長編

□社長と秘書 番外編
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【彼女の誕生日】


愛する人の誕生日が迫ってるというのにどうして私は会社に居るのだろうか。
社長なのだから今日ぐらい早く帰ってもいいと思わない?
なんで今日に限って…
ななみ休みなの〜〜!!
いつもななみに仕事を任せてたのは悪いと思う。
けどさ、今日ぐらいいいじゃん
飛鳥も今日は熱ださないでよ
あの過保護がほっとくわけないじゃん!

「はぁ…」

あと一時間で七瀬の誕生日になる
先程からやっていた仕事をようやく終わらせ急いで鞄を持つ。こんなに焦ったのはいつぶりだろう
誕生日祝えなさそうなだけでこんなに辛い気持ちになるのはいつぶりだろう。
あぁもう、七瀬とゆう一人の女性のせいで私の気持ちだけは無駄に学生だ。



会社を出てから気づいた携帯の着信履歴。
それはほとんど愛しの彼女から

『なぁ、今日おそい?』
『ごはんは?』
『先寝てるな』


なんてメールたち
愛おしさと罪悪感に包まれる

秘書の七瀬だから今日ななみが居ないのは知ってるはず。
けどこんなに遅くなるなんて思わないよね。
ごめん、今から帰る。
そう送って携帯を鞄に押し込めて走る
走って間に合うわけがないからいつもは使わないタクシーを呼ぶ


タクシーに乗ってる間はイライラする
早くつけ
はやく七瀬に会いたい
一番に、彼女を祝いたい

なんて自分勝手な願いだろう
仕事を終わらせるのが遅かったのは私なのに







ーーーーーー


ガチャ


「はぁはぁ…ただいま…」

いい歳こいてエレベーターを待ちきれず階段で自分たちの部屋まで上がったらこうだ
しんどい。疲れた。けどそんなの彼女の笑顔を見れば一発な訳で…


「…ただいまー」

さっきは返事がなかったからもう一回
けど返事は帰ってこない
私の耳に届くのは私の声だけだ
え…もしかして寝てる…?
ほんとに寝てる…?

急いでリビングに行くと彼女は居た。
居たけど…ソファの上でクッションを抱きしめながら体育座りしているから七瀬の顔は見えない

「…ななせー…寝てる?…」

返事は帰ってこない

「…七瀬、布団で寝ないと風邪ひ…っぶ!」

寝ている彼女の方向からクッションが私の顔面に飛ぶ。そんなことできる人物なんて、一人しかいない。だってこの家には私と七瀬歯科居ないのだから。え、てことは起きてる?



「起きとるわ、あほ…」


あら、七瀬ちゃん。いつの間にか私の心の声が読めるようになったのね。
なんてふざけた事を言える雰囲気じゃないのはわかる。
だって目の前の彼女は怒っているのだから。

「七瀬、帰るの遅くなってごめんね」

「なんで…遅くなったん?」

「仕事が…」

「………」

「いつもななみに押し付けてたでしょ?だから今日は…」

「あぁ…もぅ…いつも真面目やらないから…あほ…」

「ごめんね?」

「……」

「怒ってる…?」

「…別に…ただ、、忘れられたかと思った…」

「…ふふ、そんな訳ないじゃん。付き合い始めた時言ったじゃん、一番に祝うのは私だって」

「ぅん…ありがと」

ソファで座る七瀬の手を取り引っ張る
そうすると、私の胸の中に収まる七瀬

私の視線の先にある、時計を見て数える

10

9

8

「まいやん?」

7

6

5

4

3

2

「七瀬、誕生日おめでと!」

私の声とともに七瀬の携帯がひかる

あぁ…いろいろな人に祝われてるんだろうな
けど一番に祝えるのは私の特権だから
彼女を一番に笑顔にさせるのは私の役目だから
まだ他の人の祝いの言葉なんて見させない

彼女と、少しだけ距離をとって顔を見る

「七瀬、好きだよ」

「へへ、ありがと、まいやん」

「明日はデートしようね」

「ええの?」

「え、だめなの?」

「明日仕事…」

「ふふ、七瀬、私は社長だよ?七瀬と私は明日休みだよ」

「…もー…ほんま…あほやなぁ」

可愛らしい笑顔で言うもんだから自然に彼女の頬に手を伸ばしてしまう
七瀬も何をするか分かったのか目を瞑ってくれる

あぁもうほんと、かわいいな
この子の側に一生居たい

「七瀬、ほんとにおめでと。生まれてきてくれてありがとう…。……、愛してる…」

七瀬の頬が赤くなると共に彼女の唇に唇を合わせる。

明日は最高の誕生日にしようね。
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