可愛い〕


『えぇ!ほんと?ありがとう!』


はがし 「お時間でーす」





今日は待ちに待った握手会。
世界で大騒ぎしている時事的問題を差し置いてこの握手会を催しているけど、やはりおひさま。今日のボルテージはMAX。
やっぱり推しに会える機会は大切だよね。私も出来ればメンバーの握手会参加したい。愛萌とか絶対キュンってしちゃうやつや。





んで今日の私は、恐竜のコスプレ。
もともと私のファンの方から「唯はコスプレしたりしないのー?」ってよく聞かれてたから、いつかはしようと思ってたんだよね。





私が恐竜のコスプレをしようと思ったのは菜緒がきっかけなんだ。菜緒はみんなも知ってる通り恐竜が好きでしょ?
だから…それで気をひこうと思って。
わたしは2期生として入った時から、菜緒のことが気になってた。
なんだろ、言葉に表せないぐらい全部好き。
声も。顔も。性格も。
今だしてみて?って言われても、いいたいことが多すぎて言葉が詰まるくらい好きなの。
正直2人で話すのも緊張するし、遠征で2人でホテルに泊まるときも私にとっては一大事。そんな日はドキドキして夜も眠れない。
すぐ顔も赤くなりそうで、自分の気持ちがバレそうで怖くて。
なかなか最近菜緒と話せてないのも悩みかな。








こんな私だけど1度だけ菜緒から好きだと言われたことがある。
ひなあいのメンバー相関図みたいな企画で若林さんが…



若様「小坂は1番メンバーの中で誰と仲がいいんだ?」


加藤「また若林さんのひいきが…」


若様「ちがうよかとし!番組回してんだよ!(笑)んで、小坂?」


小坂「んー、メンバーみんなと仲がいいので特にこれと言った固定メンバーは居ませんが…。メンバーのなかで唯が1番好きですね」



菜緒の一言でメンバーからどわっと歓声があがる。「あの菜緒が!?」なんて驚く声があがったみたいだけど私の頭には全然届かなくて。



若様「おぉ小坂はじめての告白だなぁ。…って竹林!?大丈夫か!?(笑)顔真っ赤だぞ」



久美「若林さん!唯がっ!息してませんっ!」




その時はとなりに座っていた久美さんが笑いをとってくれたからよかったけど、私は恥ずかしすぎて頭がぼやーってして。
ろくに収録どころじゃなかった。





菜緒の好きが私の好きとはちがうことは分かってる。
でも、少しでも意識してくれるぐらいでいいから。
菜緒のなかでそういう好きの1番があらわれるまでは私が1番でいたい。
そして、そういう何気ない行動で、菜緒に察して貰いたい。
これが好きだと言えない臆病で赤面症な私の悪あがき。





〔あ、恐竜だ!おれ絶対似合うと思ってたんだよねー〕


『ほんと?嬉しい!そういうおひさまの声きくと元気もらっちゃう』


〔俺のほうこそ。いつももらってますありがとねがんばれ〕


はがし「お時間でーす」





そろそろ休憩かな。
こういう服って普通のより通気性悪くて暑いのかと思ってたけど、案外着心地わるくないんだね。
パジャマにしよっかな。












『あ、菜緒…』


小坂「お、唯」





休憩しようと部屋に戻るとそこにはたまたまなのか知らないけど菜緒しかいなくて。
急に2人きりとか絶対無理だから、廊下のケータリングを取りに行こうと思ったときだった。





小坂「待って、唯」





ふいに名前を呼ばれたからドキってした。
そして私はそれを誤魔化すかのように何事も無かったかのように菜緒のそばにいった。



『なに、菜緒』


小坂「ここおいで」



菜緒が急に私の手を引っ張って少し強引に私を自分の膝の上に座らせた。
しかも、対面式で菜緒の顔がすぐちかくにあるタイプ。




小坂「今日恐竜さんやったんやね。似合っとるやん」


『ありがと、うれしぃよ』



菜緒の顔が近いし、今顔赤いのバレたくないから菜緒とたわいもない話をしながらも下を向く。私の目の先には菜緒の膝と私の脚が見えるわけで変にドキドキしてしまう。
私のほうが菜緒よりもずっと身長が低いけど膝の上に乗るとなると必然的に私のほうが目線が高くなるから、菜緒が上目遣いで話してくるんだろうとか思うとまた頬があっつくなって。






