優しい花畑
□花畑の歓迎
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とても深く落ちてしまった。
もう助からない…そう思っていた。
「うぅ…、ん…」
冷たい空気を感じて、ルナは目を覚ました。
周りを見渡しても、暗くてよく見えない。ただ唯一分かるのは、自分が咲き乱れた花の上に倒れていたことだけ。
ここは一体何処なのだろう…?
「……私、死んじゃったのかな…?」
頬をつねってみる。
普通に痛い……
「…私、生きてる…。じゃあここは…」
周りは何も無い。上を見ても、暗くて何も見えなかった。
「……帰り道、探さなきゃ」
ルナは立ち上がり、とりあえず前に進んでみることにした。
暗くてよく分からないが、障害物らしきものはないようだ。
歩き続けていると、段々と前が明るくなっていく。
右も左も分からない今の現状では、その光だけが道標だった。
そして、また黄色い花畑が見えた。
(……?なんだろ?泣き声みたいなのが聞こえる)
その花畑の中で、誰かが泣いているような音が聞こえた。
近づいてみると、なにやら一輪だけ大きな花が咲いていた。
泣き声も、その花から発せられているようだった。
さらに近づけば、気配を察してその花が動いた。
「……誰?」
「花が喋った!」
思わず驚くルナ。
しかし、驚きも束の間…花は葉っぱで頭の部分を覆った。
「ボクをいじめないで!お願い…!」
花はなにやら怯えきっている。
よくよく見ると、かなりボロボロになっていた。
「…大丈夫だよ。君をいじめたりなんかしないから」
笑顔を向けてそう言うと、花は葉っぱを退かして顔を上げる。
「……キミ、もしかして…ニンゲン?」
「えっ?あ、うん…」
「……ボクのこと、いじめたりしないの…?」
「そんな酷いことしないよ。大丈夫」
花はまだ警戒してはいたものの、涙を拭いてあげると少しだけ笑ってくれた。
「…ありがとう、ニンゲン」
「そんなお礼言われることしてないけどね」
「……キミ、名前なんていうの?ボクはフラウィー。お花のフラウィーだよ」
「私はルナ。よろしくねフラウィー」
フラウィーの手にあたる葉っぱを優しく握ると、フラウィーは目を丸くしながらも笑ってよろしくと握り返した。