小説

□いつもと違うバレンタイン
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『いつもと違うバレンタイン』

「どうしよ……」

私、白石麻衣は今超絶悩み中
今日はバレンタイン
好きな人や感謝してる人にチョコを渡す日
七瀬と付き合ってからは毎年私は七瀬に、手作りチョコを渡してる
けど今年は渡せそうにもない…
普段は前日に七瀬が居ない時に作ってるけど昨日は運悪く深夜まで仕事
そして今日も朝から撮影だったため作れてない
約束してる訳じゃないけど私達は毎年チョコを交換している
だから今年、私が渡さないと七瀬に申し訳ないし罪悪感…
どうしよ…、コンビニで買おうかな…
けどなぁ…
と、優順不断な私の頭の中はぐちゃぐちゃ


こうなったら…



今日は七瀬が帰ってくるが遅いと信じて板チョコを買って簡単なのを作ろう…








鞄から鍵を取り出して扉を開ける

ガチャ

「ただいまー…」

パタパタと走ってくる音が聞こえる
終わった…。七瀬が家にいる…
普段ならこうやって走ってくれるだけで嬉しいのに今日は素直に喜べない…

「まいやん!おかえり!」

「七瀬…、ただいま!」


エプロン姿の彼女の笑顔を見るともうチョコなんてどうでもいいんじゃないか?とゆう考えが頭によぎる
けど七瀬の一言でそんな考えは一瞬で消える

「あんな、今年は難しいの作ってみたんやけど…もしかしたら美味しくないかもしれん…」

と眉を下げて言う彼女

「作ってくれたの…?チョコ」

「うん、」

「…ふふっ、作ってくれただけで嬉しいよ、ありがと」

「へへっ…よかったぁ…」

無邪気に笑う七瀬にどんどん罪悪感が増す
こんなに私のことを思いながら作ってくれたのに私は作れてないなんて…

「まいやん?どしたん?」

「ううん、…なんでもない!」

「ほんまに?大丈夫?」

「うん!大丈夫だよ!ありがと〜」

心配そうな顔で私の顔を覗き込んでくる七瀬をギューッと抱きしめる

「…あほ」



「へ?」

肩を軽く押されてそう言われる
七瀬の顔を見ると頬を膨らませている
え、私何かしたかな…?
もしかしてチョコないのバレた?…

不安がどんどん募っていく

「まいやん嘘下手なんやから、ななの前で嘘つかんといてよ」

「…嘘なんか…」

「なぁ、ほんまはなんかあったんやろ?」

あぁ…もうこの子はほんとに…

「…あのさ」

「うん、」

「チョコ…昨日作れなかった…ごめん」

「…は?」

「え…?」

「そんなことで悩んでたん?!」

「そんなことってなにさ!」

「まいやんってほんまアホやなぁ」

って大爆笑する七瀬
そんなことって…私は真剣に悩んでたのに…

「そんな笑うことないじゃん!」

「やって、まいやんはななが、チョコ貰えないだけで落ち込むとでも思ってたん?」

笑いすぎて涙が出たのか目元を拭きながら言う七瀬

「いやそういう事じゃない…と思う…」

「ふふっ…もうええよ、はよバック置いて」

「…ぅん…」

言われた通り大人しくコートをハンガーに掛けてバッグを置く
バッグの中からさっきコンビニで買った板チョコを取り出して冷蔵庫を開ける

「なん?それ」

「あー…板チョコ…」

「なんで?」

「…作ろうかなって思って…けどもう作らないし七瀬好きに食べていいよ〜」

「…作ってくれないん?」

「え、だってさっきいらないって」

「要らないとは言ってないやん、貰えるなら貰いたい」

「でもこれただのチョコだよ?」

「うん、だから一緒に作ろ?」

「……いいの?」

「うん!ついでに夜ご飯も!」

「七瀬〜!好き!!」

「ほんままいやんは単純やなぁ…」

てか…夜ご飯って…今日ご飯作る担当七瀬じゃん!
なんか上手く流された…?















