pacco di fiore
□ミノくんの災難な一夜
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{Jonghyun side}
仄暗く妙な空気が篭もるこの部屋。
それは決まって時計の針が丑三つ時を指してから、行われる。
音を立てないようにベッドから降り、本棚に隠したローションを取り出しポッケに入れる。
次に、熱くてふらつく体を壁にささえられながら、抜き足、さし足、トイレにいく。
そして、そのままドアに凭れかかってズルズルと座り込んだらはじまりだ。
「はぁっ…はっ……きょうも、まただ…おれ悪い子…ハハ…。」
綺麗にボタンを閉めていたパジャマが、虎の爪に引っかかれたように荒々しく乱れていく。自分の肩に口を押し付け声が外に漏れないようにし、自分の体のひときわ感じやすいところをまさぐる。
思い出すのは、俺の隣に座っていたあの男。
優しく微笑む顔や少し眠そうにしている横顔、これ美味しいよって嬉しそうに、口の端に食べかすをつけたままケータリングを勧めてくる無邪気な顔、昔からずっとつけてるブレスレットと腕との余裕が年々無くなり骨ばってきたその左手。
極めつけには、隣に座っているものだけが感じることが出来るその香り。
特に、ステージのリハーサルの後の、
汗と爽やかな香りの香水が混ざったそれ。
考えただけで、頭が破裂してしまいそう…。
中まで全部満たされたくて、持ってきた携帯用のローションを開けて処女の女の子にするみたいに、ソコに塗りたくる。
痛くならないように人肌にローションを温めて、俺よりも大きいあいつの指を想像しながら、ゆっくりゆっくり指を進入させていく。慣れてくれば、1本から2本、2本から3本と指を増やす。
「…ん…ふっ…も…だめ、む…り……はぁ…、っ!」
また今日も、やってしまった。
ここまで変態なことをしているともはや罪悪感などは消え去り、最近では楽しみの一つにさえなってきた。
ほぼ毎晩しているこの行為を、実にクリーンなイメージで売っているアイドルがしているだなんて、誰が信じるのだろう。
誰にも言えない秘密のルーティーン。バレたら終わり。
このことがもしも誰かに知れたら、
きっと今まで築いてきたメンバーとの絆も仕事のキャリアも何もかも失ってしまうだろうに、懲りずにこうしてたった1枚、トイレのドアを隔てて他の部屋のうちのどれかで眠っているあるひとつの存在を思って欲を吐き出す。
この背徳感……たまんない…っ!
「…んっ…、んっ…あ…っ」
やばい……。また興奮してきちゃった。
今日は一回で満足出来ないかも……。
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ガチャ。
「ただいまー」
今日は宿舎に誰もいない。明日は久しぶりの休みだから、今日からみんな出かけているのだ。
そのほとんどが今夜帰ってくることは無い。
これは…、思わぬ好機だな。
今夜はパラダイスだ。最近忙しかったのでオフがあるのも久々で、もちろんアレをするのも久々だ。
本当は俺も今日は出かけたあとに実家へ帰ろうと思っていたけど、久々に飲みに行って騒いだら、とんでもなく眠くなってしまって、居酒屋から移動するのに時間がかかる実家よりも、すぐに休める宿舎を選んだのだった。
こんな夜はなかなかない。シャワーを浴びて、景気づけに飲み直したその後に…。
「〜〜♪ふふっ!」
シャワーを浴びて、冷蔵庫にあった500ミリリットルの缶ビールを1本と半分飲むと、元々酒が得意ではなかった体が火を吹きホットフラッシュを起こしている。
まるでサウナにいるみたいだ。
心無しか息も絶え絶えになってきて、足元も覚束なくなる。
瞬きもゆっくりになってきた。
ここまで来てしまったら本気寝してしまうので、ビールを飲むのはもうやめだ。
さて、これからが本番だ。
このふわふわした感覚のまま、アレをしたら一体どうなってしまうんだろう。
きっといつもとは比べ物にならないほどキモチイイはず…。
緩慢な動きとは裏腹に、純粋な好奇心と高揚に心が弾んだ。
しかし今日は仕事をこなした後に友達と大騒ぎしたんだ、体力はそんなに残されていない。それに今日は宿舎に俺一人しかいない。だから今日ぐらい、コソコソしなくてもいいよね…?
「といれ……いくの、めんどくさい…。」
半ば千鳥足になってしまいながらなんとか自分の部屋に辿り着き、ドアも閉めずにそのままベッドに倒れ込んだ。