小坂「なぁ、唯」




私の名前を呼んだ菜緒は下を向く私の顎を片手で抑えてぐっと上を向かせた。



『むぅっ…』


小坂「やっとこっちみた」






こっちみたって菜緒がこっちむかせたんじゃん。
なんでそうやっていたずらっぽく笑うんだろう。
こっちはこんなに君のことを考えて胸が張り裂けそうなのに。
人の気持ちも知らないで。
ほんと君は残酷な人だ。





小坂「なんで最近菜緒のこと避けるん?」


『さ、さけてなんて』



上手く話せなくて、『はなしてよ』っていうと「んじゃあ目を見て話すって約束する?」って言われて、無理言うよなぁなんて。




小坂「避けてないって言うけど、さっきもうちをみて楽屋でようとしたやん」


『ちがっ、あれはケータリングを…』


小坂「…菜緒のこと嫌いなん?」




嫌い。
嫌い。
嫌い。




そんなこと1度も思ったことない。
菜緒の行動をすべて目で追って、菜緒の一言ぼそっと喋ったことも耳でキャッチして。
嫌いだなんて。
いっそ、そう思えたほうが楽かなって思えるくらい菜緒が好きなのに。





小坂「うち、一応告白したつもりだったんやけどなぁ」



『へ…?』


小坂「ひなあいの時…覚えてないか」





覚えてないかーなんて鼻笑いしてる菜緒の顔がいくらか赤い気がする。
そして、今度は私の背中に回していた両手に力を入れてよりぐっと菜緒と私の距離を近くした。




小坂「唯が1番好きって言わなかったっけ?」




菜緒が上目遣いで私に訴えるかのように、少しすがるかのように、言うから。
こっちまでその気になってしまいそうになりそうで。



『でも、菜緒の好きと私の好きは違うからっ…』



あーもうなんで「私は菜緒のこと恋人として好きだよ」って言えないんだろ。
伝えたい言葉はあるのに、口の中で消えては空回りで。
こんな可愛くない一言にも菜緒は私を宥めるかのように頭を撫でてくれた。





小坂「それはさ…好きってことでええねんな?」


『………………………………(コクン)』



小坂「にしても顔真っ赤やなぁ(笑)」





「唯は可愛いなぁ」なんていうもんだからなおさら菜緒の顔なんて見れなくて…。
また、下を向けば菜緒が顎をもって向かせてくるから、「や、やめてよ」っていうとニヤニヤする菜緒が見えて少しむかつく。




小坂「唯からは言ってくれへんの?」





「聞いてるの恐竜さん」なんて茶化してくるから余計に言えない。
そうやって優しい目でみつめられたら、言わざるを得なくて、少し時間がたって決心したから、口を開こうとしたとき。





『菜緒のこ「ただいまー」


久美「って、なにしてんの?(笑)」



加藤「あ、まさか…できちゃったの?」


小坂「だったらどうします?(笑)」


久美「は?えっ?」




『ちょっ、菜緒』っていえば、「いいじゃん、みせつけよ」なんていうもんだから、菜緒って少しSなのかなって。
だって、私がこんな赤面症なのしってて平然とそういう事いうから。
策士かなほんと。





そのあとはむらがるようにメンバーがやってきて、菜緒が応答するけど、矛先は顔が赤い私に向く。




渡邉「唯は菜緒のこといつから好きなの?」


『べ、べつにいいじゃんかさ』


松田「あ、ごまかしてる(笑)」




「それはいうてええやろ」って菜緒が耳元でいうから、また言わざるを得なくて、


『菜緒とあったとき、、から』


渡邉「え、じゃあ会ってからずっとだね」




また楽屋全体から歓声があがって、私は耐えきれなくなって菜緒の胸に頭をグリグリした。







end


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