短文

□傘
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しとしとと、じめじめと空から大粒小粒の雨がふる。
昨日は風が強かったせいで、東京に来てずっと使ってたコンビニのビニル傘はとうとう壊れてしまっていた。
ぼぅっと考えていると、雨はだんだんと大粒の割合が多くなってきていた。
これから買い物にいくところなのに。
仕方がない、食材ついでに近くで傘も買おう。

軽快な音楽を鳴らすドン・キホーテ。傘は出入り口付近で売られていた。
少ないながらも様々な色と柄でバリエーションを見せる婦人傘たち。
その中でも個人的に一番目を引いたのはワインレッドで縁取られた黒い傘だった。


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「なんや、客でも来とんのかと思うたら、」

本家から帰宅した真島さんは気が抜けたように呟いた。

「誰かさんの家にはビニル傘しか無いんやと思っとったわ」

ああ、そういえばと昼に買った傘を思い出した。


「一目惚れしたんです。」

「あ?」

「今の真島さんに似てたから。」


片方しか無い目を見開いた後、嬉しそうな照れ顔で「アホか」とそっぽを向く真島さんを見て、雨の日も捨てたもんじゃないとそう思えた。






「雨、止みませんね。」
いたずらに呟くと
「晴れたら虹が綺麗やろなぁ。」
何でもないように貴方はそう言った。


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