「先にご飯作る?チョコ?」

「んー…ご飯先に作ったら冷めちゃうしチョコでいいんやない?」

口でごむを咥え髪を集めながらいう七瀬
あー…口でゴム咥えてるのえっち…。

「まいやん?」

「ん?」

「じーっとみてどうしたん?」

貴方が髪の毛を結んでる所をみて興奮してましたなんて言えるはずがなく首を横に振る

「ううん、なんでもない」

「チョコ、何作るん?」

「んー…トリュフ?」

「トリュフって作れるん?!楽しみ〜…」

あぁ…私の愛しの彼女はどうしてこんなにも可愛いのでしょうか
鼻歌を歌いながら材料や調理器具を出す七瀬を後ろからぎゅっと抱きしめる


「ん、なん?」

「んー…好きだなって」

「ななも」

「ふふっ…夜ご飯何がいい?」

「まいやんが作りたいのでええよ?」

「チョコ作ってたら時間無くなっちゃうから簡単のになっちゃうよ?」

「じゃあうどん!」

…うどんも簡単なのに
これは七瀬なりの優しさなのかそれとも単純にうどんが食べたいからなのか、どちにしろ愛しいからもっと強い力で抱きしめる

「ちょ、まいやん、はよ作ろうや」

「ん、そうだね」

私がチョコを叩き割りボウルに入れて湯煎で溶かしてる間七瀬は生クリーム作り
順調に進んでいき……

「はい、溶かし終わった」

「ななも混ぜ終わったで!」

「よし、あとは、ココアパウダーとか入れて混ぜれば……」

「………」

「ん?」

「手際ええな〜って思って」

「ありがと」







「よし!後は形を作れば完成!」

「丸でええの?」

「んー…丸が1番作りやすいかな」

「じゃあ丸〜」

「強く持ちすぎると指につくから、「あ…」気をつけて…遅かったか…」

「どうしよ」

「洗う?」

「んー、勿体ない」

「そっか、じゃあ舐めちゃ…あ、」

「ん?」

「ちょーだい」

「へ?」

右手首を掴み持ち上げて私の口の方に引き寄せる。チョコレートが付いた人差し指と薬指を口の中に含む

「ちょ、まいやんっ…」

「ん、…ちゅっ…」

「ん…っ…ちょ、離れろ変態!」

「いったぁ…!!」

「ななは悪くないもん」

「勿体ないって七瀬が言うから!」

「…まいやんなんか嫌い」

「ごめんなさい…私が悪いです」

「よろしい」


なんてくだらない会話をしながらトリュフをどんどん作っていく
気づいたら時間は9時になっていた

「やば、そろそろうどん作り始めなきゃ」

「トリュフも、もう全部作り終わるで〜」

「了解〜!」













「いただきます!」

あれから30分も経たないうちにうどんが作り終わりトリュフ達は冷蔵庫へ

「あー、あったまる…」

「まいやんおじさんみたい」

そういう七瀬の机の周りはスープがとんでいて子供みたい。そう言うと七瀬は不貞腐れるから言わないけど…そこが可愛いんだよなぁ…
変な顔をしてたのか七瀬に、きもいと言われ心に傷を負いながらうどんを食べた

「チョコ持ってくるな?」

「いいよ、私が」

「も〜たまぁにはゆっくりしとって?」

「…はーい」


「見てみて!固まっとる!」

「ほんとだ!美味しそうだね!」

「うん!はよ食べよ!」

「うん!あ、七瀬」

「ん?」

「一緒に作ってくれてありがとね」

「んーん、楽しかったで!」

「来年はちゃんと交換しようね」

「そやな!…あ、」

突然ソファから立ち上がりキッチンへトテトテと小走りする七瀬
帰ってきた七瀬の後ろにはピンク色の可愛い袋

「まいやんみたいに上手くないんやけど…」

と不安気に差し出した袋をそっと掴む

「これ、チョコ?」

「うん、上手くないんやけど…」

「ありがと!!食べていい?!」

「うっ、うん…」

ラッピングを開けると中に入ってるのはチョコクランチだった
1つ手にとって口に運ぶ

「ん、おいひい!!」

「ほんま…?よかったぁ」

私の反応を見て、へにゃっと笑う七瀬
そんな可愛らしい七瀬が愛しくて軽くキスをする

「ん、…甘い…」

「ふふっ…七瀬のチョコのおかげだね」

「あほっ」


たまぁには一緒に作るバレンタインも良いかも

この後、七瀬のチョコもトリュフも七瀬も美味しく頂きました
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